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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第六章 これから変われるよ
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ドラマみたいな人生を

 かつての親友……東堂歩と仲直りを果たしてから1週間が経った今日。僕は困っていた。

 あれから僕は学校に通わずに自宅で療養生活を送っていた。お陰様で僕は悠々自適に過ごせた。

 でも今日から学校で奏さんと顔を合わせなきゃいけない。僕まだ1週間前のお礼も、謝罪もなにも言ってない……まずいよなこれは。僕がそう思いながら学校の玄関を歩いていると……。


「集、はよっ」


 僕は後ろから聞こえた声に驚く。

 振り向くとそこには万丈がいた。


「あ、うん……。おはよう」


 僕は彼女から目を逸らして素っ気なく言う。……無論嫌いとかではなく、恥ずかしさからだ。


『んなのっ、お前の事が好きだからだろうがっ!!』


 渡辺さんにそう言われて、万丈の事を意識しないなんて無理だよ〜。


「…………」


 万丈が暫く僕の顔を見た後口を開く。

 

「オレ……なんかした?」


 寂しそうな顔を浮かべながら万丈が言う。

 僕はその顔を見てチクリと胸が痛むのを感じる。


「えっ……なっ、何もしてないよっ。あ、ごめん。僕もう行くねっ」


 僕は逃げるようにその場から立ち去る。

 ただでさえ奏さんとどう接すれば良いのか分からないので頭が一杯なのに、万丈との間もギクシャクするとか……。


「本当最近誰かが僕にドラマみたいな人生を歩ませたいのかな……」


 と、廊下を歩きながら一人そうぼやく。こんな事を言ったって始まらないか。

 僕は奏さんとどう向き合うべきか考えながら教室へと向かった――。


 教室に着き僕は扉を開ける。

 すると、さっきまでうるさかった教室が一瞬で静まり皆の視線が僕へと集中する。

 去年と全く同じだなと心のなかで落胆する。僕は皆の奇異の視線を受け流しながら自分の席へと向かう。


「……?」


 眼の前の光景に疑問を抱く僕。

 僕が座っていたであろう席……それの机の上に一輪の花が活けられている花瓶が置かれていた。

 このピンク色の花でハート型の葉……確かシクラメン、だったか?


 周りの人間がクスクスと笑い出す。

 僕はそれだけでなんとなく状況を察する。

 あぁ、これ虐めね。もっともこんなの小学生が思い付くようないたずらレベルとしか思わないけど。


 僕は机に置いてある花瓶を両手に抱えるように持つと、後ろに置かれているロッカーの上に持っていく。すると僕から近くの出入り口がガララッと音を立てた。

 音のした方へ目を向けると僕は固まる。奏さんだったからだ。その後ろに冴島さんもいる。奏さんは僕を冷たい眼差しで見つめた後、何事もなかったかのように目を逸し自分の席へと歩いていく。


 嘘……。

 いつもは奏さんの方から挨拶してくるのにそれすらないだとっ。

 冴島さんが僕の前へやって来てジト目で見つめてくる。


「な、何……冴島さん?」


 僕がそう問いかけると彼女が無言で僕の膝を思い切り蹴ってきた。


「……っ!!」


 声にならない声を上げながら僕は蹴られた箇所を抱えながらその場に膝をつく。


「……私言ったわよね?」


 いつもの無機質ではなく背筋の凍るような冷たい声音を聞いて僕は顔を恐る恐る上げる。彼女の冷酷さを感じさせる瞳が僕を貫く。


「奏の事を傷付けたり泣かしたりしたら許さないって?」


 た、確かに言ってました〜っ。

 

「それはその……ごめんなさい」


 謝る僕に深い溜息を零す冴島さん。


「まぁ良いわ。貴方にも色々有ったみたいだから。とっとと謝って仲直りをしなさい。あんな態度を取ってるけど、ずっと貴方の事心配してたんだから」


「凛っ!!」


 奏さんが冴島さんの名前を叫ぶ。

 冴島さんは奏さんの方を見て


「今行くわっ!!」

 

 と口にする。


「早いとこ仲直りをしてね」


 冴島さんはそう告げて奏さんの方へ去っていく。

 仲直り……か。でもあんな態度をしてる人にどう接すれば良いんだ?

 僕はその事で頭を悩ませながら自分の席へと戻っていく――。

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