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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第三章 結局僕は
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逃げたりなんかしない

 ついに沖縄に着いた。ここまで本当に長かった……。それはもう僕のメンタルが三枚おろしにされる程に。本当美紗ねえ……。集団に慣れさせる為とはいえ、いきなりハードル高すぎだってっ!?


 今が13時20分……。嘘だろ? もう体感的に一日もう終えた感じがするのに。俺はまだこの集団で過ごさなきゃならないのかよ……。発狂しそうだっ!!


「……にしても」

 僕は上へと視線を向ける。沖縄は10月だというのにまだ暖かく青空の元にいる太陽は僕達を嘲笑うかのように強い日差しを発してくる。沖縄はまだまだ夏真っ盛りか……。長袖で来たのを凄く後悔する。


「敦超暑いんだけど〜」

 今僕が思っている事を本城が天道に伝える。軍服のような色のシャツのボタンを一つずつ外していく本城さん……。その仕草は健全な高校男子としては見てて正直その仕草にドギマギする。要するに僕の目の前でそんな事をしないでほしい。


「確かに暑いよね〜」

 由美子が本城の言葉に頷く。確かにこの日差しはヤバい……。日焼けはしないと思うけど、暑すぎて気持ち悪くなるかも。軍服のような色のシャツのボタンを外し終えると着ていたそのシャツを脱いだ。その下には黒い半袖のカットソーシャツを着ていた……。おいおい、沖縄満喫する気満々じゃん。


 彼女の着ている黒のシャツに彼女の金髪に染めた髪はよく映えるな……と、感心して見ていたら本城と目がカチリと合う。


「うわぁ……キモ男と目が合っちゃった〜」

 その場にいる全員に笑って大声で言う本城。もうキモ男という渾名が本城だけじゃなく、他の連中にまで定着してる……。まぁいいけどねっ。つ、強がってなんかないんだからっ。って誰に言ってんだろう、凄い虚しい。


「今更だけどなんでキモ男なの?」

 僕は本城に一応理由を聞いてみる。


「だっていつも幸薄そうな顔してて、何考えてるか分かんないんだもん。だからキモ男」

 満面の笑顔で言ってくる本城。なるほど。彼女の中では

 分からない=キモいと言うことみたいだ。


 すごい理不尽に聞こえるけど言いたいことは少なからず理解できる。人間は自分とは決定的に違う人間を激しく嫌う生き物だ。分かりやすく言うとヒーロー物のアニメで正統派な真っ直ぐな主人公を好きになる人が殆ど……。でも僕は穿った見方をしているダークヒーローないしは、ヒール役の主人公を好む。


 もうこの時点で明確に違いが生まれる。そしてその考えを聞いても理解できない場合大抵の人間は激しく嫌う。自分とは考え方が違う人間を恐れるのだ。


 本城の言うキモいとは恐らくそういう事なんだと思う。別にそれを本城と話し合って理解してもらおうという気はサラサラないけど。

 


「よし、1年2組の皆ーっ。このバスに乗って」

 クラスの担任の美紗ねえが声を張り上げて言う。また乗るのか……。これ以上なんか言われるようなら僕心が死ぬ……。


「黒崎……。僕と隣になるかい?」

 僕はその申し出に喜び頷こうとした瞬間、急に背中に悪寒が走る。後ろを振り向くと本城がニコニコと笑っていた。

 ……そうか。ここで頷いたら後々本城にどういうつもり? と問い詰められる。僕は絶望の中に一筋の光が差し込んだというのに拒む事にする……ちくしょうっ。


「大丈夫……。天道も好きな奴と一緒にいたいだろ?」

 僕は笑う。なんともないよって天道に、そして何より自分に言い聞かせる為に。天道は僕の顔を覗き込む。その天道の顔は真剣そのもので無理はするなと語りかけてるようだった。


「そうよねえ、キモ男はわたしと隣がいいんだもんねえ」

 満面の笑みで言う本城。彼女の満面の笑みを見るだけで体が震える……。ヤバい、また馬鹿にされるのか。嫌だな……と。


「黒崎……顔色が悪いが大丈夫か?」

 近くを通りかかった美紗ねえが僕を見て声をかけてくる。……出来れば、美紗ねえに心配かけさせたくなかったんだけどな。


「だ、大丈夫ですよ」

 僕はなんとか笑顔を作って返事をする……。だけど美紗ねえは僕の顔を暫く眺めた後


「黒崎は私の隣に座るように」

 とそれだけ口にしてバスの乗降口に向かって歩き出す。


「ちっ、バラしたりしたら許さないからねっ」

 捨て台詞を口にして本城もバスの乗降口に向かって歩き出し、他の取り巻き達も本城の後を着いていく。が天道だけは付いて行かずその場に立ち尽くし、僕の顔を何も言わずにジッと見ていた。


「何してるんだ? 早く行けよ」

 僕は顔を俯かせながら言う……。出来れば誰とも話したくなかった。なのに、天道はバスに向かおうとしない。


「ずっとお前はそうやって耐えてきたのか?」

 口惜しそうな顔で切ない声で言う天道。一体今コイツの中でどんな思いが渦巻いているんだろう? 僕は乗降口に向かって歩き出す。天道の横を通り過ぎると同時に僕は口を開く。


「違う……。普段だったら僕は逃げてたよ。耐えることなんて絶対にしない」


「ならなんで? そんな辛い思いまでして」

 僕はその言葉に足を止める。確かに普通なら逃げても良いはずだ。

こんな嫌な気持ちになるくらいなら投げ出したほうが良い……でも。


「そろそろ僕も変わらなきゃなって。だから逃げないで立ち向かおうって思ったんだ……。まぁあそこまで罵倒されたのは初めてで辛いけど、逃げたりなんかしない……じゃないと、変われないからな」

 そう、僕は夢の中で幼かった僕に言ったんだ。


『このままじゃダメなんだよ……変わらなきゃっ!!』

 そう……、僕は変わる為にも本城さんから逃げちゃいけないんだっ!!


 そう思いながら僕はバスへと向かうのだった。

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