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大罪人の捧げる花  作者: 天桜犀 海陽
3/32

誕生と夢

一度、書き直そうとして、データが飛んでしまったため、一から書き直しました。

内容が少し変わってても、大筋は変わってないと思いますので、ご了承ください。

フィアドーネ連合王国の中にあるセーデルマン公爵領の端の山のふもとにある、ラニアス村にある2人の男女がいた。

2人は教会の学び舎で、共通の友人2人を通して出会った。

4人の男女は仲が良く、大人になり働き始めてもそれは変わらなかった。

男と女は服飾関係の仕事を、友人2人は薬師としての仕事をしていた。



ある日、男が女に求婚し、2人は晴れて結婚した。

結婚式には、親友であるあの共通の友人であった2人も来ていた。

その2人も、この結婚式で女の友人がブーケをキャッチしたことにより、その場で男の友人がプロポーズをし、結ばれることとなった。


そして、暖かい風が吹き、花が咲き乱れる風の4の月の24日である今日、男、ジャッド・ランドールと、女、ロゼ・ランドールとの間に1人の子どもが生まれる。

そこには、親友である2人、クレイグ・アルサモラとマリー・アルサモラも駆けつけていた。


「なあ、出産に時間がかかりすぎじゃないのか?ロゼも子どもも大丈夫だろうか。」


ジャッドは心配のあまり、今にも部屋に入ろうとしていた。

それを、クレイグとマリーが必死になって止めていた。


「大丈夫だからいい加減に落ち着け、ジャッド。何かあっても先生がついてるんだから。」

「そうよ、それに女性は男性が思っているよりも強いんだから。」

「でもっ!」

「でもじゃない。お前は医者じゃないだろ。その道の専門家である先生に任せておけば大丈夫だ。適切に対応してくれるだろうし、手伝いがいるならちゃんと声をかけてくれるさ。」


クレイグとマリーは、憔悴しているジャッドを落ち着かせるため、多くの言葉をかけた。

その時、部屋の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。


「やった!無事生まれたんだ!!」

「よかったな、ジャッド。」

「おめでとう、ジャッド。これであなたもお父さんね。」


親友の二人から祝福を受けるジャッドたちに、部屋から出てきた先生が中に入るよう声をかける。

助産師の方が抱いていた赤ちゃんを、父のジャッドに見せる。


「元気な女の子ですよ。」


その赤ちゃんは、黒い髪の毛の色だった。


「女の子か!嬉しいなぁ。黒髪ということは、ロゼに似たかわいい女の子になるな。」


ジャッドに続いて入ってきた、クレイグとマリーも赤ちゃんを見て声を上げる。


「まあ!本当にかわいいわね!きっとロゼ似のかわいい女の子になるわ!私たちの子どもも、どんな子かたのしみね、クレイグ。」

「ああ、この子みたいにかわいらしい子だよ、絶対に。」

「あなたがそう言うなら、きっとそうなんでしょうね。あなたの感はよく当たるもの。」


話している3人に向かって、ロゼは感謝の言葉を告げた。


「クレイグ、マリー。ジャッドのことなだめてくれて、ありがとう。部屋の中まで声が聞こえてたのが、耳の片隅に聞こえていたわ。ジャッド、この子が私たちの子どもよ。2人でいろんなことを教えて、大切に育てていきましょうね。」


クレイグとマリーは、ジャッドとロゼへ近寄った。


「お礼を言われるほどのことはしてないよ。」

「そうね、お礼を言われるほどではないし、私たちの子どもが生まれるとき、どうすればいいのか参考になったしね?」


そう言いながら、マリーはクレイグの方を見た。


「俺は、うろたえたりしないさ。お手本を見てるからね。」


今度は、クレイグがジャッドの方を見ながら言った。


「悪かったな、みっともなくうろたえて。だけど、当日になったらお前もそうなるかもしれないからな。今度は俺が止めてやるよ。」


ジャッドは、クレイグがうろたえると仮定して発言していたが、実際にうろたえるだろうと確信していた。

ジャッドは、ロゼに近づき赤ちゃんを見ながら話しかけた。


「この子は、ロゼに似てかわいいから、きっと優しくて素敵な子になるよ。もちろん、2人で大切に育てていこうね。」


2人は、生まれた赤ちゃんを見ながら微笑んだ。

その後、赤ちゃんと母親の負担になるということで、3人は部屋を退出して、その日は別れた。


後日、ジャッドとロゼは二人で話し合い、赤ちゃんの名前を決めた。

赤ちゃんの名前は「エリディカ」と名付けられたのであった。



それから約一か月後の、風の5の月の11日に、クレイグとマリーの赤ちゃんが生まれた。

ジャッドの予想通りに、クレイグはうろたえ、ジャッドとロゼになだめられていた。

そして、マリーと同じ髪色の、綺麗な金色の髪の女の子が生まれた。

その子には、「ユリアナ」という名前を付けられた。


生まれた月が近く、親同士も仲が良かった2人はよく一緒にいた。

2人で遊び、2人で教会で行われる学び舎に通い、2人で両親の仕事を学んだ。


同じ年に生まれた2人は姉妹のように育ち、村の人からも仲良し姉妹として認識されていた。



ある日、協会の学び舎では、物語の読み聞かせが行われていた。

今回は、昔話で、魔王と英雄様の話であった。

内容は、以下のようなものであった。


~昔々、あるところに、大きな魔力を持った魔王が、多くの人と国を襲っていました。

そんな中、英雄が先頭に立ち、魔王と戦い、疲れさせ、そのすきに光の魔力を持った聖女様が各地を回り、魔王の封印のための魔方陣を施し、ついに英雄が魔王を倒した時、聖女様が力を使い、魔王を封印した~


この話を聞いた子供たちは、気になったことを次々と先生に聞いた。


「先生!魔王ってどんな感じだったの?やっぱり怖い見た目なのかな?」

「魔王は、人の姿をしていたけど、人と違い大きな動物の耳と大きな角が生えていたそうよ。」


「先生。光の魔力って何?」

「光の魔力は、とっても珍しい力なの。聖女様以外で持っていた方はおられないわ。」


「先生!僕も英雄みたいに強くなれる?」

「ええ、きっと努力を惜しまなければ、英雄様のようになれますよ。」


「努力って、何をすればいいですか!」

「みんながいつもしているお勉強や、英雄様は騎士様だったから体を鍛え続ければいいと思いますよ。」


その日は、英雄様と聖女様についての話で学び舎は持ちきりだった。

もちろん、エリディカとユリアナの2人も例外ではなかった。


「ねえ、エリディカ、私も聖女様みたいになりたいな。光の魔力を持ってたらいいなぁ。」

「ユリアナが聖女様になるなら、私は英雄様になるね!2人で悪い奴をやっつけるの!!」

「ふふっ、そうだね。エリディカは強いから、きっと英雄様みたいになれるよ。私も聖女様みたいに誰かを助けられるように、頑張るね!」


エリディカは、怒るとなんでも殴って当たり散らす癖があり、両親にも何でもかんでも殴らないようしつけられ最近では殴ることも少なくなってきたが、今までの経験から他の子どもたちの誰よりも強い力を持っているのはエリディカであった。

そのため、ユリアナもエリディカの言ったことを肯定した。


かっこいい英雄譚に憧れ、学び舎に通う子供たちが必死に努力するようになってから数年後、エリディカとユリアナは8歳になった。

2人とも、物語を聞いたあの日から、人にやさしく、勉強も体を鍛えることも怠らず過ごしてきた。

もちろん、両親の仕事の手伝いもしっかり行っていたため、2人とも薬の作り方や、布の織り方や刺繡の仕方、染め方も覚えていた。

それほど、2人は英雄と聖女様の物語に感銘を受け、努力を続けてきたのだ。


そんな2人が、山の近くで遊んでいた、植物が青々と育ち、暑い日が続く火の7の月のある日。


2人は怪しい人たちを見かけた。

村の人ではないうえに、武器を持ち、大きな荷物を持って山の中へ入っていく4人組を見たのである。

その4人組を見て2人は、4人組に気づかれないように遠く離れたところから追いかけた。

それが危険なことだと分かっていながらも、なぜか見逃してはいけない気がしたのである。


しばらく山の中を歩くと、4人組は道具を置き、罠を仕掛け始めた。

その様子をじっと見ていると、4人組はその場を離れ隠れた。

すると、罠の場所へ一匹の狼が現れ、罠にかかってしまった。

しかし、その狼はただの狼ではなく魔獣で、風の魔法を操れる魔獣のため、簡単に罠を魔法で外してしまった。

それでもけがを負ってしまった狼を、4人組は隠れた場所から飛び出し、狼を攻撃し、倒してしまった。

その様子を見てしまった2人は、4人組が立ち去るまでその場を動けなかった。


4人組が立ち去ったことに気づいた2人は、慌てて村に戻り、村長にこのことを話した。

子どもの言うことだと、村長は無下にせず、きちんと話を聞き、聞き進めていくうちにどんどん村長の顔が険しくなっていった。

それもそのはず、山にいる狼は、魔獣で、山の守り神、主のような存在であったからである。


村長はその話を聞いた後、2人に感謝を告げ、家に送り、その際2人の両親に送った理由を話し、ショックを受けているだろうから気を使ってあげてくれと伝えた。


村長は村の大人を集め、2人から聞いた話を伝え、どうするか会議を行った。

その結果として、領主様に連絡し、対応策を立てていただくことになった。


数週間後、領主が騎士隊を引き連れて村へやってきた。

領主たちは、村にある別邸で過ごすこととなっていた。

なぜ、領地の端にある森のふもとの村に領主の別邸があるかというと、魔獣の様子を調査するためである。

魔獣は皮から骨まで魔力をまとっており、いい武器の素材になるため昔は乱獲されていた。

それを防ぐために、定期的に調査するため別邸が設けられていた。


そのため、まずは事情聴取から始まった。

エリディカとユリアナは両親とともに、領主の別邸へ呼ばれ、領主の前で見たものすべてを話した。

とても偉い方だということは、住んでいる別邸から子どもでも分かるため、とても緊張していたが、2人は最後まで見たことを話した。


その後、2人を下がらせ、後は大人だけで話し合いをした。

結果としては、森の中を調査して、現状を把握し、なぜ簡単に密猟が行えるようになっているかを調べることとなった。


待っている間、2人のもとに1人の男の子が現れた。

それは、領主の息子である、ハンス・セーデルマンであった。

ハンスは2人に挨拶をしに来たのであった。


「初めまして、僕はハンス・セーデルマン。先ほど2人が話した領主であるカイル・セーデルマンの子です。どうぞよろしく。」

「はっ、初めまして、エリディカ・ランドールです。」

「…初めまして、ユリアナ・アルサモラです。」


突然のことに、恐縮し、エリディカはどもり、ユリアナは緊張で声が小さくなってしまった。

ハンスはその様子を見て、苦笑いをし気楽にしてほしいと話した。


「聞いたところによると、僕たちは同い年らしいじゃないか。よかったら、屋敷の中を案内するよ!


そう言い、ハンスは歩いて扉の前へ行き、立ち止まり振り返った。

エリディカとユリアナは、断る理由もないため、ついていった。


広間や調理室、ハンスの部屋など、案内を受けていくうちに3人はどんどん仲良くなっていった。

案内が庭園へ差し掛かったとき、ユリアナが石畳の隙間に足を引っかけこけそうになってしまう。

それを見て、とっさにハンスが助けに入り、ユリアナは倒れずに済んだ。

エリディカも、急いで2人へ駆け寄った。


「2人とも大丈夫っ!?」

「私は大丈夫、ハンス様は?」

「ああ、僕は大丈夫だよ。」


それを聞いたエリディカは、安心し息をついた。

エリディカは、とっさに動いたハンスの様子を見て、ずいぶん運動神経がいいんだなと思った。


「ハンス様は、運動神経がいいんですね。鍛えていらっしゃるのですか?」

「ああ、僕は騎士になるのが夢なんだ。そのために日々鍛錬をしている。」

「騎士に!私も騎士になりたいんです。ユリアナは聖女様のようになりたいんですよ。」

「そうなのかい?」

「はい、私は聖女様のように誰にでも優しく手を差し伸べることのできる方になりたいのです。」

「なぜ、2人はそのような夢を持ったんだい?確かに、魔力を持つものは誰でも王都の学園へ通うことができるが。」


2人はその質問を聞き、顔を合わせて同時に答えた。


「「物語で読んだ英雄様と聖女様のようになりたいと思ったからです!」


それを聞いて、ハンスは驚き、そして微笑んだ。


「2人とも、僕と同じように夢を持って、そして目標としている人がいるんだね。だったら僕たちは同じ夢を持つ同志だ。これからは、敬語は無しで、毎日この屋敷に来て夢をかなえるために一緒に勉強をしようじゃないか。」

「えっ、そんな恐れ多いこと、無理です!」


ユリアナは、とっさにそう返事をした。

しかし、ハンスも断固として譲らなかった。


「僕自身がいいと言っているんだから、敬語は無しでいいんだよ。これからよろしく。」

「よろしく。ハンス」


エリディカは、これは譲る気はないなとあきらめ、ハンスの出した手を握った。

そして、それを見たユリアナも続いて握手をした。


「よろしくね、ハンス。」


そこへ、話し合いを終えた大人たちが来たため、そこで今日はお開きとなった。

エリディカとユリアナは、両親と家へと帰っていった。


ハンスの嬉しそうな様子を見て、領主のカイルとその妻のアルタはハンスに話しかけた。


「何かいいことがあったみたいだな、ハンス。」

「はい、お父様、お母様!2人同じ夢を持つ友人ができました!」

「それはよかったですね。それで、何か言いたいことがあるんでしょう?言ってごらんなさい。」


アルタはハンスが何か言いたそうにしているのを、雰囲気からつかみ取っていたため、言うように促した。


「あの、実は、夢をかなえるためにこれから毎日屋敷で勉強を一緒にしようと約束したのですが、毎日呼んでもよろしいでしょうか。」


普段、わがままを全く言わず大人しくいい子であるハンスの初めてのお願いに、両親は二つ返事で了承をした。


「もちろん、いいとも!それに、一緒に遊ぶと言い。同年代の友達と遊んだことは無いだろう?」

「遊ぶのもいいですが、しっかり勉強もするようにね、ハンス。」

「はいっ、ありがとうございます!お父様、お母様!!」


ハンスは、了承を得られたことで、明日が今までで一番楽しみな日となった。



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