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無口系女子達との騒々しい日常 レティセンス・ガールズ【21/8/4完結】  作者: 市み
一章 レティセンスガールズとチャラくないチャラ男
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1-2-2 ぺよぺよ

「一戦目開始だぁあああ!? どうも、実況席の惣藏です」


「……」



 本子がジトっと見ていた。



「解説には、部長さんに来ていただいております」


「どうも、部長です」


「そういえば、お名前何でしたっけ?」


「符丁‐ふちょう‐です」



 ギャグみたいな名前だった。



「では、早速”ぺよぺよ”について教えて貰いましょう!」


「はい。ではまず、”魔術物語”の話から」


「あ、ルーツは結構です」



 ”ぺよぺよ”とはパズルゲームの一つだ。

 ×印の空間に迫り来る”ぺよ玉”を組み合わせて破壊していく。


 できる操作は”ぺよ玉”を回転させるだけ、という潔さだ。

 序盤は簡単だが、次第に速度が上がり、更には×印の空間自体が回転し始める。


 パズルゲームでありながら、”反射神経がモノを言う”ゲームだ。



「ぶっちゃけ音ゲーで良くない?」


『良くない!』



 部員全員が声を合わせた。

 今までにない一体感だ……。









「では、チャンピオンを紹介しましょう」



 部室の外に待機している選手を呼ぶ。



「男臭いゲー研に咲く一輪の花。二橋きゃのおおおおおんぅうう!?」


「きゃはー、宜しくねー!」



 狭い部室をなぞって入場してくる。


 二橋キャノンとは、eスポーツ用の名前らしい。

 小悪魔キャラで売り出す予定とか。



「男臭くは無いですよ?」



 気にしてたの!?









「それではチャレンジャーを紹介しましょう」



 再び部室の外に意識を向ける。



「待機部が誇るレティセンスガール! ゲームなら私に任せろと名乗りを上げた。燃え上がる乙女心、ゲェエエムゥウウウ子ォオオオオ!!!」


「アタシの時より熱が入ってないー!?」



 ゲム子がのそっと顔を出す。

 困り顔が見て取れる。


 トボトボと、鈍い足取りで入場してきた。

 フラフラと席に着いたゲム子。


 うん、頑張って欲しい。



「うーん。ゲム子さんは緊張してますね。本子さんはどう思われますか?」


「……?」


「ありがとうございました!」









「手加減は無しだよー!」


 ゲム子と二橋キャノンが向かい合う。

 ゲム子が頷いた。


「凄いライバルっぽい!」



 俺にもライバルが欲しかった。



「では、始めてもらいましょうか!」



 見せてもらおうか、ゲム子の実力をな!

 なお、ゲームの事はまるで分かっていない。



「始まりましたねー、静かな立ち上がりです」



 分からないけど、それっぽい事を言っておく。



「おっと、先制してるのはゲム子選手ですね」



 符丁さんがそう言う。



「どうなれば良いんですか?」


「勝敗を分けるのは、”ぺよ玉”を破壊する速さ何ですよ」



 うん、まるで分からん。



「このままだと、どうなりますか?」



 それっぽい事を聞いてみた。



「基本的な考え方で言えば、ノーミスならゲム子選手が勝ちます」


「なるほど。では精神力と集中力が問われるんですね」



 多分、そんな気がする。

 しかし、両方持ってなさそうだけど、ゲム子は大丈夫なのか?



「型にハメるのもセンスが必要です。”ぺよ玉”破壊速度に作用しますからね」


「なるほど、二橋選手は其処に期待ですね」



 などと言っていると、段々目で追えない速さになってくる。



「え、早くない?」


「まだ加速しますよ」


「うそぉ、見えてるのこれ?」


「人間の神秘ですね」



 そして加速は、頂点へと達する。



「すげぇ……」



 俺では全然分からない”ぺよ玉”を、次々と捌く二人。

 特にゲム子が、こんなにも上手いとは思わなかった。



「いけーそこだー、やれー!!」



 実況のポジションをかなぐり捨てて、ゲム子の応援をする。

 よく分からないが、熱くなっていた。



「おぉーー!?」



 そして、決着が着いた。











「ふぃー、何とか勝てたー」



 勝ったのは二橋キャノンだった。


 二人ともノーミスだったが、最終的なタイムでキャノンが勝っていた。

 細かい所で巻き返していた様だ。



「話が違くない!?」


「ノーミスでもワンチャンあるんですよ」



 何か納得できねぇ。



「むふー、ゲム子ちゃんヤバいねー!?」



 二橋が称賛を送る。



「……!」



 ゲム子も悔しそうではあるが、何処か満足げだった。



「素晴らしい戦いに拍手を」



 部長が気を利かせてくれる。

 パチパチパチと、手の花が咲いた。



「正直ゲーム舐めてたよ」


「分かってくれますか、惣藏君!」


「あぁ、部長!」


「入部届は用意してありますよ!」



 そう言ってゲム子と俺と、ついでに本子に用意された紙きれ。



「え、もしかして……?」



 最初から部員に勧誘する為の罠だったのか!?



「そだねー」



 軽い!?








 ◇








「きかーん!!」


「お、何処行ってたんだお前ら?」



 部室に帰ると、先生が椅子に腰かけていた。



「うぉ、先生。俺たちの部活に何か用っすか?」


「私が顧問なの忘れたのか?」



 そういやそうだった。



「だからって、そんなだらしない格好してから」



 背もたれに体重を預けて、体を開いている。

 おっさんみたいだった。



「疲れてるんだよ」


「美人が台無しですよー」


「顔が良いなら問題ないだろ」


「うひゃー、めっちゃ強い言葉吐いてる。肩でも揉みましょうか?」


「え、あ、うん」



 急に日和る先生。



「何すか急に。そういうの恥ずかしいタイプっすか」


「いやまぁ、じゃあお願いするか」


「はいはい」



 だらしない先生の肩を揉む。

 何か良い匂いがするなぁ。



「それで、何処行ってたんだよ?」


「待機部の活動っすよ」


「ほぉ、二人も連れて?」


「うっす。ってかマジでビックリしました。ゲム子凄い!」


「お、おう?」


「ゲー研で”ぺよぺよ”してたんすけど、本当にゲム子凄くて!」


「……おい」


「いやマジで、皆驚いてたし。正直ゲム子がここまで凄いとは!?」


「落ち着けって」


「だって、あんなの見させられたら!? ゲム子が!?」


「いいから、その本人が困惑してるぞ!?」


「へ?」



 ゲム子を見ると、本子に隠れて震えていた。

 何やら耳まで赤くなってる。



「どうしたゲム子? 風邪か?」


「お前、本気で言ってるのか?」


「はい?」


「うわぁ、マジの奴だ……」



 ゲム子はノソノソと影(本子)から出てくると、ホワイトボードに文字を書く。



「ば、馬鹿だと!?」



 バーカと書かれたホワイトボードを読み上げると。



「……フフッ」



 ゲム子は笑った。


 それはいつもとは違う、女の子らしい笑みで。

 端で見ていたケー子や本子も驚いていた。



「ははっ」



 だからか、気が付けば俺も笑っていた。

 きっとこういう日々を重ねて行けば、青春っぽく振り返られる。


 生涯の記憶になるんじゃないかって。

 意味になるんじゃないかって思えたんだ。



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