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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第八章 それは長いかもしれない
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たった2文字

 結局その日はそのまま夜を迎え、僕達はテントで寝ることになった……んだけど。


「……何これ?」


 訳が分からない。テントには最高3人、いや詰めれば4人入るはずなのに。


「……集君、どうしてそんな離れてるの?」


 なんで……なんで僕と奏さんが一緒のテントなんだよっ!?


「美紗ねえっ!!」


 僕はテントの出入り口から外に顔を出して大声で美紗ねえの事を呼ぶ。


「そんなに叫ばなくても聞こえてるわよ」


 澄ました顔で僕の元へと来る美紗ねえ。


「これどういうことだよ? 奏さんと……若い男女2人きりとか、教師がそんなことしていいのかよ?」


 いや色々あるじゃないですか? この年頃の男女に間違いが起きたら責任取れないでしょう?


「集ちゃん。集ちゃんだけじゃないよ」


 そう言って、美紗ねえは隣のテントを指差す。僕がそちらに目を向けると歩と万丈の姿。


「全員男女ペアだ。まぁ、冴島だけは1人だけどね」


 それを聞いて僕は項垂れる。いいなぁ、僕と冴島さん変わりたいな……っていうか


「それなら、僕と冴島さんをチェンジしてくださいよっ!?」


「断るっ!!」


 即答っ!? いやどう考えてもおかしいよねっ!?


「集ちゃん、最近山岸さんと仲あまり良くなさそうだからこれを機に仲直りしてね」


「あっ、美紗ねえっ!?」


 美紗ねえはそれだけ言うと去っていく。おそらく、昼間言ってた山龍小学校の教師との話があるんだろう事がガニ股歩きから察した。  


「…………」


 さてどうしよう? 奏さんとはまだギクシャク……というか、僕が一方的に空回りしてる。奏さんの事が好きだと分かってから、自分の気持ちにどう向き合えばいいのか……全く分からないっ。


「……ごめんね」


 不意に奏さんがそんな事を言う。え? ごめんねってどういうこと?


「本当は皐月が良かったんでしょ?」


 えっ、なんでそこで万丈が出てくるのっ!?


「あの、何言ってるの?」


 僕はそう問いかけるけど奏さんは僕から顔を背けて何も答えてくれない。


「私もう寝るねっ、おやすみなさい」


 そう言って、奏さんは布団を顔に被る。

 僕はそんな奏さんを見つめながら考える。きっと今こう言ったのは僕の中途半端な態度が原因で……なんだよな、きっと。でもどうしたらいいのか……全く分からない。っていうかこの流れ2回目っ!!

 でも自分がどうしたいのか、それが全く見えてこない。付き合いたい? それともこのまま友達のままでいたい? だめだ全く分からない。


「……どうしたらいいんだよ?」


 僕は奏さんに聞こえないように小声でそう呟く。

 多分怖いんだろうな。僕が奏さんに抱いてる気持ちが恋心だとして、それを伝えて今までの関係が壊れる事に。

 実際、彼女が僕の事を好いている確証はない。というか、こんな僕の事を友達と思ってくれても恋愛感情までは抱いていないと思う。僕なんかに告白されても……嬉しいはずがない。


「すぅ……すぅ……」


 布団を被った奏さんから規則正しい寝息が聞こえる。僕は彼女の寝ている布団の傍に寄る。


「……好き」


 その言葉を口にして僕の身体全体が熱くなるのを感じた。たったの2文字でこうなっちゃうなんてな。僕は乾いた笑い声を立てる。


「今日はもう寝るか……おやすみなさい、奏さん」


 僕は布団を被っている奏さんに向けそう言うと、身体を布団の上に横たわらせ目を瞑る。だけど奏さんの寝息を聞いてなかなか寝付けず、眠ったのは大分時間が経ってからだった――。

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