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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第二章 銀狼と呼ばれた少女
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負けねえから

「じゃあ集君……先生達を呼んでくるから。少し待ってて」

 

 僕が目覚めた事を病院の看護婦、医師に伝えに山岸さんは個室を去っていく。その前に僕が目覚めた事を万丈達に連絡をしていた。


 普通は逆だと思うけど……。誰かが病院送り、しかも意識不明の状態の人間は初めてなんだろう。テンパっても仕方ない……僕もまさか刺されるとは夢にまで思わなかった。


 あれから僕はどれだけ眠っていたんだろう?

 おたまじゃくしのような模様が無数に描かれている天井を眺めながら思う。どれだけの期間だったとしても、山岸さんはずっと付きっきりで傍にいた……。それだけはなんとなく分かる。


 扉が勢いよく開かれた。僕は内心もう少し静かに開けろよ……と愚痴りながら扉に目を向けると


「集っ!?」


 開け放たれた扉から万丈が飛びててくる。走ってきたのか、肩で息をしてぜぇぜぇ言っている。


「…………」


 僕は何か言わなきゃと思うけど、声が上手く出ない。体も言う事を聞いてくれない……。自分の体じゃないみたいだ。


 何も喋れずにいる僕を不思議そうに眺める万丈。

 

「どうした?」


 僕の傍へ歩み寄りながら尋ねてくる。でも僕は何も答えられないし、動けない。


「あ………ぁ……」 


 頑張って喋ろうとするけど、思ったように言葉にならずか細い声が口から出た。目覚めた時辛うじて声が出せたのに。


「お前……喋れねぇのか?」 


 目を丸くしながら僕の顔を見る万丈。僕はなんとか首を縦に振って答える。


「集……」


 万丈が潮らしい態度を取る……。僕は珍しいなと思った。彼女なら笑い飛ばして早く元気になれよと言うと思ったのに。


「……?」


 一言も喋らずに僕を見ている万丈の顔を眺める。彼女は浮かない顔をしていて、目が少し赤くなっている。


 もしかして……寝てないのか? なんで……って決まってるか、僕を心配したからだ。


「悪かった……な」


 顔を俯かせながら彼女は言う。僕は目線を万丈から窓の景色へと逸らす。だがここは、6階の個室……しかも僕は体が動かせない。


 よって見えるのは今も燦々と輝き僕を焦がしつくそうかと言うほどに照り付ける太陽だけだった。再度僕は万丈に目線を戻す。


 緑の半袖プラウスに太ももの幅が広い……ワイド、パンツ? だったかな。前に美紗ねえが教えてくれたからなんとなく覚えてる……ズボンはそれを履いていて、全体的にカジュアルな服装をしている万丈。


 普段、学生服……しかもセーターを腰に巻いてる格好を見てるから今の万丈を新鮮に感じた。

 ブラウスの胸元が開いていて……見てはいけないと分かっていても目が勝手にそちらへ行ってしまう。


「すげぇよ、お前……」

 

 悲しそうな表情でただ一言そう呟く。何をいきなり言っているだ……。僕が凄いだって? 僕は彼女の顔を眺める。その目は虚しそうに見えた。


「あの時……お前が海斗に刺された時」


 僕の顔から目線をそらし天井を見上げながら万丈は言う。


「集は……奏を守るために刺された。本当に凄えよ」


 僕は意味が分からなかった。万丈がどうしていきなりそんな事を言

 うのか……。そして、なぜ辛そうな表情を浮かべているのか?


「もし、もしさ……それがオレだったら庇ってくれたか?」

 

 何を言っているんだお前は? 僕はその言葉に答えてやりたかった……だけど、今の僕は喋ることもそして体を動かす事も出来ない。


 正直、気付いたら体が勝手に動いていた……。山岸さんが僕の前に立ったとき色んな思いが込み上げ、その結果僕は山岸さんを助けたい……。そう思った。


 そこからは体が勝手に動いたとしか言いようがない。理性があれば普通怖くて逃げ出すと思う。でも山岸さんは僕の初めての掛け替えのない存在(親友)であり、僕にとって居心地のいい場所なんだ……だから山岸さんを失いたくなかった。


 でも、相手が万丈だったとしても僕は迷わずに行っていたと思う。途中で怖じ気づくかも知れないけど、それでも山岸さんを庇ったようにいくだろう……だって



 ――でも僕達は万丈っ……お前の友達だっ!!



 彼女は僕の友達なのだから……助けるに決まってる。僕は言う事を聞かない体を必死に動かしてなんとか頷く。


 万丈はそれを見て、驚いた表情を浮かべたまま固まる。暫くして、彼女が満面の笑みを浮かべる。その笑みが彼女の銀髪と相まってよく映える。


「そうか……ありがとうな、集」


 そう言って万丈は僕の首元に口を寄せた……え? 万丈何やるの……ねえっ!?


 

「……っ」 


 なんと、万丈は僕の首元に優しく噛み付いてきた。あぁ何だこれ。凄い気持ちいい……じゃなくてっ!? なんとかやめさせないと……と僕が慌てた瞬間……。個室の扉が開け放たれる。


「何やってるのっ!?」


 山岸さんが口を手に当てながら大声で言う。それと同時に万丈は甘噛みをやめ僕から離れる。


「オレの印を付けといたんだよ。コイツはオレのだっていう証をな」


 万丈はそう言って手をピストルの形を作ると僕に構えて撃つような仕草をとる。


「な、なんでいきなり……」


 狼狽える山岸さんの横を歩きながら


「奏……悪いけどオレ、負けねえから」


 万丈は……それだけ言うと病室から去っていく。僕はその光景を見て、これからの学校生活がまた賑やかになるなと心の中で、そう思いながら微笑むのだった――。

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