第百三十五話 過ぎたる秘密
「試して、みマスか?私の力」
パワードスーツが語りかける。
「だそうですよ、ケーリッジ先生」
「勿論、使わせてもらうわ!よろしくね、パワードくん……ちゃん?」
「どちらでも構いマせん」
「……ってことだから、良いよな?ロディア?」
そして俺が剣を、ガラテヤ様が拳を向けた先、山頂に座す石に片足を乗せているのは、久しぶりに人間のような姿をとった裏切り者、ロディア・マルコシアス。
「勿論だよ、ジィン君。皆も、それで良いよね?」
「……出たな、裏切り者ッ!」
「オマエは、ジィンお兄ちゃんを殺した……!許さない……!」
「言われなくても、貴方を叩きのめすためなら、何でも使わせてもらうわ」
「元部下をどっかにやられちまった仇は取らせてもらう。これでも、オレは元革命団のリーダーだからなァ」
「ホッホッホ。腕が鳴りますなあ」
「パワードスーツさん、よろしくお願いするわね!希望の冒険者、ケーリッジの全力……見せてあげる!」
「治療は任せて。私がいる限り、誰も死なせないから」
俺達はそれぞれ、現れたロディアを今度こそ逃さず殺すための態勢をとる。
その中で一人、妙な構えをとっている人間がいた。
「アタシ……解っちゃった。全部、解っちゃったの。だから」
アドラさんは錯乱したのか、持っていた金槌を構え、前へ飛び出す。
「アドラさん、ちょっと待……!」
「【ソウルスナッチ】」
そしてあっさりと、ロディアに魔術をかけられ、動きを止められてしまった。
「アタシ、は。理解しちゃったのヨ。アンドレアとハーニヤの人生に狂わせた秘密は……」
「ちょっと静かにしようか、武器職人さん?」
ロディアはアドラさんの口を塞ぐように、闇の魔力で生成された糸を巻きつける。
しかしそれでもアドラさんは、口を裂かれながらも声を精一杯に紡ぎ出した。
「秘密、は……!この大きい壁、そのものと!パワードスーツが、壁を、『認識した』ジィン、ぢゃんを、救世主っで、呼んだ、こと……!ぜん、ぶ、繋がっ、だ、わ……この悪魔は……」
「アドラさん、無理をしてはいけないわ!生きてさえいれば、その程度の傷で済んでいるなら、私が……!」
静止するメイラークム先生。
しかしあろうことか、アドラさんはゆっくりと金槌を構え直し、こちらへ視線を向けた。
「さあ。君にはちょっと、僕に協力してもらおうかな。武器職人さん」
ロディアの指があらぬ方向へ回転する。
そして、闇の糸が放つ不気味な光を見失ったと思った時。
「もう、アタシは……アナタ達の味方じゃあ、いられないかもしれないワ」
傷だらけのアドラさんは、ガラテヤ様から貰った俺の刀を一撃で砕いていた。




