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鳥の落とし物と翎~Vogelkot und Bambus~  作者: 酉藤宥
序章 全ての始まり
1/1

創成

どうも、とり ふじなだ といいます。

今回初めて小説執筆に手を出しました。

アニメのシナリオにするつもりで書いています。

まずはプロローグだけですが気になってもらえればなと思っています。

  山巓(さんてん)の猿


 一匹の猿がいた。それは何かを知っているようだった。ただひたすらに、真っすぐに山を目指した。高く、高くただひたすらに高いその山を。やがて子をなし、力尽き朽ち果てるまで。そしてその子もその山を目指した。さらにその子も、さらにまたその子も。そうして時がたち、猿の子孫は二足歩行をし、火を手にし、道具を作り出し、集落を形成しだした。彼らは定住というものを知った。いつしか、あの山を目指さなくなっていた。彼らの祖先のあの猿が何を目指していたかも知らずに。


  残月(ざんげつ)と風


 まだ星も落ちきらぬ夜明け前、荒野を駆ける者が、一匹と一人。残月に赤黒い毛を煌めかせ疾走する一匹の上に一人、暗く黒い袖の無い外套に身を包み、黒い六尺【182㎝】の棒と背嚢が外套から覗いている。そして腰には、煌びやかな太刀をはいている。その者らの背後には白銀に輝く大きな三日月と、その半分の大きさの半月が浮かんでいた。そして駆け抜けた後に遺された跡は風に飲まれてゆく。


  暁


 あるところにとある夫婦がございました。小さく簡素な畑と少し傾いた掘っ立て小屋がぽつぽつとある集落の中、森に飲まれそうな場所に少し新しい掘っ立て小屋に暮らしていました。

 その夫婦には子がありませんでしたが、つい先ほど妻の様子が変わりました。突然めまいを起こしたのです。その日に限って夫の帰りが遅いのです。日の落ちかけたころ、帰宅した夫はいつもは笑顔で出迎える妻が床に臥せっているのを目にしました。荷物を投げ打っち駆け寄った夫の耳に静かな妻の寝息が届き、妻の傍らに崩れ落ちました。

 自分で準備したまずい食事を口にしながら静かな家にかすかに広がる妻の寝息に静かに眉尻を下げ口角を下げました。

 翌日妻は婆様を訪ねました。果たして、彼女は子をなしていました。まだ日の高いうちに帰宅した夫と食卓を囲みながら、子をなしたことを打ち明けました。夫の顔には、嬉しいやら不安やらで何とも言えぬ顔をしたかと思えば、一度目を伏せた夫の顔はもう父親の物でした。


  黎明


 記憶にあるのは、遥か高い山空を支えるように聳え立つその山が呼んでいる。いかなくちゃならないと、強く感じた。手足が震え立てなくなっても這ってその山を目指す。そんなことばかり。森にほど近い掘っ立て小屋に産まれ落ちて三年がたとうとしていた。家の外に出るようになった。敷地からは出してくれない。山を探さなくちゃいけないのに。なぜ?わからない。なにがしたい?わからない。なぜいきている?わからない。

 七歳の誕生日、母はご馳走を用意した。肉がたくさん並んでいるし、畑の野菜がふんだんに使われている。よだれが止まらない。ナナサイになったのだ、明日からは父について山に入るそうだ。家族の為になる事が唯々嬉しかった。


  朝朗


 父に揺さぶられて目が覚めた。母の用意した昨晩の残りを温めたものを喉に通した。両親の用意した荷物を身に着け、森側の出入り口を産まれて初めて潜り抜けた。西の空に最後の星が瞬いた。興奮と眠気と不安を胸に抱きながら、「行ってきます。」と母に手を振った。父は母を抱きしめ、頭を二度なぞった。僕の頭に手を乗せ嬉しそうな寂しいような笑みを浮かべて「行ってらっしゃい  」と、父と僕の顔を交互に見た。父は僕の方を気にしながら、森に向かって歩き始めた。「森の歩き方は、自分で見つけなさい。そうだな、はじめのうちは私の後ろをついてきなさい。」そう言いながら森に踏み込んでいった。いつもよりゆっくりと行動してくれているのだろう。しかし、僕には少々早すぎた。すぐに息が切れてきた。集中が切れてきたとき、父は唐突に止まった、獲物が見つかったらしい。息を殺して「ここにいなさい」と父は身振りをした。初めての狩りに喉を鳴らした。

 家に帰ってこれた時には、もう立っていることがやっとだった。温かい夕食を食べた後すぐに眠ってしまった。そんな日がしばらく続いていたある日、雨で狩りを中止にして家にこもっていた。木窓に打ち付ける雨音を聴きながら、何か忘れている気がするような気がした。


  旅立ち


 あの雨の日から五年がたとうとしていた。今日まで僕は父さんについて森の中を駆けずり回った。父さんは長い弓を使う。たまに集落に来る兵士はもっと短い弓を持っていたし他の猟師は罠を使った。僕は父さんから弓の使い方を盗んだ。父さんの起きる数刻前の淡く東の空が色づき始める頃に起きだして練習した。父さんからは獣のさばき方を習った。川まで担がされるので捌くころにはヘロヘロだった。それでもこの五年でそれなりに使えるようになってきたと思う。あくまで個人の感想だ父さんがどう思っているかは知らない。朝の練習を終えて家に戻って朝食の準備をしている母さんに声をかけた。「母さんできたの並べるね」そう言ってできていたものを食卓に運んだ。いつもなら返ってくる母の返事がない。ぼすっと後ろで何かが落ちる音がした。振り返ると母さんの姿が見えない。急いで台所に戻ると母さんは床にへたり込んでいた。「父さん!!かあさんが!!」母さんの傍らに膝をついて起こそうとしながら叫んだ。隣の寝室から転がるように父さんが飛び出してきた。すぐに母さんを抱き上げ寝室に運び込んだ。ドタバタと父さんと二人で協力して看病を始める。「ばばさまを呼んで来い」そう言ってじぶんはお湯を沸かし始めた。僕は急いでババ様のところに駆けこんだ。「ばばさま!!かあさんが!!」すぐにババ様は用意を始めてくれた。ババ様を引っ張って家に戻ると、父さんは母さんの額の汗をぬぐっていた。ババ様は何か良く分からない木の棒を取り出して診察を始めた。眉間に深いしわを刻んだ。ババ様は目を伏せると父さんに向きなおった。「残念じゃがあまりにも遅すぎた。目に見えて衰弱していっておる。呪いかそのたぐいのモノじゃな。」とても苦しそうな母さんにババ様あいっしに祈祷をしているのを横目に僕は崩れ落ちるしかなかった。母さんは東の空が暗み始めた木々の木の葉は黄金に輝きだした時、何処かへか体を置いて旅立って行ってしまった。ババ様は母さんに何かを付けた後、静かに立ち上がるとどこ変え立ち去って行った。それを止める気にも何処へ行くかさえも聞く気もおきなかった。一の月が山から顔を覗かせたとき父はふらりと立ち上がり食堂へと向かっていった。

 どれくらい時間がたっただろう、寝ているのか起きているのかもわからぬ時間が過ぎていく中ひどい空腹を覚えて食堂へ向かった。そこでは父が母が倒れる直前に完成させていたスープを父が温めていた。それを机に並べると「起きたのかさあ、いただこう」と手招きをした。僕は言うとおりに椅子に座った。いただきますと言ってスープを口に運んだ。何とも言えぬ喪失感に襲われた。なぜかわ分かっている分かっているが止まらないのだ。視界がゆがみスープに波紋が広がった。ああ泣いているんだなと思ったが止めようとは思はなかった。父は顔をゆがめくしゃくしゃにしながらスープの味をかみしめるようにして飲んでいた。このスープが母さんの最後の味だと痛感した。

 あくる朝、ババ様や集落のみんなが葬儀を行ってくれた。父と男たちが掘った大きな穴に母を寝かせ母の物や花などで囲んでいった。最後に父が装飾した大きな鹿の角のお守りを母さんに持たせた。父は上に上がると顔を覆うように土をかぶせた。僕を呼び僕にも同じところに土をかぶせるように言った。僕は前がよく見えないまま土を被せかけた。

 あくる日からは父と狩りを再開した。森に入り、大物が獲れるか日が傾くと変える毎日が続いていた。そんなある日父は僕に弓を渡したそして弓の使い方を教えてくれるようになった。コツなどを聴きながら僕が隠れて練習しているのはばれていたんだなと気づいた。しかし実際に教わると今までにないぐらいに成長できていることが自分でもわかるほどだ。ほどなくして父は「私はもうお前に教えることは無くなった。この集落にいる理由も亡くなってしまった。これが最後だと思いなさい。」と食卓を片付けた後の白湯をすすりながら静に言った。いつになく饒舌な父を見ながらああ、母さんがいたからこの集落にいたんだな。と思い至った。それは全くもってほかの人とは確実に違う見た目や仕草や狩りの仕方などからこの集落の人間ではないとうすうす気づいていたからである。「どうやって母さんと知り合ったの?」と向かいの椅子に座りながら父さんに問いかけた。「私がこの集落の物ではないことはうすうす気づいているのであろう?それはその通りだ。私は遠いところから旅をしてここにたどり着いた。衰弱しきっていた私をババ様が介抱してくださったんだ。そんなこんなで集落の広場の切り株に腰かけているときに彼女を見初めたのだよ。」とても懐かしそうに語る父の姿は新鮮で悲しそうだった。僕たちは母さんの話を一晩中語った。

 気づくと僕は布団の中にいた。布団から出ると食堂に向かった。

 食卓に真新しい狩りの道具が並んでいた。


 文明への路


 あれから、何年経っただろう?集落の仲間からは山の恵みや川の恵みを貰い、獲れた日は肉をわけていた。シシガミは気まぐれだ恵みを与えてくれる日もあるが、与えてくれないことの方が多い。貰ってばかりで悪いとは思わ無いわけがない。何か保存ができ、美味しい物はこの世に無いのだろうか?そんなことを考えつつ今日も森に入った。

 ある夏の日、森で野宿することにした。夢を見た、太陽の光を一杯に貯め輝く黄色の植物の美しい光景のだ。あれは何だったのか、あの植物を探しながら狩りを続けることにした。だがなかなか見つからなかった。時間は流れるように過ぎ去り、どんな植物だったのかよく分からなくなってきていた。

 森が色付き始めた頃、川の畔にあの黄色が広がっているのを見た。あぁこれだ、とすぐに分かった。家からは随分はなれたが、二日くらいのところだったのでその黄色く膨れた所をなるべくたくさん持って帰った。

 二日の道を一心不乱に帰った。家に着き直ぐに黄色の実の食べ方を色々試すことにした。火にかけた土器にぶちこんでみた。中身は柔らかいけど、殻が邪魔だ食べにくい。殻を外して食べるのは手間だ、ぶちこむ前に一つずつ殻を剥いていくことにした。イライラしてきてぶっ叩いたら中身が飛び出した。これだと思い、色々試した。へっこんだ切株に木の棒を突き立てたときが一番楽だった。

 集落の木の加工が得意な奴に頼んで円いところがへっこんだ丸太と角を取った木の棒を作ってもらった。楽だ、でも分かれたはいいが一緒になっているのはなかなかきつい。息を吹き掛けるだけで飛んでいくが大変だ。とりあえず分かれた茹でたらいい感じになった。これは、腹が膨れて良い。

 翌日、長にはなしに行った。ババ様は少し前に亡くなってしまった。長は始めは疑っていたが茹でたのを食べるととたんに表情が変わった。何処にあるのか詳しく聞き出し、数刻後には全てが整い直ぐにでも出発できる状態になった。

 翌日は雨が降り断念、またその翌日に出ると三日後に着いた。半分ほど刈り取り半分を残した。半分残さないと土地神が怒り次の年からはなくなってしまうからだ。

 四日ほどで集落に帰ると各家に振り分けた。

 私はこの実を黄実(おうみ)と呼ぶことにした。

 壺に入れて木の板で蓋をしていた家の黄実が減っていると相談された。夜通しその壺を見張っていると、小さいのが蓋をこじ開け黄実を漁っていた。少し大きな石をのせると蓋は開けられないようだった。

 数年間そんな暮らしをしていたある時、沼地に黄実をぶちまけて、そのままにした奴がいた。翌年その場所には黄実が繁っていたのだ。腰を抜かすほど驚いた、庭にぶちまけてみることにした。強い風が吹き飛んでいった。あきらめない。次は土を柔らかくして土のなかに埋めた。緑のピヨピヨが出てきたが直ぐに黄色くなってしまった。川の水を運んでいる時につまづいてしまい水を少しこぼしてしまった。するとどうだろう、黄色かった葉はみるみる緑に色付き始めたではないか。私は歓喜した。毎朝水を少しずつこぼしておいた。すると森の木葉が色付く頃に黄実が繁っていたのだ。しかしまあ貧相なこと。悲しくなったがまだあきらめない。川辺の土や沼の土を持ってきた。それを土にぶちこむと黄実が膨らむようになった。

 試行錯誤や改良を重ね地面とは別の地面ができたこれからはこれを畑と呼ぶことにした。

 

 さて、男の住む集落は何時しか村と呼べるまでに発展した。村の周りには畑が広がり、収穫時期になると畑は一面黄金に輝くのであった。片手で数えられるほどだけ畑が黄金に輝いた時、男話この世を去った。黄実により生活は豊かになっていく一方だった。さてあの男の孫の代のこと、とうとう畑を広げる土地がなくなってきた。あの男の子孫たちそして狩猟を生業にしている者と畑を広げ覇権を握りたい者たちの間に亀裂が生じ始めていた。あの男は狩猟と畑作の両立を目指していた。しかし、畑を主軸とし外部の村から肉を仕入れればよいという考えをしていた。さらに言えば独占しようとしていた。しかしあの男の遺言は黄実の技術を広げてほしいというものだった。よって対立は激化する一方だったのである。子孫たちは黄実の原生地の向こうに新たな村を作る計画を作り出した。

 のちの世に言う聖地回帰を行った子孫たちはこう呼ばれることになる。ディーチェウェリング...ディウェング、と。彼らは各地の集落をめぐり黄実の育て方を布教して回っていた。しかし、やはりというべきか独占派の者たちからの妨害が行われていた。

何もわからなかったと思いますが、ここからはとっつきやすくなるかなと思います。

どうぞ良しなに。

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