第百二十九話 未来、或いは過去の力 その二
ナナシちゃんの刀は、見事に小型の石碑ビットを真っ二つに斬り裂く。
「ジィン!?どういうこと、霊体化から戻ったの?」
「いや、普通に身体はオバケです!ついでに装備も!でも、ナナシちゃん……革命団と戦った時に爆破された剣士の女の子から貰った刀だけは、霊体化した俺でも使えるし、実体のビットにも攻撃が通るんです!……これ、チャンスだと思いませんか?」
ビットの攻撃は霊体化している俺に当たらず、しかし俺の攻撃は、ナナシちゃんの刀に限るが当たる。
時間はかかるかもしれないが、最悪の場合、皆には下がってもらい、俺だけがチマチマとビットを破壊し続ければ、いつかは片付くということになるだろう。
しかし、そうは問屋が卸さないようであり。
「ジィンお兄ちゃん、気をつけて。ゴーレムが何か変な動きしてる」
「は……?」
石碑ゴーレムは魔力を、あろうことか俺やガラテヤ様が使う霊の魔力に変換し直して、こちらへ放ってきた。
「ピキュゥゥーン……」
「うおおおっ!?」
全身に叩きつけるような、魔力の衝撃。
基本的に、俺達は霊力を魔力に変換して放出することで、魔術を使うことができている。
それをそのまま純粋な魔力として放つか、炎や風などの自然にあるものへ擬似的に変換するかは使い手次第なのだが……まさか、霊の魔力へ変換してくるとは。
霊力と霊の魔力は違う。
そして石碑ビットは、ただ純粋な魔力のみを放出してきた。
「ジィン!大丈夫!?」
「ええ、何とか!オバケでも感じるんですね、痛みって!」
「あの力ァ……俺がジィンに山で斬られまくった時のアレと同じ力じゃあねェか……?」
霊力を魔力にこそ変えることはできていたが、それから「何かしらの魔力」へ変換することはできないはずなのだ。
……であれば、考えられる理由はただ一つ。
霊の魔力は、純粋な魔力をさらに凝縮したものであり、しかしその領域にまで密度を濃くした魔力へ変換することは、何かしらの条件を満たした存在にしかできない、とものである。
俺やガラテヤ様と、ビットが合体したゴーレム、その全員が満たす、「霊の魔力」を生成する条件は分からないが、しかし確実に、そういう造りのゴーレムであることは確かだろう。
合体前の石碑ビット状態では、霊の魔力へ変換したビームを撃ってこないという点は引っかかるが……あの大きさでは出力が足りなかったとか、排熱がどうこうとか、そういう理由だったのだろうと思うことにしよう。
それにしても、マズいことになった。
倒しても倒しても出てくるビットに加え、それらが合体してゴーレムになり、俺やガラテヤ様が心身共に大きな負担をかけて放つ霊の魔力を普通に使ってくるとなると……このままではジリ貧どころか、普通にパワー負けする可能性も出てきた。
何とか、あの石碑ゴーレムや石碑ビット達の弱点を見つけなければ。
は未知の技術が使われているとはいえ、相手はプログラムに則って動くロボット。
どこかに弱点があるハズだ。
俺はまず、動力がどうなっているのか、そこに目を向けてみることにした。




