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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第二章 銀狼と呼ばれた少女
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こんな事をずっと

今回は 山岸奏視点でお送りします。

 彼……黒崎集が問題を起こした翌日。


 担任の黒崎美沙先生がロングホームルームで前日の黒崎集の事を話

にあげた。今更だけど、黒崎君と名字が一緒なのよね。それにたまに二人を見かけるけど、仲がいい……ひょっとしたら姉弟なのかも知れない。


「まず、黒崎君がキレた原因だけど……誰か心当たりはない?」


 黒崎先生が、周りを見回しながら問う。だけど、誰一人として手を上げようとしない。やっぱり、黒崎君は周りに嫌われてるから誰も彼を助けようとしないのかな。暗い気持ちが、胸を染め上げる瞬間――。


「美紗っち、オレ知ってるよ」とぶっきらぼうな声が響き渡る。声のしたほうを見ると万丈さんが足を机に乗せた状態で座っている。


「美紗っちって言わない。後足を机から下ろしなさい」


 万丈さんに恐がらずに黒崎先生が告げると


「は〜い」 と間延びした返事をしながら、足を下ろす万丈さん。


「それで、何を知ってるの?」

 黒崎先生が神妙な面持ちで聞く。


「そこにいるさー、山岸奏……。このクラスで悪口言われてるようなんだ」


 興味のなさそうな態度で。 後ろの席に位置する私を指差しながら言う。その光景を見て、大半の生徒達が目を伏せた。


「どうも、理由が山岸さんが落ちこぼれである集にばかり構ってるか

 らそれを妬んでいってるみたいなんだよ」


「落ちこぼれ?」


 黒崎先生はその言葉に反応し、眉間に青筋を立てる。傍から見てい

ても怒ってる事がよく分かる。


「誰? そんな下らない事を言っているのは……」


 鬼の形相で周りを睨みつける黒崎先生……。一人の女子が声を荒げて言う。


「亜希子〈あきこ〉っ謝りなよ」と言われたのは、クラスの中心グループのリーダー格で肩まで伸ばした髪を金色に染めている本城亜希子〈ほんじょうあきこ〉だった。


「なんで、あたしのせいになるのよっ」とヒステリックな声をあげる本城さん。


「だって、やろうって言い出したの亜希子じゃん」


 周りの女子が、そうだそうだと囃したてる。


「あたしは、そうしようと言っただけ。具体案を出したのは佐藤……アンタでしょっ」


 本城さんはそう言って、違う女子を指差す。そこからは、酷かった……。誰がやった、やってないの醜い責任の擦り付け合いが暫く続いた。


 途中視界に天道くんの姿が入った。 苦しそうに表情を歪ませていた。昨日、放課後に黒崎君の言った言葉を万丈さんから聞いていた。


 責任を仲間だって言い合った奴等と平気で擦あたしり付け合う……。今の状況は、その言葉をまさに言い表していた。


 天道くんは、信じられないという感じで見てるけど女子の間ではよ

くある光景だから。私は見慣れている。男子より女子の方がこういう事は日常茶飯事でイジメも陰湿で質が悪い。


 中学の頃、私はよくその光景を目にしていた。物を隠すのは当たり前、教科書を破っている姿を見た時は信じられないと思った。


 現実は時に、残酷なものと言うことを私は知っている。


 そしてその責任転嫁の矛先が男子にも向かう。お前達が嫉妬の感情持つからと訳の分からない言い合いをまた始まりそうになったところで……ダンッと黒崎先生が教卓を思いっきり叩いたことでクラスが静まり返る。


「お前ら、恥ずかしくないのか」


 黒崎先生の目が血走っていた。心なしか、その顔が黒崎集に似ていた。だが、そんな黒崎先生を見ても怯むどころか開き直った様子で本城さんが


「先生、良いじゃないですか」と悪びれる様子もなく言う。


 黒崎先生の鋭い眼光が本城亜希子を捉える。


「普段からクラスに貢献もしてない。居てもいなくても同じような存

 在の人の事を言ってもしょうがないでしょっ」

 周りに訴えかけるように言う本城さん。周りの女子何故か男子も皆口を揃えて、そうだそうだと同調を始めた。


 黒崎先生がその光景を見て止める為に口を開きかけた瞬間……


「いい加減にしてっ!!」

 

 教室に大きな声が響き渡る。それは、私の声だ……。もう我慢できなかった。なんで、黒崎君がこんな事を言われなくてはならないんだろう……


「責任の擦り付け合いだけなら私は何も言わないけど……」


 私は周りを睨みつける様に見回す。精一杯目に力を込めて……。途中、万丈さんと目が合ったけど、彼女は私を見て笑みを浮かべていた。でもその笑みは嫌いじゃない。


「私の友達を悪く言うのは許さないっ!!」


 そうか、黒崎君はこんな事をずっと続けてきたんだ……。


 自分がクラスで異分子扱いをされ続けてきた。それは多分ずっと孤

独で考えただけで、私は嫌に思ってしまう。でもそれを黒崎君から

続けてきた……。それも多分、小さい頃から。


 ずっと一人で決めて、誰にも相談せず一人で抱え込んできたんだ。

それを考えただけで胸が苦しくなる……あぁ、どうして黒崎君だけが

傷付かなくちゃいけないの?


「なんで、あんなボッチを気にかけるのよっ。まさか……好きな人って訳でもないでしょうに」


 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて本城さんが問う。そして甲高い笑い声が教室に響き渡り、天道くんと黒崎先生、凛以外の全員が彼女に同調してゲラゲラと笑いだす。


 ここで肯定したら私は、黒崎君と同じ様に空気として扱われてクラ

スで孤立するんだろうな……。以前の私だったら孤立したくないという

思いから迷わず、違うと否定したと思う……でも。


「そうだよ」


 その言葉に教室に再び静寂が戻る。クラスの全員、黒崎先生までも

が信じられないと言った顔を浮かべていた。


「私は黒崎君が好き」


 今ここで、自分の気持ちに嘘は……吐きたくないっ


「は? ……あんな奴のどこがいいの?」


 戸惑いの表情を浮かべながら彼女は問いかけてくる。


「良い所? 一杯有り過ぎて、何から言っていいか困るけど」


 でも彼の良さを一言で言い表すなら


「ありきたりかも知れないけど、優しい所……かな」


 他人に言うのって、なんか恥ずかしい……顔赤くなってるのが自分で

 も分かる。


「優しい? そんなの他の奴でも言える事じゃん」


 気色ばんで彼女は言う。そんな事はあり得ないと言うかのように。


「確かにね。優しいってだけなら、他の人でもいい。けど黒崎君の場合、優しさの質が全然違うんだよ」


 そう、黒崎集の優しさは分かり辛い。それは彼が不器用な人間だか

らだと思う……。でも、一度わかってしまえば彼の行動にも納得がいく。


「例えば、何よっ」


 本城さんは、信じられないと言った顔で私に問う。きっと、今の私はとんでもなく、顔がニヤけているんだろう……それほど、彼――黒崎集が好きなんだ。


「ずっと、黙ってたけどね」


 私は、あの事件の事を伝えることにした……黒崎集と私しか知らない

事の真相を……。


「あの、机や椅子を全部倒したの……私なの」


 その言葉を聞いたクラスの全員が息を呑む。


「嘘……」


 私は本城さんの言葉に横に首を振ることで否定する。


「黒崎君は、犯人が誰かも分からないのに名乗りを上げて……罪を被っ

 た」


 自分がやってしまった事でもないのに。


「そんな事、皆はできる? それだけじゃない。犯人が私だと分かっても、糾弾するんじゃなく彼はこう言ったの」


 私はそこで一旦言葉を区切って周りを一度見回してから言う。


「ちゃんと自分がやった事を言い訳もせず……認めてくれてありがとうって」


 その言葉にどれだけ救われたか……。


「私……初めてだった。悪い事をしたのに怒られるんじゃなくて諭され

 るようにお礼を言われたの」


 私の事を分からないなりに頑張って理解しようとしてくれた――だか

 らこそ


「だから……そんな素敵で、私にとって大事な人の事を悪く言わないで

 っ」


 それを言ったあと、クラスの皆は口を噤み……そこからは反論するも

のは誰一人としていなかった。


◇◇◇◇◇


 その日の翌日、私の元に誰も寄り付かなくなった。


 なんだろう、思ってたより怖くない。一人になるのが分かってたか

らかな……違う。


 いつになるか分かんないけど、黒崎集が来たら一人じゃないってこ

とを理解してるからだ。黒崎君は、私が寄っていっても拒んだりしないって分かってるから。それに、完璧に一人って訳じゃない。


「はよっ……奏」 と後ろから声を掛けられる。後ろを振り向くと万丈皐月がニッコリ笑顔で立っていた。


「おはよう、()()」と私は友達に挨拶の言葉を返す。

 

 昨日のことを切っ掛けに、私は何故か皐月に気に入られてこう言われた。


「奏……今日から友達なっ」と笑顔で彼女は告げてきた。そのお陰で私は完璧に孤立したという訳ではない。それに


「……おはよう、奏」


 私の幼馴染……。凛が普段の無機質な声からは考えられない穏やかな声で挨拶してくる。


「万丈さんも、おはよう」


 そう言って、凛は丁寧に頭を下げる。凛は元々こういう人間だ。いつも周りからアンドロイドと揶揄されているけど、それは彼女が相手に心を許してないという時と、自分の仲のいい友達を守ろうとする時だけ……だから、私が怒鳴った時は私を守ろうとしたが為に無機質な声だったのだ。それを理解するのには、5年以上掛かったけど。


「おう、おはよっ……皐月って読んでくれて良いんだぜ?」


 皐月は笑顔で凛に要望する。凛は、少し顔を赤らめて


「……もう少し仲良くなったら、呼ぶわ」と恥ずかしそうに答える。


 彼女は、常に無表情でいるから意外に思われるけど、こう見えて凛は恥ずかしがり屋なのだ。


 こうして私は黒崎君が来るまでの3週間を楽しく過ごしていた――。

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