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四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜  作者: 最上 虎々
第九章 在るべき姿の世界

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第百三十話 未来、或いは過去の力 その三

 石碑ゴーレムの両手から放たれる魔力弾の雨を避け、俺は仲間達の道へ放った風に声を乗せた。


「皆!次にビットが地面から湧いてくるタイミングがあったら、その下の地面を見といて欲しい!」


「了解した!でも、何故だ!?」


「下に霊脈があったら、そこからビットが湧いてる可能性が高い!ゴーレムの動力に何が使われているかは分かりませんが、霊脈から魔力を吸い取っているのだとしたら、霊脈から奴らが離れるように誘導すれば、動きを封じられるかもしれない!」


「わかった。じゃあ、とりあえず今浮いてるのを壊さなきゃ。……【闢雷(びゃくらい)】」


 ファーリちゃんは雷を纏い、石碑ビットを瞬く間に堕としていく。


「はッ!ガアッ!喰らえやァ……【炎灰阿(エンパイア)】!」


「【オーガー・エッジ】!」


 バグラディとマーズさんも、渾身の一撃で石碑ビットを何体も破壊した。


「【探る風】。これで、ある程度の距離までなら、湧いたビットの位置を特定できるハズよ。久しぶりね、この魔法使うの」


 その間にガラテヤ様は「探る風」でビットの位置を探るためのセンサーとなる風を吹かせておく。


 その間、俺は時間を稼ぐため、石碑ゴーレムの相手を始めた。


「ピキュキュキュキュゥゥン」


「メカメカしい音ばっかり出しやがって……ロボットアニメの世界から出てきたみたいな奴が、何でこの世界に……!」


「ジィン。……私達、もしかしたら……とんでもないものを探しに来ちゃったのかしら」


「怖いです、俺。爺さんくらいになるまで生きといて何ですけど。感じませんか、キナ臭いっていうか。平安の世で味わったような、人間……か、それ以上の存在が持っている闇……みたいなの。……分かります?」


「ええ。……この、妙に《《この世界にあるものだけでは道理が通らない》》感じ……魔法がある世界に言うのも違うかもしれないけれど、それにしても奇妙ね」


 ますます、この世界の奇妙さが増していくというものだ。

 パワードスーツは、錬金術師アンドレアが作ったものなのだろうが……この石碑も、彼が作ったものなのだろうか?


 そうなのだとしたら、更にアンドレアの脳ミソに何が詰まっていたのか怖くなってしまう。


 そして、そうではないのだとしたら……いよいよ世界を巻き込みかねない「何か」が絡んでいる事案の可能性まで出てくるというものだ。

 例えば、都市伝説でよく聞く「過去に起こった大きな戦争により、既に世界は一度滅びている」……的なヤツである。


「ピキュキュキュキュ、キュイイイ……!」


「【駆ける風】……!これでダウンさせますから、探知の方よろしく!」


「任せなさい!どこからビットが湧いてるのか、しっかり見破らせてもらうわ!」


 俺は石碑ゴーレムの左脚と腹部に連続で蹴りを入れながら高度を上げていき、更に右腕を蹴って飛び上がる。


「それじゃ、ちょっと時間を稼がせてもらうか……!喰らえ!絡め取り、斬り払う……【女郎蜘蛛(じょろうぐも)】!」


 そして空中で一回転する間にナナシちゃんから貰った刀を抜き、風の魔力を込める。


 その刃は、石碑ゴーレムの胴体を切断こそしなかったものの、バランスを崩させ、一時的にであるが、石碑ゴーレムをバラバラの石碑ビットへと戻したのであった。

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