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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第二章 銀狼と呼ばれた少女
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王子様

今回は皐月視点でお送りします。

集が刺されるシーンからのお話になります。

「えっ……は?」


 突然の事にその場にいた全員が黙り込んだ。

 時が止まるって表現があるけど、正にその時は全員が止まっていた……。まるで時が止まったみてぇに。


「きゃああぁァっっっ!!!」

 集が倒れ込むのと同時に奏が悲鳴をあげる。


「ボク、ボクは……ボクはガルくニャい」

 海斗が気が狂ったように叫ぶ。だけど呂律が回ってないみたいで、所々間違っていた。


 オレはそんな海斗を見て心の中にマグマのように熱い炎が灯るのを感じた……聞き手である右手を力の限り握りしめる。

 そして海斗の元へ駆け出す。


「アハハハッアハハハッ……ぐふぇっ」

 オレは海斗の頬を思いっきり殴る。


 ポキポキッと頬骨の砕ける音が聞こえた。

 海斗は吹っ飛ばされて倒れるとピクリとも動かなかった。


「集、君……集君っ!!」 

 オレは泣き叫びながら集の体を揺する奏に目を向ける。

 その顔はこの世の終わりみたいな顔をしていて、見ているこっちまで辛くなった。


「姉御っ!? 黒崎の奴大丈夫ですよねっ!?」

 紗季が血相を変えて聞いてくる……オレと涼以外気にかけもしなかったのにコイツにしては珍しい。


 オレは、紗季の体を抱きしめる。

 紗季の体の感触と体温がオレの手に伝わる。


「大丈夫だ……心配すんな」 

 オレは無理矢理明るい声で涼を励ます。そして抱擁を解いてオレは集の元へ向かう……大丈夫なんて、そんな保証……どこにもねぇ。


「奏……集はっ?」

 オレは奏に声を掛けるが奏は答えない……それだけ取り乱している事は顔を見てよく分かった。


「……っ」

 オレは集の顔を覗き込む。集の顔は土気色で死んでいるんじゃないかって心配になる……そう思えるほど集の容態は素人のオレが見ても悪かった。


 遠くからウーンウーンっとサイレンの音が遠くから聞こえた。

 それが次第に大きくなってゆく……どうやらこの場所に向かってるようだ。そういえば……奏が119番をしたんだったな。


「救急車がきた……。大丈夫、大丈夫だ」

 オレは繰り返して大丈夫と口にする。それは奏に向けた言葉であると同時に自分に向けてもいた。


 オレは今にも死にそうな顔をしている集に顔を向ける。

 大丈夫だよな……? 死んだりなんかしねぇよな……集?


 暫くして、救急車がコンテナ置き場に入ってくる。

 オレは、集を抱き抱えて立ち上がる。


 抱いてビックリする。男なのに軽い……それに男特有のゴツゴツした体付きじゃない。ハッキリ言って女みてぇだ。

 こんな体で戦って……刺されたってのかよ。

 

 オレは心の中でそう思いながら救急車の元へ向かう。

 救急隊員の男がオレの元へ駆け寄ってくる。


「コイツを頼みます」

 オレはそう言って、駆け寄ってきた救急隊員に集を手渡す。


「もう一人……奥に怪我人がいます」

 奥に司もいる……。集も心配だが、妹である司も心配だ。

 しかも司は、海斗にシャブを打ち込まれてる。

 下手したら、司も命に関わるかもしれない。


「……分かった。おい、ストレッチャーを一台持ってきてくれ」

 集を抱き抱えた救急隊員が、救急車で待機してる隊員に指示を出す。

 そして手際よく集と司を救急車に乗せると搬送先へと走り出した。


 指示を出していた男が

「これから出るけど、誰か付き添いできるかい?」

 と、オレ達に聞いてくる。


「私が行きますっ!!」

 奏が一目散に声を上げる。


 指示を出していた救急隊員が頷く。


「早く乗るんだっ」

 そう言って救急車に乗り込み、奏もその後に続いていった。


 オレ達はただ集と司を乗せた救急車を見送る事しかできなかった。



 その日の夜……。集が一命を取り留めた事は集に同行して行った奏が連絡してきた。

 オレ、涼、紗季は翌日集が搬送された二条病院に赴いた。

 だがそこにいたのは……意識を失ったままの集だった。


 集の傍らで心配そうに集を見る奏……。

 

 オレは葉を食いしばる。これ程までに自分の無力さを痛感したことはねぇ。


「……っ」

 後ろから誰かが抱きついてくる。


「大丈夫? 奏」

 抱きついてきたのは涼だった。

 

「あぁ、大丈夫だ」


「嘘っすよ」

 紗季がオレの前に出てきて否定する。


 お前ら……隠し事は出来ねえなと片手で顔を覆いながら思った。

 そして再度、集へと目を向ける。


 死ぬんじゃねえぞ。お前はやっと見つけた……()()()なんだから――


 それから毎日のようにオレ達は意識を失ったままの集の元へ見舞いに行った。

 集が入院してから毎日眠れなかった……。集の事が心配でだ。

 だがいつまで経っても集は目覚めない。

 このまま目覚めないのかと思った昼頃にスマホが鳴り響く。


 ディスプレイを見て相手が奏だと知る。

 オレは通話ボタンを押して電話に出る。


「奏か……どうした? なんだってっ!?……分かった、今から行くっ」


 奏からの電話の内容は集が目覚めたと言う話だった。

 オレは、すぐに部屋を飛び出す。やっと集の声が聞ける……。そう思うと凄い胸が高鳴った。


『でも僕達は万丈っ……お前の友達だ。だから関係ないなんて……言わせないっ』


 あの時の集の言葉……すげぇ嬉しかった。

 オレに王子様なんて現れないと思ってた。

 けど……やっと見つけたんだ。オレの()()()


 頬が熱い。きっと周りの奴らには俺の顔が真っ赤に見えている事だろう。オレは駆け出す……。一つはオレが真っ赤になってるのをこの場にいる奴等に見られたくねえから。



そしてもう一つ……オレにとっての王子様に早く会うために――。



 

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