なんだろう‥‥この気持ち
学校に復帰したその日、僕は学校を終え家に着くとその場に座り込む。その日、というか昼の山岸さんとのやり取りの事で頭が一杯になっていた……。
上目遣いに見つめられて、しかもあんなモジモジされたらどんな男でも照れてしまうと思う。例え……山岸さんが僕のことを好きじゃないって分かっていても。
僕みたいな日陰者より、さらに影の薄い僕が山岸さんに好かれる訳がない……うん。
僕は、床に仰向けに寝転がる。山岸さんとは、偶々あの教室の机や椅子を全部倒したっていう事件の犯人を僕が、名乗り出た事によって出来た縁であって……それ以上でも以下でもない。
今も、関係が続いてるのは山岸さんの優しさのお陰だ。でなければ、僕らの縁は中山の事件が終わったと同時に切れてた筈だ。
本当……今でも信じられない。山岸さんと僕が友達だなんて――。
『当たり前でしょっ……私にとって一番の……ううん、大切な――親友なんだからっ』
彼女が昼に言った言葉が頭の中でその時言った表情と共に流れる。
あの時の山岸さん、凄く可愛かったな……って何を考えてるんだっ。
僕は頭を振る……可愛いのなんて、当たり前だ。その顔を思い浮かべたときに思った事が、酷すぎる。
彼女のあの笑顔を、僕だけに見せてほしいって‥‥彼氏でもないのに、何言ってんだよ。仮に彼氏だったとしても、独占欲強すぎだっ。
山岸さんは誰のものでもない。それに僕なんかが伝えた所で彼女が喜ぶ訳がない。
『これからも、宜しくね――しゅ、集……君』
なのになんで……あんな可愛い顔で僕の名前を呼ぶんだよ――。今も山岸さんに呼ばれた時を思い出すと、胸がギュッと締め付けられる。期待するなって頭では理解してても、心が求めてしまう。
左手の甲を額に置いて、天井を見上げる。
「……奏」
気付いたら僕は彼女の下の名前を口にしていた。
――ッ!? 気付いたら恥ずかしくなり、身体をジタバタさせる。暫くしたあと動きを止め、また天井を見る。
「……本当、何なんだよ――この気持ちは」
僕は今までに感じた事のない感覚、感情に戸惑う。初めてだ……胸を締め付けるこの痛いけど――ずっと感じていたいと思っている自分に戸惑う。
山岸奏に出会ってから、本当に僕のモノクロだった世界が色付き始めていった。彼女が今までの……僕を変えていった。
だからこそ、怖いと思っている自分がいる。彼女が居なくなったら僕はまた……以前のような日々に戻ってしまうのではないかと。
今日はもう寝よう……寝れば、こんな考えもこの胸の痛みも考えなくていいから。
結局僕はその胸の痛みの意味を理解することから目を逸らした。
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