1-6-2 以心伝心
「取り合えず、これで進めようか」
ポスターの草案が完成した。
「……」
「……」
「……!」
「……」
反応は薄いけど異論もない様だ。
「ちょっとコピー用紙貰ってくる」
「……?」
本子が『一緒に行きましょうか?』って感じの顔をしていた。
以心伝心って感じだな。
俺の想像だけどね!
「すぐ終わると思うから一人で行ってくる」
「……!」
ゲム子が嬉しそうに手を振っていた。
「そんなにゲームがしたいのか!?」
「……ニチヤァ」
わざとっぽく笑うゲム子、何か懐かしい。
という訳で教員室へと向かった。
◇
「邪魔しまーす」
「あん?」
強そうな先生がお出迎えだ。
「あの強面先生」
「誰が強面だ!?」
「え?」
「素で驚くんじゃない!」
「すみません。怖かったので」
「強面は怖いのこわじゃないぞ!?」
「つまり怖ろしい面だと?」
「誰の顔が怖ろしいって?」
「あの人です!」
待機部顧問を指さす。
「ぶふっ!?」
待機部顧問は、飲んでいた茶を噴き出した。
「こらぁ、惣藏!?!」
慌てて駆け寄って来る。
「あぁ、すみません。怖くてつい!?」
「お前は、ったく。すいません、仕掛先生」
「葉月先生。はは、はねっかえりは部活で慣れてますから」
強面先生は、急にへらっとした顔になった。
「そう言えば頭は平気か?」
「頭がおかしい人じゃないし!?」
「そうじゃねーよ」
「あ、はい。……ちょっと血は出てますが平気です」
「焦ったぞ、本当に」
葉月先生も心配してくれていた様だった。
初めて教師らしい所を見た気がする……。
「昨日はありがとうございました、仕掛先生」
「お安い御用ですよ」
「何の話ですか?」
「仕掛先生がお前を送り帰してくれたんだよ」
「そうだったんですね、ありがとうございます」
「あぁ、気にするな。教師として当たり前だ、あっはっはっはっ」
へら顔の強面先生は気恥ずかしそうに笑った。
「あれ、もしかして狙ってます?」
強面先生はバッとこちらに向き直ると、俺の肩に手を置いた。
無言の圧力を感じる!?
「ん? 何を言ってんだ惣藏?」
葉月先生が訊ねてくる。
「いやぁ、俺の葉月に手を出そうとしてるのかなって」
『ぶふぉっ!?』
教員室中でお茶を噴き出す音がした。
「ななな、急に何を!?」
「葉月先生、今更何を隠す必要があるんですか!?」
「や、止めろって!? 洒落にならんから!!!?」
「あの、葉月先生……?」
頭を丸めた新キャラが現れる。
「きょ、教頭先生!? 違うんですよ。この子、虚言癖があって!?」
酷い言われようだった。
「そんな、何度も揉んであげたのに……」
「……揉む?」
肩の話である。
「あぁー、馬鹿馬鹿馬鹿!?」
「葉月先生……」
「ち、違うんです!? こ、このクソガキャァ!?」
葉月先生を狂気が襲う。
「冗談ですよ」
「嘘を付くなぁ!?」
「え?」
「え??」
教員室に氷期が訪れた。
それからは、教員たちに取り囲まれて説教をされた。
傍から見たそれは、異様な光景だった事だろう。
きっと笑われてしまうに違いない!?
ふと、入り口から視線を感じる。
「……?」
本子がこっそり見ていた。
ヤダ、見ないで!?
「……!」
本子は頷くと帰っていった。
心の叫びが伝わったようだ。
まさに以心伝心!!
半時間が過ぎた。
「はぁ、じゃあもう戻って良いよ」
葉月先生が解放してくれる。
「あ、はーい。お疲れ様です!」
「お前のせいで疲れてんだよ!?」
「つまり俺が特別って事ですね」
「面倒くさいって意味ではな」
「まぁ、キャラ何ですけどね」
「作ってたのかよ!?」
「じゃあ、お疲れっす」
「こいつまるで反省してねぇな……」
教員室から出る。
「ん?」
教員室に入る。
「何だよ?」
「あの、コピー用紙貰いに来たんでした」
「あぁ? それだけであの騒ぎか」
「こんなの学生の間だけですよ」
「妙に悟ってんな!?」
「あんまり褒めないで下さいよ、照れます」
「褒めてねぇよ! まぁ分かってるなら良いけど、ほら」
コピー用紙を受け取った。
「ありがとう、葉月ちゃん」
「!?」
「ん? どうしたの葉月ちゃん?」
「せ、先生って呼べぇええ!?」
頬っぺたを引っ張られる。
「い、痛いですよ!? こっちは怪我人ですよ!?」
「恥ずかしいんだよぉおおお!?」
謎の地雷を踏んだようだった。
それからもうちょっとだけ、葉月先生と遊んでから部室に戻った。
◇
「ただいまー」
「くすくす」 「クスクス」
「既に笑われてる!?」
密告者が居るようだった。
ケー子とルビ子は、先に帰宅したらしい。
「……」
「……」
本子とゲム子が、本とゲーム機を盾に俺を覗いてくる。
「待っててくれてありがとうな」
素直に感謝を述べる。
「あ、でも用事がある時は帰って良いからな」
気を使い過ぎても、健全な青春ではない。
皆が、それぞれの思いを大切にしなければいけないのだ。
「今日は遅くなったし、帰るか」
「……」
「……」
二人は頷いて帰宅する準備を始めた。
途中まで一緒に帰ったが、二人は一言も喋る事は無かった。
其処は気を使って欲しい。
◇
「にいやん、この服どう?」
妹がひらひらの付いた可愛らしい服を着ていた。
「何それ、可愛いじゃん」
「でしょでしょ?」
「急にどうしたんだ、まさかデートか?」
「うん。……勝負服、だよ」
何故か低い声で拳を握る妹。
「素直に応援させて!?」
妹に彼氏ができそう……だった?
肩の話です!!




