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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第三章 結局僕は
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困った弟ね

「まだ初日の午後だっていうのにもう疲れたの?」


 美紗ねえが苦笑しながら僕に言う。

 今いるのはバスの中で僕と美紗ねえは運転手の真後ろの席に座っていた。窓からは日差しが差し込んで少し眩しく感じる。景色を見ると民家が見え入り口の至る所にシーサーが置かれていた。確か、守り神なんだっけ?


「…………」


 僕は美紗ねえの問いかけに無言でいる。美紗ねえに迷惑を掛けたくないというのもあるけど、昔から僕は美紗ねえに弱音は吐かないできた。家族だから弱音を吐いて良いって美紗ねえは言うけど僕は忘れてない。


――あの時僕が弱音を吐いたら美紗ねえは泣いて塞ぎ込んでしまったことを。


 無言でいる僕に盛大な溜息を吐く美紗ねえ。家族の前だからって少しは遠慮してほしい。優しくして欲しいわけじゃないけど。


「まったく困った弟ね……。少しは周りに頼るって事を覚えた方が良いわよ」


 僕はその言葉に激しい嫌悪感を抱く。


「頼れる人間が周りに居ないだけだよ」


 僕はそっぽを向いて答えると、また溜息を吐く美紗ねえ。


「集ちゃん……。いつまでもそうやって、僕孤独なロンリーウルフ……イカすだろ? みたいな感じを気取ってたら誰も相手してくれなくなっちゃうわよ?」


「ちょっと待てっ」


 僕は美紗ねえの僕の真似なのか分からないその発言に異議を唱える。というか僕そんな風に見られてるの? ちょっと傷つくんだけど?


「まず二人っきりならともかく学校で僕の事を集ちゃんって呼ぶのやめろ」


 僕と美紗ねえが姉弟である事は教師しか知らない事で周りの生徒には一切教えてない……。いや、教える相手がいない。


「え〜。私は別に気にしないんだけどな……」


「僕が気にするんだよ……。まったく……。僕を前にすると甘えた口調になるのいい加減直しなよ」


 まぁそういう風になっちゃったのは僕のせいだって事一番理解してるけど。


「そうよね。流石に三十路に近い女が甘えた口調で絡んでくるのがウザいって事ね」


「違うよっ!! そのブラコンなのやめろって言ってるのっ!! 普段は仕事が出来る女って感じなのになんで僕の前だと口調とか態度そんなに変わんだよっ!!」


 美紗ねえはその言葉を聞いて表情を曇らせるかと思ったら逆に笑顔で


「だって、集ちゃんは私の弟だもの……。大事にして何が悪いの?」と言ってくる。その弟って部分を恋人に変換して優にいに言ってやれよ。間違いなく優にい泣いて喜ぶぞ。


「へえ〜」 「二人とも仲良いんだな」 


 上を向くと山岸さんと万丈が僕の座っている座席の背もたれに体重をかけ僕の事を見下ろしている。


 そうか、教師以外で知ってる人いたな……。しかも二人も。


「美紗っち……。相当なブラコンだな」


 万丈が僕に抱きついてくる美紗ねえを引き攣った顔で言う。……そうだろうそうだろう。これを毎日受けてる僕からしたら毎日が大変だ。


「ほら万丈から見てもそうなんだから、そろそろ僕から離れろよ」


「でも私は良いと思うけどな」


 山岸さんが明るい声音で言う。僕は視線を美紗ねえから逸らして上に向けると微笑ましそうに笑っている山岸さん。


「これの何処が良いの?」


「仲の良い姉弟……家族が居るっていいと思うの」


 山岸さんの言葉に僕と美紗ねえは静かになる。家族……か。どうなんだろ? 家族と呼ぶには少し……いや、かなり変わった形なんだよな。美紗ねえは山岸さんの言葉を聞いたあと暫し黙って僕を眺めた後


「大好きよ〜っ、集ちゃんっ!!」と言って僕をきつく抱きしめる。


「バ、バカッ……離れろってっ!!」


 僕は美紗ねえを両手で押し返す。

 

「もうっ、集ちゃんの意地悪」と言ってプイッとそっぽを向く美紗ねえ。僕はそっぽを向いた美紗ねえを放っといて窓から見える空を眺めながら美紗ねえの事を考える。


 ――なぁ美紗ねえ、3()()()()()()した僕達だけど、家族って胸を張って人に言えるのかな? 美紗ねえは再会する以前と変わらずにいてくれるけど僕は……。


 キラキラと眩しくて暖かい日差しが差し込むガラスから見える民家を眺めながら僕は美紗ねえの事を考えた後、目を瞑って気付いた時には眠りに落ちていった……。

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