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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第二章 銀狼と呼ばれた少女
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どこへ行ったんだ?

「おはよう」

 翌日、僕は学校に行き教室に入る。すると、山岸さんが僕に挨拶をしてくる。 昨日の屋上でのやり取りを思い出して、僕は気恥ずかしさから彼女から目を逸らして

「おはよ」 

 と素っ気なく彼女に挨拶を返す。


 その事に少し罪悪感が生じる……。なんで僕は、人に対して素っ気なくしてしまうんだろう、と思う。普段絶対思ったりしないのに……それも。


 僕は、山岸さんへと目を向ける。こう思うようになったのは、山岸さんのせいだ……彼女と関わってから全てが変わった。でも、全部が変わった訳じゃない……それに。


 彼女と目が合う……数秒お互い黙って見つめ合う。

見る見るうちに、山岸さんの顔が真っ赤に染まっていくのが分かった。僕は無意識に彼女の額に左手を当て、自分の額に右手を当てる。熱はない……みたいだな。


 安心して顔を離すと、そこには……


「…………」 


 さらに赤らめて固まる山岸さんの顔があった。


「大丈夫……? 山岸さん」 

 僕は、首を傾げながら尋ねる。



「き、ききっ、昨日のっ……仕返しのつもりっ!?」 

 と訳の分からないことを言い出す山岸さん。


 昨日って、屋上での事を言ってるんだろうか……。でも、今こうしてる事が何故仕返しに繋がるんだろう?


「僕は、ただ……山岸さんの顔が赤いから、熱でもあるんじゃないか……と」 

 僕は、自分の気持ちを素直に話す。山岸さんがその言葉を聞き目を数回瞬かせてから  


「そ、そう……」 

 と少し顔を俯かせモジモジしながら言う。昨日もそうだけど、なんでモジモジしてるんだろう……。最近の流行りなのだろうか?

 そして、二人して教室へ入ろうとする……。僕が教室のドアを開けると


「…………」


 騒がしかった教室が僕と山岸さんの二人が入った瞬間静まり返り、その場にいる全員が僕達に視線を向ける。

 なんだろう………? 以前の時向けられていた敵意は感じないけど。

好奇の目に晒されてる気がしてならない。見世物……までとは言わないが、生暖かい目で見守られてるような……そんな感じがする。


 僕は教室中を見回す……万丈は、まだ来てないみたいだ。そういえば、万丈は学校に来てない時は何をして過ごしているのだろうか……ふとそんな事を思った。


 こういう事を思うようになったのは……僕は、教室全体に向けていた視線を山岸さんに向ける。そう……こうやって人に意識を向けられるようになったのは、山岸さんのお陰だ。


 彼女のお陰で僕は退屈でしょうもなかったモノクロの世界が少しずつ……そして今もなお色付いていく。山岸さんには、感謝をしなくてはならない。

 僕は彼女に……何かをしてあげられるような人間じゃないから。


「……何よ」 

 僕の視線に気付いた山岸さんは、ほんのりと頬を赤らめながら聞いてくる……やっぱり、風邪か何かかな。


「やっぱり、保健室に行った方がいいよ……顔赤いから」

 僕が心配して言うと、山岸さんは頭を振る。


「大丈夫よ。これは、そのっ、病気は病気だけど……そういうのじゃないから」

 と彼女は僕に対してそっぽを向いて答える。


 病気だけど病気じゃない? なぞなぞかな……。山岸さんが何を言ってるのか意味が分からない。僕が、訝しんで山岸さんを見つめる。


「もう、本当に大丈夫だって……じゃあ、また後でね」

 そう言って、彼女は自分の席へと向かう。


 本人が大丈夫だって言ってるから問題ないか。山岸さんについてそう結論付け自分の席に向かおうとした瞬間……。


「姉御っ!?」 

 と、ドアが開かれるのと同時に威勢のいい声が教室中に響き渡る………あれ、この声って?



「……チッ、ここにも居ないか」 

 そこには、渋面を浮かべている雨宮さんの姿があった。雨宮さんは教室を出ようとしたが僕を見つけた事により動きを止め、僕の元に寄ってくると。


「黒崎さんっ……昨日の夜から姉御が居ないんですっ」 

 と今にも泣き崩れそうな勢いで、僕の肩を掴んで言ってくる。


「夜は必ず会ってたのに……会えない時は必ず連絡入れるってのに、全く連絡ないし繋がらねえっ、私はどうしたらっ」


「ちょっ……落ち着いて」

 僕は、ゆっくりと諭すように雨宮さんを宥める。


「……すっ、すいませんっ」

 と言って雨宮さんは目を伏せる……。目が真っ赤になっており、目元にはクマができでいた。その事から夜通し彼女……いやおそらく赤城さんもだろう。彼女達が必死で万丈を探し続けていたことが伺えた。


 僕は、周りを見る……。皆が僕達の事を好奇心丸出しの目で見つめてくる……。ここじゃ落ち着いて話も出来ない。僕は、雨宮さんの手を取る。


「……とりあえずここを離れよう。もっと落ち着いて話せる場所に」

 僕はそう言うと彼女の手を引き教室を出る為に出入り口へと足を動かす。


「ちょっ、集君っ!?……待ってよっ」

 後ろから山岸さんの声が聞こえたけど、僕はそれに無視する……と言うか、答える程の余裕がなかった。彼女……万丈皐月の事で頭が一杯になっていた。


 『オレ達は、血は繋がってないけど……心は繋がってる、姉妹(仲間)だっ!!』


 万丈……あんな事を言ってたお前が、姉妹(仲間)を心配させて……どこへ行ったんだ?


 僕は雨宮さんの手を引きながら万丈の事を気に掛けていた――

続きが気になった方ブックマーク並びに感想ご指摘など宜しくお願いします^_^

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