やる事は変わらない
天道達からの仲直りしようと言われてから一週間……。グループで内の僕の扱いは悪くなっていった。
まず話し合いの場では僕の意見は聞かれるどころか求められる事もなくなった。
次にグループ内で各自用意する物などの連絡が僕の所には一切回ってこない。だから翌日の日皆が持ってきているか天道が確認した時
「あれ……黒崎、お前は持ってきてないのか?」
と、目を白黒させながら聞いてくる。僕はそんな天道の様子を見て確信する。これを仕組んだのは天道ではなく……
僕は天道の近くで他の女子と楽しく話している本城に目を向ける。
すると彼女も僕を見て見てるこっちが不快になるくらいいやらしい笑みをこちらに向けていた。
そうか……。そりゃそうだよな。僕には自覚はないがきっと彼女のプライド……自尊心ってモノを傷付けたんだ。
人間は元来自尊心の塊だと僕は思う。 それがなければこの世に喧嘩なんてモノは存在しないんじゃないかと常々思っている。
きっとこの教室内で空気のようだった僕がこのクラスの人気者で校内1可愛いと言われている山岸奏とこの学校で知らない人はいないと言われるほど悪名が通っている銀狼こと……万丈皐月。
この二人が僕の所にずっといるのが気に食わないんだろう。人間は面倒なもので自分のステータスというものを気にする人種が存在する。
ではステータスとはなんだろう? ステータスには社会的地位や身分の象徴を表すと言う意味とゲームなどでのレベル、攻撃力などといった状態を表すステータスという2つの意味がある。
本城の場合は1つ目にカテゴリされる。
山岸さんが自分の友達だという事で周りに私は校内1の美少女と言われている山岸奏の親友のポジションを確立出来ると共に私は凄いでしょ……と、優越感に浸ると同時に周りにアピールも出来る。
それなのに山岸さんは僕の所に来た……本城の元を離れて。せっかく、校内1の美少女の親友という地位を築き上げたというのに……僕のような底辺の人間にそのポジションを奪われた。
本城からすれば非常にむしの居所が悪い話だと思う……。全然知らない自分より地位の低い人間に自身の学校での身分を上げる為の存在を奪われたのだから。
あわよくば天道が仲直りを申し出たあの時僕と仲直りして山岸さんと近付けられればまた自分の地位が上がるとそう思っていたんじゃないか?
それだけじゃない……。今僕の近くにいるのは山岸さんだけじゃない。校内1の不良少女として有名な万丈もいる。万丈が本城の事を好意的な態度で接するとは思えないが彼女ともお近付きになればまた箔がつく。
でも僕は自分で言うのもなんだけど捻くれている……。それはもう超が付くくらいに。
あの時……僕がそれを拒絶して天道の事を悪く言ったから、彼女は怒った。
それが仮定として二人が付き合っていてその彼氏である天道を悪く言われて怒ったのかそれともまた、自分のステータスを上げる為の存
在を悪く言ったから怒ったのか……どちらにしても僕が天道を否定したから本城は怒った。
僕は彼女から目線をそらし再度天道の顔を見る。あの時……天道が言った仲直りという言葉。
そもそも僕達は友達じゃない……赤の他人だ。それをいきなり友達だと言われても正直困る。それに仲直りが成立するのはお互い非を認め謝り合ってからじゃないのか?
僕は周りを見回す……。さっきから僕のことを周りがチラチラ見てるような気がする。また面倒な事になるのかなと思うと僕は誰にも気づかれないように小さく溜息を吐いた。
午前中の修学旅行のグループでの打ち合わせを終え、僕は昼ご飯を食べる為に屋上に向かおうとする。
「待って集君」
が、呼び止められる。声のした方へ顔を向けると山岸さんと万丈がいた。
「一緒に飯食おうぜっ」
万丈が笑顔で言う。山岸さんもその言葉に頷く。
「良いけど……ここじゃ食べたくない」
僕は顔を俯かせながら答える。
この教室内に天道と本城がいる。その二人のいる場所でご飯を食べたら美味いものも不味くなる。
「分かったわ……。じゃあ場所を変えましょう」
僕達は教室を出て屋上で食べることにした。屋上につくと各々弁当を広げ食べ始める。
「にしてもよ、集。お前相変わらずだな」
万丈が口の中に食べ物が入っている状態で僕に言う。
「皐月……行儀が悪いわよ」
万丈を注意する山岸さん。万丈はその注意を聞き口に手を当てる。最近、山岸さんが万丈の事を甲斐甲斐しく世話を焼いているように見えるけど気のせいかな?
「全く……でも最近変な噂も流れてるみたいだから。気をつけて」
「変な噂?」
僕は首を傾げる……はて? 何か僕したかな?
「ああ、アレか……。集がオレ達の弱みを握っていてだからオレ達はよく一緒にいるってやつ」
そんな噂があったのか……でも
「だとしても僕のやる事は変わらない」
人から誤解されているのは慣れている。それを挽回しようとも思わない。
それにそれで離れていく人間は僕とは全く関わりのない人間……こちらが気にする理由はない。
「本当に気をつけてね」
心配そうな表情で僕に注意を促してくる山岸さんの顔を見ながら僕は弁当の残りを食べた。




