1000回使ったアダルトDVDに付喪神が憑いたが、近所でも有名な巫女さんに悪霊が取り憑いていると言われ、お祓いを受けることになりました。
「あなたから悪霊の気配を感じます……!!」
コンビニに行く最中、通りすがりの近所でも有名な神社の前で、竹箒を持った巫女さんに声をかけられた。
逆ナンか?
逆ナンなのか!?
逆ナンじゃないのか!?
「正確にはその袋の中から悪霊の気配がしますぞ!!」
巫女さんが俺に断りも無く、手提げ袋の中へ手を入れてきた。
多少強引なのも悪くはないが、俺はムードを大切にする派なので、出来ることならもう少しトークしてからにして欲しい。
「やや! このDVDから類い希なる悪霊の気配!!」
巫女さんが手にしたのは、俺のお気に入り女優が出ている傑作【淫ら団地妻。102号室の奥さんは午後3時から少し暇をしている】だ。しかもサイン入り!
何故このような物を持っているのかと言うと、これから友人の家でお泊まり会を開くからだ。QED。
「うおおおお!!!! なんと強い霊気! これ程に禍々しい悪霊は見たことが無い……!!」
ディスクを取り出し巫女さんが慌てふためいている。俺には何も見えないが、とりあえず急いでいるので返して欲しい。
「貴殿! 何か思い当たる節は!?」
「まあ、1000回は使いましたから」
「なんと! したらば付喪神か! 長い年月をかけて育ちよったな!?」
「まだ発売してから一ヶ月だから、新作ですよ」
「──なんとッッ!?」
巫女さんは木の棒に紙で出来たギザギザを大量に付けたやつをファッサファッサし、お祓いを始めた。
「悪霊退散、悪霊退散!!」
「うわぁ、生の除霊とか初めて見るわー」
袋から炭酸水を出し、適当に腰を掛けて見物をする。気迫に満ちた巫女さんは既に大量の汗をかいており、見ているだけで生唾ものだ。
「悪霊退散なんたらかんたら!」
「呪文適当過ぎません?」
「始めチョロチョロ中パッパッ!!」
「本当に合ってます?」
巫女さんが呪文を唱え続けると、DVDから嫌な感じの靄が溢れ出した。
靄はやがて一つに纏まり、大きな女性の姿へと変わり果てた。
「おお、これは凄い」
ポテチ(コンソメ)を食べながら、写真を撮る。
「出たな! 本来であれば付喪神は悪霊化などしないであろうに、このままでは危険だ! 破壊するしか他あるまい……!!」
「え?」
「DVDを破壊するのだ!!」
「は?」
巫女さんが神社の中から大ハンマーを持って現れた。
待て待て待て!!
俺のお気にのDVDを破壊するとか正気か!?
たまらず駆け寄り、大ハンマーを振り上げた巫女さんを止めた。
「背に腹はかえられぬ! 破壊せねばお主は殺されてしまうぞ!!」
「そのDVDが無くなったら俺は生きがいを失って死んでしまう!!」
「DVDはまた買えば良いではないか!!」
「サイン入りはもう手に入らない!!」
「サインは書いて貰えば良いであろう!!」
「その女優さんはそれが引退作なんだ!! もうサインも貰えないんだよ!!」
「そもそもアダルティなデジタルでバーサタイルのディスクが生き甲斐とは何事じゃ!!」
「彼女が居ないんだから仕方ないだろ!!」
「ならば彼女を作れい!!」
「だったら彼女になってくれよ!!」
「──!?」
巫女さんの動きがピタリと止まった。
しばし無言で見つめ合う二人。
後ろでは付喪神様がこちらの様子を伺っている。変身シーンで手を出さない悪役みたいに大人しい。
「わ、私とか!?」
「素材は悪くない素材は悪くない」
「は、初めて告白された……!!」
「……磨けば光る?」
「ちょっと着替えてくる」
俺と付喪神、あと大ハンマーをさておき、巫女さんは神社の中へと引っ込んでしまった。
「キュートとセクシー、どっちが好みじゃ?」
「キュート寄りのセクシーで」
しばらくして、巫女さんはフワフワとした現代風のアレな感じの服を着てお出でなさった。キュート寄りのセクシーな服なんだけど、服のことは詳しくないから何を着ているのかは知らん。
「どうじゃ?」
「可決」
俺は大ハンマーでDVDを破壊した。
付喪神を形作っていた靄が広がり薄くなっていく。
そして俺は巫女さんと付き合うことになった。
──で、今度は巫女さんに付喪神が憑いたのかって?
巫女さんは物じゃないから、大丈夫さ。
「たわけ!! ハンディマッサージ機とお気に入りの下着に悪霊が……!!」
「まあ、1000回は使ったから、ねぇ?」
「ねぇ? じゃない!! この下着はまだ買ったばかりの新作じゃぞ!?」
「まあまあ」
「悪霊退散、悪霊退散!!」
「サインコサインタンジェント?」
「お主! いつの間にその呪文を……!?」
「適当に言っただけなんだけど……」
「ええい訳の分からぬ事を!! さっさと祓ってしまうぞい!」
「祓ったらしようね」
「たわけ!!」
「しないの?」
「するわい!!」
こうして、俺は神社に永久就職した。
煩悩に塗れた俺に務まると思わなかったが、まあ、たまにはそういう神社もありと言うことで。




