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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第二章 銀狼と呼ばれた少女
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山岸さんと万丈さん

 翌日、梅雨前線が今日から活発化するという朝の天気の予報を見て僕は学校に向かう。


 ……勿論、今は雲1つない快晴の良いお天気日和だが、傘は忘れず持っていく。若干、ホントに降るのかよ……と天気のお姉さんを疑ったが、予報に間違いはないと思い直す。校門にたどり着くと


「おはよう、黒崎君」と笑顔で挨拶をする山岸さんの姿。


「…………」


 昨日僕の事を知らないと言っていたのにもう話しかけるのか……。

 どうやら自分で言い出したことは、その言い出した日しか山岸さんは守れないらしい。


「ちょっ……なんで、黙ってるの?」キョトン顔で尋ねる山岸さん。


「いや、昨日僕の事なんて知らないって言ったよね」


 僕は彼女から目線を逸しこちらは興味ありませんよという態度を装う。


「それはっ……ごめんなさい」


 彼女は、目線を下に向け明らかにしおらしい態度になる。


 僕は素直な山岸さんの態度に言葉を失う。てっきり反論するかと思ってたのに……。

 最近、というか一昨日から山岸奏はおかしい――僕なんかの態度に浮き沈みが激しい気がする。


 それが何を意味するのか、僕にはよく分からない。僕は山岸さんに声をかける。


「ま、まぁ……その、此方も言い過ぎました……ごめんなさい」と僕は謝罪の言葉を口にする……なんか、最近謝ってばかりのような気がする。

 謝罪の言葉を聞いた山岸さんが僕に目線を合わせると


「うん……許してあげるっ」と満面の笑みを浮かべる山岸さん。


 また、今日も僕は山岸奏と共に日常を過ごすのか……。嬉しく感じると同時に面倒くさいと感じる。

 だって、彼女はあまりにも目立つからだ。嫌だな、目立つ人の傍にいる僕まで目立ってしまう……悪い意味で。


「それじゃあ、行こっか」


 楽しそうに言う山岸さん。山岸さんが楽しめているのなら、それはそれで良いんだろう。


 ……でも、そろそろ彼女を支持するファン達に殺されそうだ……。何か対策を練らないとな……と、割と本気で焦る。そうして、教室前の渡り廊下を歩いていると


「集……はよっ」 

 と軽快な声を後ろからかけられる。


 僕と山岸さんが振り返るとそこには、昨日知り合った万丈皐月が仁

 王立ちの姿で僕を見つめる……いや、背丈的に見下されている。


 おはようございますと僕が答えると隣から視線を感じる。そちらへ目を向けると、山岸さんが僕をジト目で見つめている。

 そんな目で見られても、彼女が何を意図してやっているのか全くも

ってわからない。


「ん?可愛らしい子だな、集の彼女か?」と、ニヤニヤしながら言う。その言葉に山岸さんが



「ち、違うわよっ……まぁその内……ごにょごにょ」


 真っ赤な顔で否定するが、後半に近づくにつれその声は尻すぼみす

 る。


「ごめん、後半なんて言ったの?」


 僕は聞こえなかったので山岸さんに問いかける……すると


「な、なんでもないっ」


 山岸さんは真っ赤な顔、そして涙目で言ってくる。なんで、そう言ってくるのか分からないけどこれ以上問いたださないほうが良いなと判断し


「万丈さん、僕と山岸さんはそんな関係じゃないよ。それに、もしそんな間柄になったら僕は今頃この学校じゃ生きていけなくなる」 


 万丈さんに否定をし、山岸さんとそんな間柄になる事はあり得ない

 ということを遠回しに伝える。


「まさか、気づいてないのか?」万丈さんはキョトンとした顔で僕に問いかける。


「えっ……何の話?」万丈さんが何を言おうとしてるのか全く分からない。



「全く……みりゃ、分かるもんなのにな」やれやれと言ったふうに目を閉じて驚いた首を左右に振る万丈さん。



「集は意外と鈍ちんなんだな」これは分かるぞ……僕の事を馬鹿にしてるな。いい返そうと口を開きかけると


「万丈さん、聞きたいことがあるんだけど」


 そういう山岸さんの表情は深刻なものになっていた。一体何を聞くつもりなんだ……と、訝しんでいると


「なんで、黒崎君のことを下の名前で呼んでいるのよっ」


 ズビシッと、音が出そうな出そうな勢いで万丈さんに指を指す。



「なんでって……オレと集は、ダチだからよ。ダチを下の名前で呼ぶのは、当然だろ」


「え?」


「え〜〜〜っ!?」


 僕は山岸さんの声を遮って周りの目もくれず盛大な声で、驚愕する。


 僕達って……友達だったのっ!?


 えっ、いつ……昨日会ったんだから昨日しかないか。でもそんな空気少しでも有ったか……?

 確かに笑顔が絶えなかったけどっ。万丈さんは、僕の態度を見て不機嫌そうに顔を顰める。


「なんだよ、その反応……まさかオレとダチになる事が不服か?」


 詰まらない答えが飛ぶようなら今すぐにでも殴ると言わんばかりに

 握り拳をつくる万丈さん……僕は慌てて答える。


「いやあのっ、昨日のやり取りでよく友達認定されたなと思ってっ」


 その言葉に万丈さんは少し頬を朱に染めながら


「まぁ、オレの事を避けずにあんな良くしてくれたからなっ」


 と恥ずかしいのを誤魔化すように強く言い放つ万丈さん。僕と山岸さんはその光景に言葉を失った。あの、校内で悪名高い万丈皐月がこんな女の子らしい顔をするなんて……。


「そういう訳で、オレ達はダチだ。この関係は死ぬまで……もしくは喧嘩して仲違いするまでずっとだっ」


 そう朗らかに笑いながら手を差し伸べる。


「これからも、よろしくな……集」


 はじめてだ……友達って、こんな簡単に出来るものだっけ?


 僕はその光景を見て、つい胸の奥に仕舞い込んでいた。()()()の記憶が呼び覚まされそうになる。


 慌てて僕はその呼び覚まされそうになった記憶に蓋をする。あの頃とは違う……僕は心の中で言い聞かせながら万丈さんの、差し伸べられた手を取る。


「僕の方こそ、宜しくお願いします」


 そう言って僕は自分より手の大きい万丈さんの手に少しの力を籠めて握る。


「おいおい、ダチなんだから敬語はやめろよっ」とおどけた調子で言う万丈さん。


「そうだね。これからよろしく……万、丈」


 僕は少しいい淀みながら彼女の苗字を呼び捨てで呼ぶ。いきなりの事に万丈は目を丸くするが暫くしてから


「あはっ……アハハハハッ」と、腹を抱えて爆笑する。

 

 僕は何がそんな面白いのか不思議に眺めていると


「まさかっ、そう来たかっ……オレが呼んでるんだから下の名前で呼ばせようと思ったが……これはこれで良いかもなっ」

 そして、万丈は山岸さんに目を向けるとニヤリ顔を作ると


「それに、オレの事を下の名前で呼ばせたらどっかの誰かさんがブチギレそうだしな」と挑発するように言う。


 その言葉に山岸さんは顔を真っ赤にしながら


「そっそんな子供みたいなことしないわっ」と大きな声で否定する。


その瞬間に学校の始業を伝えるチャイムが校内に鳴り響く。


「っと、もうそんな時間か……集、また後でな」


 そう言うと、踵を返し元きた道を戻っていく。その歩く後ろ姿から高々に上げた手をヒラヒラと振られていた。

 どうでもいいけど万丈……当たり前のように次の授業サボるんだな。

僕は呆れながら万丈の後ろ姿を眺めていると


「絶対……負けないからっ」


 山岸さんの謎の宣告宣言が、廊下に木霊する。その光景に僕は盛大なため息をついたのであった……。


続きが気になった方ブックマーク並びに感想ご指摘など宜しくお願いします^_^

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