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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第六章 これから変われるよ
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俺は馬鹿だな

「全くよ……、俺がまさか集君の事を取調室で事情聴取する日が来るなんてな」


 呆れ顔で渡辺さんが言う。

 僕は今渡辺さんが勤務している山龍警察署の取調室にいる。


「僕は別に何もしてないですよ」


 悪い事はね。今後する気なんて一切無いし。


「まぁ君がそんな事をするような子には見えねぇからそこは心配してねぇけどさ……」


 ニッコリと微笑む渡辺さん。


「じゃあもう1度確認だ。集君……。君は川崎蓮君と2人で木下雫さんの家に向かってる途中で、叫び声が聞こえて駆けつけたらそこに包丁を片手に持っている櫻井智子がいた。そうだな?」


 僕はその言葉に頷く。すると渡辺さんは険しい顔をする。


「実はな……櫻井智子の身体からコカインが検出された」


「コカイン……ですか?」


 聞いた事がある名前だった。危険薬物の1種で確か使えば気分が高まるとか。そしておそらくそれの出所がなんとなく分かった。


烏鷺帆炉珠(ウロボロス)、ですか?」


 その言葉を聞いて渡辺さんは驚いた顔をする。


「なんだ知ってたのか?」


「そこの族長と絡みがあったもので」


「集君……君は意外と大物かも知れねぇな」


 大物ってなんだよ大物って……。

 僕としてはそういうアウトローな人達と関わり合いになりたくないんだけど。


「そういえば君と『ゼロ』の総長……。東堂歩は幼馴染なんだってな?」


 スッと目を細めながら渡辺さんは言う。僕はその言葉に目を伏せる。そういえばあの時僕は渡辺さんにこの事を打ち明けていなかったっけ?


「すいません。確証がなかったので話せませんでした」


「まぁ良いさ。アイツはもう総長でもなんでもない。ただの一般人なんだからな」


 僕は渡辺さんとの取り調べを終えて警察署を出る。

 そして僕はその日は家に帰って眠った。翌日学校にいつもより早く着く。まだ誰もいない……早く着きすぎたな。僕はそう思いながら教室に行くと

 

「身体大丈夫か……雫?」


「え、えぇ」


 教室から声が聞こえ中を見ると蓮君と木下さんがいた。

 僕は扉越しに彼等を見る。


「そうか……。俺は馬鹿だな。今回の事も中学の時も、もっと早くに行動してれば未然に防げたかも知れないのに」


「蓮、ちゃん?」


 蓮君は木下さんに頭を下げる。


「俺ある人に言われたんだ。()()()()()()()()()()()()って……。だからごめんなさいっ!!」


 謝罪の言葉に木下さんは目を大きく見開く。


「あの時俺は選択を間違えた。俺が離れれば虐めは終わるってそう思ってお前から離れちまった。その後虐めが激しくなる様を見て、俺は自分が許せなかった。もう俺は雫の幼馴染でいる資格はないって勝手に思い込むようになってた……」


「蓮ちゃん……。わ、私はね……蓮ちゃんがいれば、虐めなんて苦じゃなかったっ」


 木下さんの頬にポロポロと目から涙が零れる。


「俺はっ……」


 蓮君の声が教室の中で響く。

 その声は僕に向けてではなく、今目の前にいる少女……木下雫に向けられたものだ。


「俺は……中学の頃自分が虐められたくなくて逃げた……。だけどっ」


 男はそこで言葉を区切ると木下さんの前まで歩み寄り、片方の肩に手を置く。


「だけど……今度はもう逃げない……逃げたくないっ!!」


 木下さんはその言葉に目を見開きながら


「ど、どうして……?」


「それは……」


 蓮君は木下さんの言葉に目を伏せる。

 僕はそんな蓮君を見守る。

 そして覚悟を決めたのか伏せていた目を上げると……。


「俺はお前が……木下雫のことが好きだからだよっ!!」


 僕はその言葉を聞いていて恥ずかしくなる。

 他人の告白って見てるだけでもこんなに恥ずかしいものなの?

 木下さんの顔を見るとイチゴみたいに真っ赤に顔を染めている。


「だから今度こそ俺は雫から離れないっ!! お前が辛い時、俺がその辛さを少しでもいい……、俺に背負わせてくれ」


 蓮君の言葉に涙を流しながら笑顔で頷く木下さん。

 僕はその光景を見てこれで2人はもう大丈夫だ……と、微笑ましい気持ちで眺めていた――。

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