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わたし、死なないの?

「余命三か月」が花なのだったら、わたしは死なないわけで……。


「そうだよな。アイ。きみは、殺しても死なないだろう。なあ、フリッツ?」

「ええ、殿下。剣豪と呼ばれるおれでも、アイを斬殺や刺殺することは難しいです」


 コルネリウスとフリードリヒは、いったいわたしをなんだと思っているの?


「『孤高の悪女』は、どんな魔女よりもしぶといだろう。だが、おれにとってはそれがいいんだがな」

「まあ、殿下ったら」


 コルネリウスの言葉に、なぜかアポロニアが美貌を赤くしている。


 コルネリウスは、指先で鬢のあたりをかいてからお父様たちにわたしを妻に迎えたいと申し出た。


「やっとですか、殿下。遅いくらいです」

「そうですわ。アイも待ちくたびれていたのですよ」

「自慢の妹です。殿下といえど、泣かすようなことがあれば許しませんからね」


 お父様と継母と異父兄は、一応よろこんでいるふりをしている。


「ちょっと待ってよ。まだ、『イエス』と言っていないでしょう? 勝手に盛り上がらないでちょうだい。だいたい、好きでもない相手と政略結婚でもないのに結婚するなんておかしいでしょう? あっもしかして、わたしはダミー? 偽装結婚とか契約結婚とか、そういう類のもの? だけど、そんなことする意味ないわよね。だって、シュレンドルフ伯爵家は皇太子妃になるには申し分のない家系だし」

「きみこそ待てよ。まだ『イエス』と言わないつもりなのか? それに、どうしてシュレンドルフ伯爵家が関係あるんだ? バッハシュタイン公爵家と縁戚関係でもないだろう?」

「コルネイ、ここにきてまだとぼけるつもりなの? いい加減想い人にちゃんと言いなさいよ。こんなの、カサンドラの盗難でっちあげよりも茶番だわ。あなたが言わないのなら、アポロ、あなたから言いなさい」

「えっ、わたし? どうしてわたしが?」

「あなたまでとぼけるの? どっちもどっちよね」


 胸の痛みもあって、イライラが募るばかりである。


「アイ、もしかしてなにか誤解していないか?」

「誤解? そんなものしようもないわ」

「いいや。誤解している。もう一度言う。だから、全力で集中してきいてくれ。おれが愛しているのは、アイ、きみだ。きみを妻にしたい。きみが欲しい。きみこそがおれのすべてだ」

「キャー、素敵」


 アポロニアは、いまにも卒倒してしまうのではないかというほど大興奮している。


 その横で、わたしはますます冷静になっていく。


「フリッツ、いまのきいた? あなたも殿下みたいに熱く告白してくれたらよかったのに」


 そんな冷静なわたしの横で、アポロニアはえくぼの可愛い頬をふくらませた。


「悪かったよ。おれは、殿下みたいに飾るのが大嫌いだからな。『アポロ、おれの妻になれ』。これこそが『ザ・告白』だと本に書いてあった」


 わたしが見つめる中、フリードリヒがごつい肩をすくめた。


 ちょっと待って。


 どういうこと?




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