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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第三章 結局僕は
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なんて日だっ!!

 退院して再び登校した初日早くも後悔した。


「はい、じゃあ修学旅行の班で纏まって」

 美紗ねえがHRでとんでもない事を言い出す。


 ……え、なにそれ聞いてないんだけど。

 僕が入院している間平日は学校がある美紗ねえは面会時間ギリギリの夜に平日は毎日訪れ、休日は朝から夜まで病室に入り浸っていた。


 当然山岸さんや万丈とも顔を合わせる事になる訳で初めて三人が顔を合わせた時、山岸さんと万丈は僕の顔をなんとも言えない表情で見てきた。


 そんな、暗い表情で見られても困る……何を伝えたいんだ? 僕が、美紗ねえの事を簡単に自分の姉だと紹介したら二人の暗かった表情が一気に晴れる。


「そうなんだ……お姉さん、か」


「そっか……なら将来オレの」

 そして二人はブツブツと独り言を口にする。なんかこの二人……似てきた気がする。


 万丈の態度が何故か僕が入院してから180度変わった。


 以前よりスキンシップがその……過激になったというか。

 平気で僕に密着してくるし、最初体を動かせなかった僕にご飯を食べさせようとしてきたり、果ては僕の排便補助をすると言った時は全力で拒否したものだ。


 そうそう万丈の事といえば渡辺さんにある事を頼まれたんだった。


◇◇◇◇◇


「集君……君にお願いがあるんだ」

 改まった態度で僕に話しかける渡辺さん。


 ……お願い? 僕が首を傾げると渡辺さんは片手を前に出しながら


「なに……難しいことじゃねぇ」

 と少し顔に微笑を湛えながら言う渡辺さん。そして、自身の頭を掻きながら


「アイツ、皐月を……頼む」

 深々と頭を下げながら渡辺さんはお願いしてきた。僕はその姿を見て慌てる。


「ちょっ、渡辺さんっ……頭を上げてください!!」

 僕は人に頭を下げられたことは一度もない……ましてや、大人になんて。


「皐月はさ……見てて危なかっしいんだ」

 顔を上げて僕を見つめる瞳は本当に心配そうに揺れていた。


「大切なモノを守る為なら命も惜しまない……。尊いように聞こえるが俺はそうは思わない……。ならアイツは……皐月の事はだれが守るってんだ?」

 ひどく思いつめた顔で渡辺さんは口にする。

   

 渡辺さんが上司を救えなかった時の話を聞いていた僕は彼が本気で万丈を心配しているのが良く分かった。


「でも僕は……万丈に比べたら弱いですよ……。とてもアイツを守れるなんて」

 僕が否定的に告げると


「俺が言ってんのは肉体的な話じゃねえ……ココの問題だ」

 そう言って渡辺さんは僕の胸を拳で軽く叩く。


「皐月には仲間が必要だ」


「それなら、赤城さんと雨宮さんが……」

 その言葉に渡辺さんは首を振る。


「お色気ねえちゃんとスケバン刑事……確かに仲間だな

 でも俺が言ってんのはそういう事じゃねえ」


 お色気ねえちゃんとスケバン刑事って……というかあの二人の事知ってるのか。万丈と付き合ってるんだから知ってて当然か。


「あの二人は皐月が守らなきゃって思ってる連中……つまり、肩の力を抜いて心の底から楽しめるような間柄じゃねえってこった」


 なんとなく分かるかもしれない……。あの中での万丈の役割はリーダーだ。リーダーとは常に周りに目を配り気に掛けなければならない。その重圧は想像を絶するものだろう……。


「皐月には肩書などを気にせず自分らしくいれる……そんな仲間が必要だ」


 そして渡辺さんは僕をまっすぐ捉えるとニヤリと笑う。


「そこで集君……君の出番だ。見た所、皐月は君の事を気にかけてるみたいだからな」

 確かに入院してから万丈は僕の事をかなり気にかけてくれている。


 だがそれは、身内とも言える海斗が僕を刺したからその罪悪感から

 僕の事を気にかけているだけじゃないのか?


「まぁそれに……皐月も女だ。そろそろ良い相手でも見つけてくれりゃ

 ちっとは落ち着くと思うがなぁ」

 な、なんで僕の顔を見てニヤニヤしながら言うんだ? 


「まぁとにかくアイツ……皐月の事を頼むわ」

 笑顔でそう告げて渡辺さんは部屋から去っていった。


◇◇◇◇◇


 心配してるんだな。万丈の事を……ってそうじゃなくてっ!?


 僕は目の前でとんでもない事を告げた美紗ねえを見る。修学旅行の事なんて一言も行ってなかったじゃないか……忘れたのか?


 そんな事を思いながら見ていると美沙ねえと目が合う。目が合うと美沙ねえは目をキラキラさせながら満足げに微笑んで頷いていた……あぁ、これ確信犯決定だ……。


 知ってて言わなかったってのか。 なんだよその、イタズラを成功させて満足しきった顔はよ。あんた、27歳のれっきとした社会人だろうが……しかも


「……宜しく。黒崎」

 うわあ……良く二度も喧嘩したというのに笑ってられるな……すでにその笑顔が怖いんだけどっ!?


 僕の班は勝手に決められていた……それもよりによって散々事あるごとに突っかかっていた天道と本城亜希子と一緒のグループだ。

 やばい……本当に泣けてきた。僕大丈夫かな……さっきから天道の後ろにいる本城からものすごい殺気を感じるんだけどっ!?

 全く……なんて日だっ!!


「ちっ……なんでこんな奴と一緒なのよ」

 僕にも聞こえるように嫌味たらしく言う本城。

 

 あぁ、その気持ちはわかるよ……誰と集団組んでも基本目立たない様にしようと思ってたけど、3ヶ月前の山岸さんの件とそれ関連の事で目立ちすぎた。


 空気のようにする事は不可能だって思ってたけど……よりによって一番組ませちゃいけないグループに突っ込ませるか普通っ!?


 こうして僕の再登校した学校一日目が始まった。


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