僕に関わってくる変な人
結局あれから僕は美紗ねえに家に帰るように言われ昨日は学校を早退した。ボッチで居場所がない身としてはそれは凄く有り難いことである。
別に家に帰っても両親共に海外出張中なのと義理の妹は4歳なので両親が一緒に連れて行ったので実質一人。誰にも気を遣わない時間が増えてくれるのは嬉しい限りだ……そして、今日僕は自分の教室の入り口前で立ち尽くす。
いや、落ち着け黒崎集。何を緊張しているんだ……。
別にいつもと変わらない――そうだろ。絡まれたとしても無視を決め込んどけば、それで済むはず。
『よしっ』
僕は覚悟を決めて教室の引戸を開け放つ……すると騒がしかった教室にしんと静まり返る。そして皆僕の事を迷惑そうに見てくる。
――クッ、皆が僕を見ているっ……今まで誰とも関わらずに過ごしてきた僕のこれまでの日々が無駄になってしまった。
僕はそんな事を思いながら一番後ろの窓側の席に移動する。
「……おはよっ」
席についた瞬間に僕の目の前にこのクラス……いや、学校1可愛いと話題の山岸奏がゲーム画面のテロップだったら語尾に♪が付くんだろうなと思う可愛らしい抑揚の挨拶をこちらに振ってきた。
僕は暫しその光景にフリーズする。
目の前には、綺麗な黒髪を背中までストレートに下ろされそして顔は――モデルでもやっているんじゃないかと思うくらいに美しい顔立ちをしていて高身長でスタイルも良い。胸がまな板のようだ――が、まぁそれはそれで有りだな。
しかし、なんで今まで話しかけるような事もなかった相手に挨拶してるんだろこの人――はっ、もしや変な人なのだろうかっ!?
とにかく無視が一番だと思い僕はカバンの中から文庫本を取り出しページを開いて読み始める……ボッチにとっては必需アイテム。ここテストで出るからボッチの皆よーく復習しとくようにっ!?
「あれ、聞こえなかったのかな?」
などと言って困り顔で、コテンと顔を首を斜め45度に傾げる。
僕は本を読みながら、何だっ!? この小動物のように愛らしい生き物はっ!?……と心の中で驚愕する。
なるほど……確かに男子から人気な訳だ。彼女……山岸奏は、容姿が優れその上成績優秀な事でも知られている。
それだけでも人気になる要素としては十分だが、一番支持される理由は誰に対しても分け隔てなく接してくれるから……という事らしい。
そりゃ、こんな可愛い子から声を掛けられた日には気分が有頂天に達する男子が続出する事だろう。
だが僕は違うっ!! 今まで空気のように過ごしてきた顔が中の下な僕に話しかけてくるという事は何か裏があるんだろう……ましてや、昨日の今日だし。
僕が無視を決め込んでいると周りからヒソヒソとざわめき出す。その中で聞こえた内容は
「アイツ……山岸さんに声を掛けられただけでも光栄な事なのに。無視しやがってっ!?」という恨み節の事だった。
いや、知らないし――まぁトキめかないと言ったら嘘になる。
……こんな美少女に声を掛けられたんだからなっ!!
すると彼女は、少し寂しそうな顔をした後女子たちが固まっているグループの中へと入って行く様子を僕は眺める――おいおい、なんでそんな寂しそうな顔すんだよ……僕が悪い事したみたいじゃないか。
それにしても何だったんだ、今のは。なんの接点もない僕にいきなり挨拶してくるなんて――もしや、モテ期到来かっ!?……なんて、昨日クラスの全員に嫌われ者認定された僕に到来するわけ無いだろ。
ならどうして、話しかけてきたんだろ……
僕は考えるけど、全く以て分からない。そもそも人と関わらずにいた僕が他人の考える事を理解できるわけがない。
僕は楽しそうに女子たちと話す山岸さんから視線を逸らし、広げたままの文庫本に集中する。
考えてもしょうがないと僕は考えることを放棄することにした。
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