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大罪人の捧げる花  作者: 天桜犀 海陽
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目標との対面

次の日から、毎日エリディカとユリアナ両親に領主様の別邸へ行ってくることを告げ、ハンスのもとへと遊びに行った。


行くごとに3人の中は仲良くなり、今では、エリディカが姉で、ハンスが次男、ユリアナが末の妹のように見えるまで仲良くなったのである。

3人は


そうなるまでには、山の状況の調査が終わり、なぜ山の守護神や主と呼ばれるほどの魔獣が群れでいることがなくなり、一匹でいたのかその理由が分かった。


山の守護神と呼ばれる魔獣の狼のトップが代替わりをしているところだったのである。

そのため、統率が取れなくなり、はぐれてしまう狼が出てしまい、それを知った密猟者が密猟を行っていたのである。

モンスターと魔獣がこの世界には存在するが、モンスターは魔獣や普通の動物が負の感情に支配され誰でも持っていると言われる魔力が周りに漂っている魔力を取り込み、負の感情で煮え立ち、濁り、穢れてしまい、それがあふれ出し角が生えている存在で、魔獣は魔法の使える動物で、力の使い方を理解しており、強いというものであった。

モンスターは人でも動物でも危害を加えるが、魔獣は自分を害した相手に危害を加えるうえに、基本的に群れで活動しているため4人で戦うとなると勝てる見込みがないという違いがあった。

そのため、モンスターは基本的に討伐対象であるが、魔獣は被害がない限り討伐対象になることもなく、基本的には保護する形となっている。

また、密漁されるもう一つの理由があり、魔獣の毛皮や骨などに魔力がまとっており、昔は乱獲され戦争の武器として使用されていたからである。

モンスターの毛皮や骨も武器の素材として使えないこともないが、濁り、汚れてしまった魔力のため、扱いが難しくなっている。

そのため、魔獣のほうが乱獲されたのである。

今では狩猟をすることは禁止されているため、めったに出回らないのである。

だからこそ、密猟者も魔獣の統率の乱れを発見し、普段ならかなわないと分かっている相手でも戦えると分かっていたから、密猟を行っていたのである。


また、統率が取れていないとしても、こんなに簡単に密猟されることがないので、念入りに山の調査を行っていると、あることが分かった。

大型の熊のモンスターが、縄張りの中に入ってきていた。

トップを決めているところに邪魔者が入ってきたことで、統率がうまくいかなかったのである。


まず、領主が下した命令は、今回魔獣が統制が取れなくなった原因である大型のクマのモンスターを倒すことであった。


モンスターは誰彼構わず攻撃をしてくるため、村人には協力を仰がず、領主が連れてきた護衛騎士隊と領主本人で討伐を行うこととなった。


密猟者への対策という予定だったが、調査を行ったところモンスター討伐という形になってしまい、村の人たちはとても驚いていたが、心配はしていなかった。

なぜなら、領主が、国一番の騎士だということを村の人たちは知っていたからである。


モンスターとの戦いへ出発する際、ハンスや村の人たちは領主たちを見送った。


「お父様、お母様、お気を付けくださいね。無事に帰ってくると信じていますから。」


ハンスは、自分の父と母が強いことを知っていても、やはり戦いに行くということで心配になり、無事を願う言葉をかけた。

それもそのはずで、モンスターは大型であればあるほど周りの魔力を多く吸収し、強くなるということをハンスは知っていたからである。

その言葉を聞き、ハンスの両親はハンスに向け笑顔を見せた。


「ハンス、もちろん無事に帰ってくるとも。私たちが強いということを誰よりもお前が知っているだろう。」

「そうですよ、ハンス。私たちが無事に帰り、そしてモンスターを倒し、その証拠を持って帰ってくることを楽しみにしてください。」

「はいっ!楽しみにしております。ですから、絶対無事に帰ってきてくださいね。」

「ああ、わかったよ。」


ハンスの様子を見ていたエリディカとユリアナの2人は、ハンスを励ました。


「大丈夫だよ!ハンスのあこがれの人たちなんでしょう。」

「そうだよ、ハンスのお父さんとお母さんなら大丈夫。」

「ありがとう、2人とも。そうだね、僕の憧れの人たちがそう簡単に負けるわけない!」


ハンスは2人に励まされ、両親への信頼と憧れを思い出した。

それを聞いたハンスの両親は、今回の討伐への意気込みと勇気をもらい、出発した。


出発した部隊は、以前の調査でモンスターを発見した場所へと向かった。

森の奥地であるその場所へ着くのは少々時間がかかったが、難なくつくことができた。

しかし、その場所にモンスターはおらず、移動した形跡を見つけた。

慎重にその形跡をたどると、少し開けた場所にたどり着いた。

そこで、モンスターは狼の群れと戦っていた。

モンスターは、狼の群れに翻弄されているように見えたが、狼たちはまだ統率が少しとれておらず、大型のクマということもあり、そのパワーに押されていた。


隊長である領主のカイルはその様子を見て、狼たちの狩りの邪魔をするのはよくないとわかっているが、このままでは群れがボロボロになり、密猟者他紙が多く森に入ってきて、森の状況がさらに悪化してしまうと考え、戦闘に参加することにした。


声を控えめに、カイルは隊の全員に命令を下した。


「総員、戦闘配置につけ。守護獣を支援し、モンスターを倒すぞ。」


命令を聞いた隊員たちは、迅速に対応し、戦闘を開始した。


まずは、隊長であるカイルが簡単な風の魔法で開戦の狼煙をあげた。

しかし、その攻撃は固い毛皮に守られているクマのモンスターには通用しなかった。

攻撃が当たった瞬間、狼たちはカイルのほうを見たが、自分たちに危害を加える様子がないことがわかると、すぐにクマのモンスターのほうへ意識を向け、攻撃を再開した。

カイルたちも狼が、自分たちへ攻撃することがないとわかると、モンスターへの攻撃へ集中した。


まず、アルタが水魔法の上位魔法である、氷魔法でモンスターの足止めを行った。

それに合わせて、狼たちが闇魔法でさらに足の付け根まで足止めをした。


突然手足が動かなくなったことに驚いたモンスターは、暴れ始める。

土魔法を駆使していたモンスターは、地面を凸凹に隆起させる。

そのうえ、尖った石礫が四方八方へ飛んでいった。


全員がバランスを崩しながらも、自身の得意とする魔法で身を守った。

地面の隆起で、足を覆っていた氷の足止めは取れてしまったが、地面そのものから縫い留めていた狼たちの放った闇魔法の足止めは残ったままだった。


大きな力を使い、隙のできたモンスターへ全員が攻撃を再開した。

騎士たちが縫い付けられた足を切り落とし、狼たちが闇魔法をまとったかぎ爪や牙で胴体を攻撃するが、傷が浅い。


騎士たちや狼たちの攻撃に気を取られている隙に、カイルは近づき、炎魔法をまとった剣で頭を切り落とした。


足が切り落とされても抵抗していたモンスターだったが、さすがに頭を切り落とせば動かなくなった。


動かなくなったことを確認したカイルは、モンスターの首を持ち上げ、勝鬨をあげた。


「我々の勝利だ!」


その声が聞こえたとたん、騎士たちも喜びの声を上げた。

その声が響く間に、狼たちはもう用は済んだと、さっさと立ち去って行った。


共闘をしていたので、少しは余韻があってもいいのにと騎士たちは思ったが、野生動物にそんなことを求めても仕方ないとすぐ気持ちを切り替えた。


石礫が飛んできたこともあり、かすり傷を負っている者もいたが、宣言通り大したケガもせずモンスターを倒し終えた。

普通の騎士や傭兵であれば、大怪我を負っていた相手だったが、実力者ぞろいであった領主の騎士隊は軽傷で済んでいた。



部隊の者たちは、モンスターの死体を回収し、村へと戻ってきた。

それを見た村の人たちは、歓声を上げ、部隊の無事とモンスターの討伐が成功したことに喜んだ。

部隊の人たちが返ってきたのを見たハンスは、両親へ駆け寄った。


「お父様、お母様!ご無事でよかったです!それにしても、大きなクマのモンスターですね。」

「ああ、初めの想定よりも大きかったから少し戦闘が苦戦すると思っていたのだが、山の主である魔獣たちが先に戦っていてね。それに加勢する形で戦ったから、大きさの誤差による不利はなくなったんだよ。」

「それを聞いて安心しました。さすが守護獣様ですね!」

「群れの長が変わって、統率は少し乱れていたが、それでもやはり持ち前の強さで私たちが来るまで拮抗を保っていたよ。」


騎士隊の最後の人が村に着くまで、カイルは戦闘の様子を語って聞かせた。


最初にモンスターを発見した場所にいなかったこと、狼の魔獣とたたかっているのを見つけたこと。戦闘に加勢した時、味方だと判断するほどの知能を魔獣が持っていること。クマのモンスターが大きな魔法を使ったこと、それに負けじと戦い、モンスターを倒したこと。

そのすべてを語れるほど、時間があった。


騎士隊の者たちは、倒したモンスターの死体を運んできていた。

そのため、少々時間がかかったのである。


隊の人たちがついたのを確認した村人たちは、宴の準備を始めた。


村の広場の真ん中に、クマのモンスターの死体を置き、周りを囲むように宴の準備を行った。

宴の準備が完了したら、首を取ったカイルが死体に近づき頭に生えている角を切り落とした。

角を切り落とすことで、モンスターになる前の姿に戻す。

角は魔法を使う道具の核として使われる。


角がなくなった熊に、村にいる人たち全員で花をささげる。

その花は、幸福を招く、願いをもとに咲く花、フィアドーネの花と決まっていた。

フィアドーネの花で囲んだ熊を火で燃やす。

上る煙を見ながら、来世では負の感情にとらわれることなく、幸せでありますようにとみんなで願うのである。


みんなが願い終わった後、宴を始める。

追悼した熊の新しい門出を祝って。

みんなでどんちゃん騒ぎをして、来世がこんな風に楽しい日々であるよう見せるのである。


ハンスとユリアナ、エリディカは、初めて参加する葬送に目を輝かせていた。

想像していたものよりも華やかで、楽しい葬送に満喫していた。



葬送も終わった翌日、領主と騎士隊は本邸へ帰還することになった。

朝、ハンスたちは、別れの挨拶をしていた。


「もうお別れなんだね。」

「そうだね。もうおわかれだ。早い気がするけど、また来年定期的な森の調査のために来るから、また会えるよ。」

「また来年会えるなら、楽しみが増えるから、悲しまなくてもいいねユリアナ。」

「うん、そうだけど、やっぱりさみしいよ…。」

「じゃあ、これを預かってくれ。そして、来年来た時返してくれればいいから。」


そういって、ハンスはユリアナに自分がつけていた青い石がついたネックレスを渡した。


「これ、すごく大事なものなんじゃ!」

「ああ、誕生日の日にお母様からもらったものだ。だからこそ、また来るということが信じられるだろ?」

「…うん。信じて待ってる。楽しみにしてるね!」


ユリアナは、目に涙をたたえながらネックレスを胸元で握りしめた。


「ではまた、来年に!」

「またね、ハンス!」

「また来年にね!ハンス。」


その後は、お互い笑顔で挨拶をして別れた。


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