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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第五章 僕の過去
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このゼロの総長を辞めるっ!!

「…ぅ……ん?」


いつの間にか僕は眠っていたらしい。

目を開けるとさっきまで戦っていたコンテナ広場だった。風が時折吹いて心地が良い……イタッ!!

僕は、身体を起こす。

さっき身体に受けたダメージが身体全体に駆け巡る。よく生きてられたな僕……相当痛い。


「集っ!!」


「ぐあぁっ!!」


背後から万丈の声が聞こえたと思ったら、勢いよく抱きつかれる。万丈……少しは優しくしてほしい。


「あっ、悪ぃ……」


僕が痛がってることに気付いたのか慌てて離れる万丈。彼女のシュンとした態度になる。


「いや、あの……別に気にしてないよ」


僕は万丈の潤んだ瞳から目を逸らす。


『んなのっ、お前の事が好きだからだろうがっ!!』


やばい……。

渡辺さんに言われた事をまた意識してる。


「ん? どうしたんだよ集」


顔を近付けてくる万丈。

どこか潮らしさを感じる今の彼女から、ほんの少し……いやかなり艶っぽい。


「だ、大丈夫だよっ!!」


僕はそう言って痛いのを堪えて無理矢理立ち上がる。そして、横を見ると……。


「……東堂」


横では僕と殴り合った東堂歩が気を失っていた。


「集……コイツが起きたらどうするつもりだ?」


天道がのびている東堂の仲間を一人一人縛り上げながら僕に聞く。

僕は眠っている東堂の顔を見る。

その顔はかつて僕に見せていた穏やかな顔をしていた。


「万丈もこうして戻ってきたから僕は、このまま……」


「何事もなく帰る……か」


僕は天道の言葉に頷く。

元々万丈を助けるつもりで来たんだ。

もう目的は果たした。


「でも、報復に来るかもしれないぞ?」


報復……か。

確かに考えられる事だ。

でもだからって。


「僕には東堂達を警察に突き出す事は出来ないよ」


彼等の一生を左右するような事を僕には選択出来ない。

願うことなら……。


「……その……うぅ……必要は……ねぇ」


隣から声がしたので見ると、横になったまま薄目を開けている東堂。


「必要がねぇってどういう事だ?」


天道が問いかける。


「……おい、お前らっ!!」


東堂が叫ぶ。

すると倒れていた男共が次々と目を覚ましていく。


「俺は……っ……そこにいる、男に喧嘩でっ負けたっ!!」


身体が所々痛むのだろう。

時折苦悶の表情を浮かべ、それでも我慢して叫ぶ。


「よって……俺は……このゼロの総長を辞めるっ!!」


東堂の言葉に男達の間でざわめきが起こる。

その中の一人が身じろぎしながら


「兄貴っ!! それなら……これからのゼロは誰が引っ張っていくスカッ!?」


目に涙を溜めながら男は堂々に訴えかける。


森本もりもと……。これからはお前が引っ張っていけ。お前にだったら、安心して……っ。任せられる、から」


森本と呼ばれた男が目を見開く。


「本気……なんスカ?」


「あぁ。この喧嘩で……勝っても負けても……俺は、辞めるつもりだった」


「そんな……どうしてそんな事言うんスカっ!?」


荒々しい態度で問いかける森本。


「俺はさ……、ずっと求めてたんだよ。心から……信頼できる……仲間を。だけど、気付いたら金と権力ばかりを考える……そんな奴等の、溜まり場になっちまった。だから……辞めるんだ。よって、報復とかそんな事を考えんじゃねぇぞっ」


僕は東堂の言葉に驚く。

東堂も僕と同じ事を思ってたのか。

僕は無関心を気取って周りから自分を守っていた。

でも東堂は周りに反抗することによって自分の居場所を確立させた。だから僕と東堂は違う。……そう思っていたのに。


「……これからはよ。テメェ等でっ、ゼロを盛り上げていけやっ!!」


「「「「「うおおぉぉぉぉっっっっ!!!!」」」」」


東堂の言葉に男達は一斉に泣き出す。

その光景に僕は驚くと同時に東堂がどれだけ、『ゼロ』の中で大事にされていたかがよく分かった。


「さて……、これで良いだろ?」


東堂は天道の事を見つめる。


「ま、俺達に危害が及ばないならそれでいい」


天道は首を竦めながら答える。

東堂はそれに頷くと


「集……悪ぃんだが……っ、起こして……くれねえか?」


僕は東堂を抱き起こす。


「東堂……今『集』って」


僕は昔呼ばれていた呼び方について触れる。


「なんだよ? 別におかしくねえだろ? さっきまで喧嘩してたけど、こっからは俺達……親友だろ?」


そう言って東堂は拳を突き出す。


「東堂……」


「東堂じゃねぇ……。昔みたいに下の名前で読んでくれや。なんだったら呼び捨てでいいからよ」


「なら……歩」


「おうっ」


僕がそう呼ぶと歩は太陽のように輝く笑顔を僕に向ける。

こうして僕達は、10年以上の喧嘩を終え仲直りを果たしたんだ――。

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