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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第八章 それは長いかもしれない
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伝わらないかもしれない

 それから僕達は何事もなく行事を終える。希空ちゃんとは結局その後何も話すこともなくそのまま終わった。

 結局僕は彼女に何もしてあげれなかったのだ。ただ状況を引っ掻き回しただけで、なんの問題の解決にもなっていない。きっと林間学校を終え1週間がたった2週間が経った今でも虐めを受けているんだろうな。なんて自分の家でベッドで横になりながら思っていた。


『そんなもの信じられない……。私にはずっと現れなかったし、これからもきっとないわ』


 僕は仰向けになって今も僕を照らす照明を眺めながら希空ちゃんが最後に言った言葉を思い出す。

 僕はその言葉に対して何も答えられなかったんだよな……。その気持ちは僕には理解が出来た、というかずっと僕もそう思って生きてきたから。だから希空ちゃんの言葉を完全には否定できなくて……。


「どうしたらいいんだろうな?」


 僕がそう呟いたと同時にスマホからメロディが流れた。

 こんな日中から誰だろうと思いディスプレイを見ると、『山岸奏』と書かれていた。僕はすぐさま通話ボタンを押す。


「もしもし」


 僕がそう言うと


『集君、こんにちは。今大丈夫かな?』


 と控えめな声で言う奏さん。奏さんの声は聞いていて凄く落ち着けた。


「うん。いいけど……今日は学校休みだけどどうしたの?」


 今日は平日なのだが、山龍高校の創立日という事でウチの高校はその日は休日とする決まりになっていた。


『うん、あのね。これから山龍小学校に行ってみない?』


 僕はその言葉に息を呑む。


「ど、どうして?」


 これ以上僕達ができることなんて何もない。何かをすれば希空ちゃんの状況を悪くするだけだ。それなら何もしない方が良いに……。


『私のやろうとしてる事は偽善で坂巻さ……、希空ちゃんにとっては有難迷惑かもしれない。それでもっ』


 奏さんはそこまで言ってから1拍置く。


『それでも、私は伝えたい。きっと希空ちゃんの事を助けようって思って動いてくれる人がいるはずだよってっ!!』


「伝わんないかもしれないよ」


『うん。確かに伝わらないかもしれない。でも何もしないで諦めたくないっ!!』


 あぁ、そうだった。奏さんはいつだって諦めが悪くて、助けたいって思う人がいたらいつだって全力で……。そんな彼女だから僕は。


「分かった。じゃあ山龍小学校の前に15時に集合。それでいいかな?」


『うん、分かった。それじゃまたね』


 そう言って奏さんは電話を切った。

 まさか、ここに来て僕が彼女の事を好きな理由を思い知るなんてな……。だからこそ僕は奏さんのする事を全力で支援したい。それが例え良い方向に進む事じゃなかったとしても。僕はベッドから起き上がり、身支度を整える事にした――。

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