どうすれば良いんだよ
僕はあの後、早退した。美沙ねえの話では今日の放課後から3日かけて職員会議が行われるらしい。
今回の件で退学や停学になることはないらしい。2、3週間の休学……自宅謹慎になるのが妥当だろうという。
僕は、いつもの帰宅路を歩いている。途中通る商店街は、人で溢れかえっている。目玉商品を宣伝している男の大声が商店街に響き渡る。正直早退できて良かった……。
あれだけの事を起こしといてクラスの皆の前に出向けるほど僕は肝は据わっていない。いや、クラスは別に構わない。今まで自分は認識されてはいなかったのだから。
今回も気にせず無視をすればいい……でも。
『なんで……自分だけが傷付く道を選択するの』
僕は、友達である山岸奏を泣かせた……。あんな顔をさせたかった訳じゃないのに。思えば、これまで僕は誰かの為に自分から動いた事がなかった。
初めて動いたのは、山岸奏を中山から守る為に行ったあの時か……。あの時は、僕に声を掛けてくる物好きな人だなと思った。すぐに興味を無くして離れていくだろうと。
でも、彼女は違った……毎日声を掛けてきた。明らかに僕の知っている人種とは違っていた。関わってきた理由は、罪悪感による物だったけど。 違う形で巡り合っていたとしても山岸奏は黒崎集と仲良くしてくれていただろうか?
例え、そうだったとしても彼女と僕は根本的に違う。山岸奏は全員で力を合わせて困難に立ち向かうタイプ……。対して僕は、一人で片付けるタイプだ。
タイプが違うのだから当然手段も違う。確かに人数が多ければその分、分担ができる。だが僕みたいに、単独の場合はそれは出来ない。だからこそ自らの、行動に常に責任が問われる。
だが集団を組むとどうしても、チームで馴れ合いが発生する。ただの仲良しグループに成り下がる可能性が出てくる。それにより個々の責任管理能力が低下し失敗すれば集団で責任逃れがおき、挙げ句の果てには責任のなすりつけ合いが起きる。僕から言わせてもらえば、はっきり言って無駄なことだ。
その点単独行動なら、自分が悪にも正義にもなれる。一人なら、失うものはない……今まではそうだった。だが今は……山岸奏と万丈皐月というふたりの友達がいる。
万丈は傷付いてなかった……むしろ僕の立ち振る舞いを面白可笑しく見ていた気がする。だが、山岸さんは泣いていた。
僕が悪役になる事を彼女は嫌だと、感じているのかもしれない。
それが何故かは分からない……僕はこういう方法でしか問題を解決して来なかったし、周りの事も気にかけたことは一度もない。どうでも良かったんだ……周りもそして自分も。
でも、山岸奏の泣き顔を見た時……ずきりと胸が軽く痛んだ。これもどうしてかは分からない。ただ言える事僕は……山岸奏に嫌われたくないと思っている。
せっかく出来た友達だからと言うのも理由だが一番は僕が一番信頼できる人間だからという理由が大きい。彼女は、真っ直ぐで裏表もない……素敵な人間だ。
だからこそ山岸奏に対して、誠意のある行動を取るべきだった。僕のあの手段は、一種の逃げだ……。面倒くさい状況になりたくないから、それなら自分が折れようという端から人と話し合う事を諦めている人間の行いだ。
僕は上を見上げる。そこには商店街の天窓から覗く曇り空が僕の心境のように広がっていた。
「僕は、どうすれば良いんだよ・・」
小声でそう呟くが、誰も僕に答えを教えてはくれなかった。
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