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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第七章 オレの王子様なんだって
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こ、怖くなんかねぇよっ

「さぁ皆っ、クジを引いてね」


 奏さんは笑顔でクジの入った四角い入れ物を皆に差し出してくる。僕等はそれぞれクジを引いていく。


「1番か」

 

 僕がそう呟くと


「ホントかっ!? ならオレと一緒だなっ!!」


 と楽しそうに万丈が言う。

 内訳は次のようになった。1番は僕と万丈、2番は天道と本城さん。最後に3番は奏さん、冴島さん、歩。4番目に蓮君と木下さん。これで全グループだ。


「行く順番も番号通りってことなのかな?」


 僕が奏さんにそう聞くと


「うん。……そうだよ」


 と彼女が答える。

 なんだろう? 凄い元気がない様に見えるけど。


「よし……な、なら行こう、じゃねぇかっ」


 ちょっと待て。

 普通に無理してますよね。僕はそう思ったけど先を歩く万丈に黙って付いていく。

 奏さんの話では僕達がスタートした10分後に2番目のグループが出発する段取りになっている。


「なぁ」


 僕はスタートしてから足がガクガクと震えている万丈に声を掛ける。森林の中では蝉の鳴き声が辺りに響き渡る。


「な、なんだよ……。ビビってんのか?」


「いやそれ完全にお前だよねっ!!」


 こんな時まで強がっている万丈に呆れる。


「苦手ならちゃんと断っとけば良かったのに」


「んなこと、出来ねえよ……」


 寂しそうな声で言う万丈。


「だって友達との大切な思い出になるんだからよ」


「…………」


 言われてみれば確かにそうだ。

 今まで皆とご飯を食べに行ったことはあるけど、こうして皆でどこかに泊まるということはした事なかったな。


「そうか。それなら皆と出来るだけ一緒にいたいって思うな」


「だ、だろ?」


「だからって怖いの苦手なのに参加する必要はないだろ」


 僕が呆れながら言うと


「こ、怖くなんかねぇよっ」


 あれ?

 今目の前で身体全体ガクガクと震えているように見えるけど、まだ怖がってないって強がってる。


「はぁ。分かったよ、ならとっとと終わらせよう」


 僕はそう言って彼女を追い越してどんどん先へと歩き出す。


「ちょっ、ちょっと待てよ」


 慌てた様子で万丈が声を上げる。


「なんだよ?」


 僕はその声に万丈の方を振り向かないまま立ち止まる。


「いやその、少しくらい……オレにペース合わせてくれても良いんじゃないかな〜って」


 控えめに言ってくる万丈。怖いからなるべく歩調合わせてくれって素直に言えばいいのに。僕は万丈を振り返る。


「怖くないんだろ?」


 僕は小馬鹿にするような声音で万丈に言う。


「うっ、そうなんだけど……。分かった!! 怖いからどんどん先に行くのやめてくださいっ!!」


 ギュッと強く目を瞑って顔の前で両手を合わせ懇願してくる万丈。瞑った目から薄く涙が溢れる。こうしてると普通の女の子にしか見えないな。


「分かったよ。ほら」


 僕はそう言って彼女に手を差し出す。


「……これは」


 目を開けた万丈が僕の差し出した手を見て戸惑う。


「こうすれば怖くないだろ?」


 僕は彼女の手を取って説明する。


「あ、ああっ」


 その様を暫く呆然と眺めていた万丈。そしてニッコリと笑って頷く。


「よーしっ。じゃあとっとと行こうぜっ!!」


 そう言って歩き出す万丈を見て僕は笑う。

 全く調子が良い奴だな……。僕はそう思いながら祠に向けて森林の中を歩いていく――。

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