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白い部屋  作者: いちこ
慎翔
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「あれ?どこだ此処」


 気がついたらここにいた。


 白、白、白。

見渡す限り白い部屋。

いや、部屋ってよべるの?

これってどこに壁あんの?

もう外じゃね?


 空が見えないから屋内なのか、と納得できるはずもなく、ぼんやりと胡座をかく。膝に肘をつき、顎を手で支える。

 頭の重みで上半身が前のめりに倒れてきた、そのままべしゃっとうつ伏せに倒れる。床は磨き上げた大理石みたいで、ツルツルでヒンヤリしてる。ほっぺに冷たいのが気持ちいい。


「どういう事?ここどこ?なんでこんなとこにいんの?」


 独り言ちるけど、それに応える声もなく、ゴロリと仰向けになる。

天井も真っ白で何も無い。


   記憶喪失


ふと思い至って、今までの自分のことを思い出してみる。


 俺は 中瀬なかせ 慎翔まこと

21歳の大学生だったはず。

だったはずって云うのは、いつ、なんで、どうやってここに来たのか、全く記憶に無いのだ。


 なんとなく大学に通ってた、あとスーパーでバイトもしてたってことは覚えてる。

 西の方の地方都市で生まれ育って、大学に行く為に大都市にやってきた。

やっと標準語にも慣れて、バイトにサークル活動にとやってた

ような気がするんだけど…。

 父さんと母さん、弟と妹。住所に学校名、今までのことちゃんと出てきたわ。

 一応記憶喪失では無いってことかなあ。

ただそれがどれくらい前の話か、今が何月何日なのか分からない。


 いつからここにいるのか、いつまでここにいるのか、分からないことだらけで呆然としてしまう。


 とりあえずムクリと立ち上がる。

自分の姿を見下ろす。

Tシャツに前開きのパーカー羽織って、ゆったりめのチノパンにスニーカーを履いてる。

それは全て白い。


 これだけ真っ白だったら目がチカチカしそうなもんだけど、何故か目に負担は感じない。


「どこまで行けるんだろ?」


ふと気になって、歩いてみた。

方角なんか分からないから、気の向くまままっすぐ進む。


 しばらく歩いて振り向いて、スタートがどこだったか分からなくなってた。

白しかないから、目印も無いもんね。

しょうがないから、ひたすら歩く。


ガンッ「痛って」


 突然ガラスみたいな硬いのにぶつかった。

どうもここが端らしい。

 ここで羽織っていたパーカーを脱いで置く。

左手で透明のガラスに触れながら、時計回りに歩き出す。

こうすればどれくらいの広さか分かるんじゃないかと思ったのだ。

 ガラスを手でコンコンとノックしてみる。ガラスと云うより強化プラスチックみたいな感じだ。

ただひたすらに歩いてるのに汗ひとつかかないことに気がついた。


「なんで…」


 暑いも寒いも無いし、結構な時間歩いてるのに喉も渇かないし、お腹も空いた感じがしない。

 トイレに行きたくなることも無い。

とりあえずひたすら歩くことにした。もしかしたらどこかに出入口の扉があるかもしれないし。


 結果としては部屋は四角だった。

歩数を数えながら歩いてたけど、エグい数字になってきて数えるのをやめた。

 かなりの時間歩いてパーカーまで戻ってきた。扉は無かった。

ただものすごく広いんじゃないかということはわかった。


 置いてあったパーカーをもう一度羽織る。

身体は疲れた感じはしないけど、精神的に疲れた。あんまり考えたくは無いけど思わずにはいられず、ふと独り言ちる。


「やっぱ死んでんだろうな。俺。」


人間生きてたら喉も渇くし、お腹も空くし、トイレも行きたくなるはずが、ここまで結構な時間が経ってるのに、全くそういう願望がわかない。

 ただ精神的に疲れた俺はせめて横になろうと座り込む。冷たい床はおしり冷えそうだな。


「あれ?絨毯?」


 いつの間にか足元に絨毯がある。

低反発マットみたいなのがの入ってるのか分厚い絨毯は毛足も長くてふかふかだ。

 たぶん家にあったら掃除とかすごい大変そう。そんなふかふかの上に土足で立ってるのはいただけない。スニーカーを脱いで、ゴロリと横になる。

  気持ちいい。

 こうなると枕代わりにクッション欲しいなーなんて思ってたら、白いクッションがゴロゴロ置いてた。


「何これ肌触りめっちゃ良い」


 色んな肌触りのクッション囲まれて、その中からお気に入りの生地のを近場に見繕った。


 なんか難しく考えるのも疲れたので、たくさんのクッションに埋もれるように横になって瞼を閉じる。やっと白から黒になった。何も見えないけど。

 絨毯がマットレスの役目も果たしてくれてものすごく寝心地がいい。暑くも寒くもないからブランケットとかなくても全然寝れるなー。

 でもこれで眠気もなくてずっと起きてるとかだと精神病んじゃうんじゃない?って不安になりながらも、目を閉じる。

 杞憂だった、めっちゃぐっすり眠った。


  結局ここはどこなんだろう。

 あんまり危機感が湧かないのも変だし、まあいっかって思ってる。


 流行りの異世界なんとかなら、神様とか出てきても良さそうなんだけど、マジで放置っぽいし。


 することも無いから肌触りの良いクッションを枕にうつらうつらと寝たり起きたりの生活をしばらく過ごした。


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