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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第六章 これから変われるよ
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綺麗な花をありがとう

 午前中の授業を終え昼休み。

 僕は奏さんのいる方へ目を向ける。

 彼女は冴島さんと楽しそうに会話をしていた。

 話しかけに行こうと席を立とうとする僕の前に1人の女生徒が前に立つ。


「櫻井、智子……」


 そう、このクラスになって僕に目を付けてる女生徒だ。勘違いしちゃいけない。異性としてではなく虐めの標的としてだ。


「なにアーシの事……、呼び捨てにしてんだよ」


 アーシって……。

 自分の事そう言ってる人初めて見たよ。

 ……でもそうだな。


「確かに……。いきなり馴れ馴れしすぎた。ごめん」


 僕はそう言って頭を下げる。頭を上げて彼女を見るとポカンと口を開けた状態で固まっている。


「あ、そういえば……」


 僕は、後ろのロッカーに置かれているシクラメンが入っている花瓶に目を向ける。


「あの花、僕の机に置いたのは櫻井さん?」


「……だったら何よ?」


 僕は彼女に笑いかけながら


「綺麗な花をありがとう」


 その言葉を聞いた櫻井さんは悔しそうな顔で僕を見る。


「皮肉のつもり? まぁ良いわ。次は容赦しないから」


 そう言うと彼女は自分の群れの元へと帰っていく。

 あちゃ~、逆に油を注いじゃったかな?

 こういう態度を取ってヤバイ奴だと認識させて関わるのを止めさせる計画が一気にパーだ。


 櫻井さん率いるグループがケラケラと笑いながら木下さんを見ている。これは2択だろうな。

 1つは彼女の事をバカにして笑ってる。それだけなら問題ない。

 もう1つの方は彼女を虐める方法を考えて笑ってる。

 どうも見た感じ後者の方に思えてならない。

 まぁ今の僕には関わりがあまり無いから関係ないと言えば関係ないんだが……。

 

『……僕は黒崎集。これから1年間……宜しく』


 関わりは今あまりないけど彼女……木下雫は僕にとって友達だ。

 仕方ない、これからアイツ等の動向には常に気を配っておくか。


「集〜っ、一緒に飯食おうぜ?」


 気付くと万丈がクラスに入ってきて僕に抱きついていた。

 僕の顔が急激に熱を帯びていく。


「あれ? なんか顔赤くね?」


 僕は指摘されて顔を俯かせる。


「えっ……なんでそこで顔伏せんだよ? ちょっと……反応に困っちまうな」


 万丈が頭をポリポリと掻きながら照れくさそうにしている。

 暫くそんな甘い空気が流れているとガタンッと大きな音が立つ。

 音のした方へ目を向けると奏さんが立ち上がっていた。どうやら今の音は彼女が勢い良く立ち上がった時に生じたものらしい。

 奏さんは怒ったような瞳で僕の方へ一瞥をくれた後、教室から出ていく。


「ごめん万丈っ!! 僕行かなきゃいけないトコがあるからっ!!」


 僕は座席から立ち上がる。


「あっ、おいっ!!」


 呼び止めようとする万丈の声を無視して僕は奏さんの後を追いかける。


「……あ、集」


 教室の入口で歩とすれ違う。


「ごめん歩っ……僕急いでるからっ!!」


 そう言って、僕は走っている奏さんを見つけて後を追う。

 なんて言ったらいいか分からない。

 でもこのままじゃ駄目だっ。いつもの明るくて優しい奏さんでいてほしい。


 僕はそう思いながら彼女の後を追いかけていった――。

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