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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第四章 確かに僕は
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募金宜しくお願いします

 駅に着いた僕達は早速美紗ねえに募金箱を渡される。



「あのさ……」


 僕は小声で美紗ねえを呼びかける。



「どうしたの? 集ちゃん」


 笑顔で聞いてくる美紗ねえ。うん、どう考えても分かってて言ってるよねっ!?



「僕にこれ持たせてどうするの?」



「どうするって決まってるじゃないっ!!」 


 そう言って僕から募金箱をひったくる様にして取ると



「どうかっ遠い国で困っている人達の為に1円でも良いので募金宜しくお願いしますっっ!!」と大きな声で美紗ねえが呼びかける。


 僕はそんな姿を見て圧倒される。普段こんな大きな声を出して懸命にやっている姿を僕は見たことが無かったからだ。


 気付くと道を通り縋ろうとした何人かが立ち止まり募金箱にお金を入れていっている。……えっ、諭吉を入れてる奴がいるぞっ、嘘だろっ!?


 僕が呆気に取られていると



「見たかしら? ちゃんと誠意を込めてやればちゃんと伝わるのよ……。こんな風にねっ」


 それはあれか美紗ねえ? 僕にもそんな風に大声を張り上げろと言ってるんだな……この僕にっ!! 僕は美紗ねえから貯金箱を受け取り息を目一杯吸ってから



「募金宜しくお願いしまーーすっ!!」


 僕は叫んだ。力の限りに……。でも誰も僕の言葉に立ち止まる人はいなかった。……ふっ、これが現実って奴さっ!?


「今のはただ叫んでるだけだから……。だから誰も止まらなかったのよ」


「どういう事ですか? 黒崎先生」


 そう問いかけた山岸さんの言葉に天道がチッチッチッと舌打ちをしてから



「見えるっ……見えるぞっ!! 俺には全てが見えるっ!!」



 ……天道、お前そんなに馬鹿な人間だったか?



「それは、心を込めるって事よ」



 美紗ねえが朗らかな笑みを浮かべる。


「集ちゃん……。叫んだ時何を考えてた?」



 何って……? そんなの何も考えてる訳ないじゃないか……。



「多分何も考えなかったわよね……。さっき私はね叫んだ時、紛争で困っている人達の顔を思い浮かべたわ」


 僕達はその言葉にお互い顔を見合わせる。そこまで考えてやってたのか……美紗ねえ。



「この世界はね……誰かが幸せにしていれば、他の所で誰かが不幸せになるように出来てるの」


 やっぱり兄弟だな。僕と同じような事言ってる……。というかボランティアなんかに進んで参加するようになったのは、()()()()だったりするのかな? なんて考え過ぎか……。



「このまま一つに固まっても仕方ないから3手に分かれてやって貰うわ……。グーロで決めなさい」


 決め方小学生過ぎないっ!? まぁそんな事を気にしてもしょうがないか。僕達はグーロをした。……その結果。



「宜しく……。山岸さん」


「う、うん……宜しくねっ集君っ」



 どうしたんだろう? 昨日から山岸さんの様子がおかしい気がする。僕なにかしたかな?


 山岸さんと僕は、駅中のとある服屋の前で募金活動を行う。



「募金宜しくお願いします」


 けれどもどんなに呼びかけても誰も募金をしてくれない。ふとさっきの美紗ねえの言った言葉が脳裏を過る。



『今のはただ叫んでるだけだから……。だから誰も止まらなかったのよ』


 確か困ってる人達の顔を思い浮かべてだっけ? ……ダメだ、全く分からない。そう思っていたら……。



「今、日本以外の場所で泣き叫んでる子供や大人がいますっ。私達はそんな人達の為に少しでも力になりたいんですっ。だから、ほんの少しでも良いので、募金をっ宜しくお願いしますっ!!」


 すると何人かが立ち止まり山岸さんの元にお金を手にして群がってくる。



「凄いな……山岸さん」


 僕はまだ良く分かってないのに。もう募金のコツを理解したのか……。


「そんな事ないよ……それ、に」


 そう言って山岸さんが僕の顔を直視した後、顔を背ける。

 ……えぇっ!? 僕山岸さんになにかしたっ!?


 結局その日……。僕は1円も募金してもらえず、しかも終始山岸さんが僕の事を避け続けていたのであった――。

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