偽性ヒーロー症候群
気晴らしで書いたはずなのに微妙にシンドイのになった。
ボクはただ、君のヒーローに、救いになりたかったんだ。
昔、まだ皆小さかった頃。他の同じ幼稚園の子たちにイジメられていた君と出会った。
頭を抱えて、縮こまって、それでも、目だけは気丈だった君を純粋に救いたい。守りたいと思った。当時のボクは画面の向こうのヒーローに憧れていて、それをリスペクトする意味と、子ども特有の怖いものなしな蛮勇で強引に介入した。
イジメの理由は、隔世遺伝だという君のアメジストのような美しい瞳が、普通は滅多に見ることのない存在だったことから。
でも、その時のボクはそれが綺麗な宝石みたいとしか感想がなくて、イジメっ子たちへの理解なんてこれっぽっちも無かった。まあ、子どもだしね。
その頃には、運動好きな母さんに付き合って体を効率的に動かしてたボクは普通よりは強くて、怪我を負いながらも彼等を倒すことができた。…なんて、言えたら良かったんだけど、実際、君を守ることしか頭になくて、袋叩きにあって、怪我だらけ。彼等は飽きてどっかに行っちゃっただけ。
それでも、初めて、自分の力で、ヒーローのように人を守れたことに感動していたのを覚えてるよ。そのあと、怪我だらけのボクを見て、余計泣きじゃくる君を泣き止ませる方がずっと大変だったけど。
そんなことがあってからは、ずっと一緒にいたね。いつも君がボクの後ろをトコトコ着いてきて、まるでヒーローのように救った相手が仲間になったんだって変な感動を覚えていたんだよ、ボク。
それに、君のボクを見つめてくる綺麗な眼差しが好きだったんだ。嬉しかったんだ。だから、その瞳で見てもらうために、ボクは頑張ったんだ。
君を守る時間…まあ実際は一緒に遊ぶ時間だったけど…を確保しながら、それ以外の時間で父さんに剣道と格闘技を習っていたんだ。父さん曰く、格闘技はボクが習いたいって言ったから、それ以降、必死に通信教育で習って教えてたんだって笑って言ってたけど。あの時はホントに嬉しかったなぁ。
そうして、強くなりながら君という仲間を守って。小学生、中学生と成長して。頑張って勉強して頭の良い君と同じ高校に入学して。その過程で、気づけばトウジやユウタ、メイカ。君も仲の良かった友達が、仲間が集まって。毎日が楽しかったなぁ。皆で一緒に行ったピクニックとか、元旦での馬鹿騒ぎとか、今でもいっぱい思い出が詰まった日々だったよ。
…でも、ボクはその時気づけなかった。君がアイツ…いや、タチバナ君と少しずつ仲良くなってたなんて。
ボクは今でも悔やんでいるんだよ。あの時、どうにかしてそれを止めることができなかったのかなって。
……何故かって?そんなの…そんなの!今を見ればわかるでしょ!?
アイツに…アイツのせいで!!トウジも!メイカも!シんだんだ!アイツにコロサレタンダ!
ボクは今だって涙が止まらないんだ…。心で泣いているんだよ。ユウタは必死に慰めてくれたから、少し、治まってるだけ。
アイツがあんなことしなければ…。君が……ちゃんが裏切らなければ…こんなことにはなっていないんだよ…?
…だから…だからヒーローとして、ボクは、君たちを正す!そして、救う!
ユウタがここまで来る道を作ってくれて、この世界でできた仲間たちと一緒に時間を稼いでくれているんだ。負けるわけにはいかない。負けられないんだよ。
でも、やっぱり思うんだ。まだ、きっと間に合う。ユウタや仲間たちもボクが説得する。
だから、戻って?きっと、まだ間に合うから。
だって、仲間なのに。ボクは君を守るって…君のヒーローであり続けるって。そう、君に誓ったのに。
この剣を、君に向けるなんて…。ダメだ…だめだ駄目だダメダ!
ねぇ、お願いだよ。戻って来てよぉ…!
……そっ…か。分かった。分からないけど、分かりたくないけど、分かったよ。飲み込むよ。
ボクはヒーローだ。皆を、仲間を、守るんだ!
さあ、戦おう!ボクは、君を、君たちを!悪の手から救ってみせる!
ケホッ…ガフッ…負k…た…?
い、や、まだ…負けてない…!
ここで…負けたら、仲間の、ユウタの作ってくれたチャンスを…踏みにじることになるから!
それは、それだけは!ボクにはできない!ヒーローのボクには!
第2ラウンドだよ!今度こそ、ボクの全力!すべてを振り絞って勝ちをもぎ取ってみせる!
諦めないことが、ヒーローのチカラだ!
◇◇◇◇◇
…戦いは終わった。普人族からは魔王城と呼ばれる大きな城の、広い謁見の間での最後の決戦は魔王タチバナ・ソウイチと、その唯一の同盟者であるニジョウ・ルミカが勝利した。
魔王を賢者サカモト・ユウタと仲間たちが足止めして、その間に普人族の召喚勇者であるフジノ・レイがルミカを説得、魔王を挟み撃ちにする作戦だった。
…説得は失敗し、魔王が足止めを一人一人仕留め、逆に挟み撃ちとなった。
しかし、勇者は粘った。あまりにも長い戦いだった。
魔法が直撃しても、背中を一気に斬り裂かれて致命傷となっても、体力も魔力も尽きて倒れても、勇者レイは再び立ち上がった。
何が勇者にそうさせるのか。勇者は常に、余裕のある笑みだけを浮かべて戦っていた。
だが、何事にも終わりは来るもので、剣を持ったまま利き腕を失い、魔法を編み出す意志のチカラもまた、真に尽きてしまったのか。
勇者は倒れた。前のめりだった。最後まで諦めず、食らいつく意志が感じられた。
◇◇◇◇◇
まだ…諦めてないのに…体が言うことを聞いてくれないや…。
はぁ…勇者の最終奥義なんてものまで使ったのに、負けちゃうんだもんなぁ。ルミカちゃん、それにタチバナ君。強すぎるよ…アハハ…。
…タチバナ君が来たってことは、ユウタや皆は…そっか。結局ボクは、何も守れなかったんだね…。
ルミカちゃん…回復魔法、さらに上手くなったね。でも、ダメなんだ。これは最後の、ボクの魂すらも消費できる変換魔法の代償。ヒーローは自己犠牲できてこそ…だからね。
…あ、もう限界なのかな?凄いや、光に溶けていく体験なんて滅多にできないね!
……ねぇ、お願い。ボクは、ただ君の笑顔を、守りたかったんだ…。だから、笑って、ほしい…な。
「ボクは…君の…君だけのヒーローに…」
◇◇◇◇◇
ただ一人の少女のヒーローになりたいという願いのもと、ヒーローという仮面を固着した。
しかし、その少女が願ったのはヒーローという重荷から解放されて、イジメっ子たちから救ってくれたあの時、怪我だらけなのに自分に手をさしのながら浮かべていた暖かい笑顔のように、心から笑ってほしいというものだった。
ただの殴り書きだな!(確信)
でも、もっとちゃんとしたのとか、アフターとか過程を書きたいような、時間がないような。
あ、拙作をお読みいただきありがとうございました!
感想や評価は気が向きましたらで~。