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無口系女子達との騒々しい日常 レティセンス・ガールズ【21/8/4完結】  作者: 市み
一章 レティセンスガールズとチャラくないチャラ男
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1-3-2 兄貴と私

 ゲム子喋るじゃんすか。

 つまり喋れるの喋らなかったって事は。


 俺、嫌われてるのでは???

 ネガティブな惣藏さんが働きにきた。



『お疲れっすー、今日は休みっすよー』



 嘘を付いて追い返す。


 代わりにポジティブな惣藏君が7連勤中である。

 働く人はカッコいい!!


 たまには休ませてあげて!?








「……?」


「……?」



 自己を偽るために惚けていた俺を、二人が覗いていた。



「あ、何でも無い。たまに変になるんだ」


「??」


「???」


「何その反応!?」


「くすっ」


「笑いどころじゃないですけど……」



 二人は手を繋いで笑っている。

 もう大丈夫そうだな。



「何処もケガはしてないのか?」



 二人は互いを見合わせて、頷いた。

 鏡合わせの様な動きに驚く。



「こうして見てると姉妹みたいだな」



 出来の良い姉と、出来がアレな妹。

 どっちがどっちとは言うまい。



「……」



 ゲム子が二ヘラっと笑った。

 うん、アレだ……。



「そうだ本子」


「……?」


「今から部活巡り何だけど、どうする?」


「……!」



 本子は小さくガッツポーズをした。



「おぉ、やる気だ!」



 何故やる気があるのか不明だけど。









 不意に、窓の外を集団が駆けていった。

 全員が同じ、白い服を身に纏っている。


 怪しい……。



「あいつら、強いな」



 戦闘力を測れそうな雰囲気を出していく。



「……」


「……」


「ツッコミをお願いします」


「……」


「……」



 ペシッと俺の胸を叩く本子。

 優しい……。



「行くぞー! 敵はあの白装束だー!!」



 奮起して廊下を”駆け”出した。



「……?!」



 驚くゲム子。


 走るなと言ったのは俺だったな。

 しかし、ゲム子の二の舞にはなるまい。


 看板おろして待ってろよ運動部!!

 二人はタタタンッと付いてきた。


 ドンッ



「ちょっとー!?」


「すいませんすいませんすいません」



 めっちゃ謝った。

 廊下は走っちゃ駄目だぞ……。






 ◇






「野球部に殴り込みじゃー!?」


「あん?」



 強面の兄貴達が一斉にこっちを向いた。



「この子がそう言えって」


「?!!?!」



 ゲム子が泣きそうな顔をしている。



「?!!」



 ゲム子は代わりに本子を押し出した!



「……!?」



 本子はショックを受けていた!


 また裏切っておる……。

 俺のせいだけど。



「初めまして! 何で白い服を着てるんですか?」


「野球部だからだよ!」


「ツッコミがやって来た!?」


「担当じゃないからね!?」



 爽やかなイケメンがやってきた。



「あれ、君は同じクラスの」


「ゲム子だ」


「そう、ゲム……子?」



 爽イケは思考停止した。



「待ってよ、それ人の名前じゃないでしょう!?」


「失礼だぞ! 全国のゲム子さんに謝れ!」


「……?!」


「本人が一番困ってるじゃないか!?」


「俺もそう思う」


「思うんだ……」


「でもゲム子はゲム子だし、ね?」



 ゲム子と本子の二人に訊ねる。

 二人とも首を全力で横に振った。



「君面白いね?」


「惣藏詩位-ソウゾウシイ-だ」


「あははっ」


「人の名前を笑うなし!?」


「ぴったりだと思って」



 男子に笑われると二割増しでムカつく。



「くすくす」 「クスクス」



 女子に笑われても結局ムカつくんだけどね!



「僕は二年の鶴井」



 爽やかな感じで髪の毛を揺らす鶴井。



「興味無いね」


「急にクールぶってる」


「クール無いね」


「韻を踏んできた……」



 脊髄トークだった。



「クールだった時期が無いって事ですかね?」



 素に戻ると意味不明だった。



「僕に聞かれても……」


「君が言い出したんだよ?」


「押し付けられてる??」


「……(ペシッ)」



 見かねた本子が、俺の胸を叩いた。

 何て癒されるツッコミだろうか。









「それより兄貴達に挨拶させてくれ」


「兄貴って俺たちの事か?」



 強面の野球部員達に話しかける。



「おうよ。良い肉体してやがるぜ!」


「お! 分かるのか!」



 そう言って兄貴達は、マッスルポーズを取った。



「!?」 「?!」



 ガチっとしてて、ムチっとしてる。

 とても野球部員とは思えなかった。


 絶対野球で使わない筋肉育ててるよね!?

 だけど素敵……。



「俺の事はソウシって呼んでくれ兄弟」



 惣藏詩位を略してソウシだ。



「何だ良い奴じゃないか」



 笑って別のポーズを取る兄貴達。



「やっぱり筋肉がある人は違うな」


「ワシの大胸筋を見るか?」


「勿論。俺のハムストリングスも見てくれ!」



 俺達は筋肉談議に花を咲かせた。

 筋肉は最高だぜ!


 すっかり仲良くなって気を良くした俺は、

 暗くなるまで練習に付き合った。


 野球部の練習はハードだったが、

 一つ階段を上った手ごたえを感じた。



「……」


「……」



 ゲム子と本子は、いつの間にか帰っていた。






 ◇






「あぁー、疲れたぜぇ」



 既に暗くなった部室で、一人呟いた。


 うん、完全に部活を忘れてたな。

 あいつ等には悪い事をした。


 取り合えず、電気を付ける。



「……」


「ひぇっ!?」



 暗闇の中にルビ子が居た。



「……」



 ルビ子は立ち上がると、ペタペタと足音を立てて出て行った。

 一体何だったんだ……。



「さって、俺も帰るか」



 ……。

 誰も居なくなった部屋で、マジックペンを走らせる。


 今日の活動内容は、『野球部で野球!』

 ホワイトボードに刻み込まれた。






 ◇





「どうすれば、やれるんだろう……」



 妹がぶつぶつ呟いていた。



「誰にも気づかれずに……」



 妹がうろうろ歩いていた。



「武器は……」


「何の話なの!?」



 一家離散は近いかも知れない。



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