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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第五章 僕の過去
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僕は間違えたんだ

 あの騒動の後、僕達は個々で事情聴取が行われた。

 万丈は傷が酷かったので、保健室に運ばれその場で事情聴取を受けてるらしい。

 ちなみに僕は職員室で事情聴取を受けている。


「全く……二年生になった初日で問題を起こすなんてね」


「……すいませんでした」


 僕の事情聴取を担当している、美紗ねえに頭を下げる。


「本当にもう……。それで何があったの?」


「……実は」


 僕はここまでの出来事を美紗ねえに話す。


「そう……、小学校時代の知り合いが」


「うん」


 僕は美紗ねえの言葉に頷く。


「……大丈夫? もし辛いんだったら」 


「……大丈夫」 


 僕は美紗ねえの言葉に首を横に振りながら答える。


「そう。でも気をつけてね。……じゃあ話はここまで」


 事情聴取を終え、僕は職員室を出る。


「……あ、やっと終わったの?」


 声のした方へ顔を向けると奏さんを筆頭に天道、本城さん、冴島さん、木下さんが立っていた。


「皆……待ってたの?」


「親友をおいて行ける訳ないだろう」


 天道が爽やかに言う。


「それにさ〜、アイツの事知ってるぽかったし」


「訳を話してくれないかしら?」


 本城さんと冴島さんが僕に問いかける。


「そ、そのっ……わた、わたしはぶ、部外者だから……よく、知らないけど……話したら、楽に、なると、思うよ」


 しどろもどろに木下さんが言う。


「集君、どんなに辛い話だったとしても……私は受け止めるよ」


 奏さんの笑顔を見て僕は覚悟を固める。


「……僕の昔話なんだけどね」


◆◆◆◆◆

 

 これは5歳の時の話だ。

 僕はある日目を覚ますとそこは見覚えのない天井が広がっていた。

 ここはどこ? と思い身体を動かそうとするけど、動かない。

 誰かいないの? って声を出そうとするけど声も全く出ない。


 僕は目を必死で動かす。

 そこには当時5歳の僕では分からない、医療機器がズラリと並んでいた。  

 よくよく見たら自分の両方の鼻の穴に管が繋がれている。


 僕はどうしてここにいるの? と思いながら視線を周りに向けているとドアの開く音か聞こえる。

 僕は音がした方へ目を向けると、驚いた表情を浮かべる母さんと父さんがいた。


「やっと、目覚めたのね……集……良かった、良かったぁ!!」


 母さんが泣きながらまだ動けずにいる僕の身体を抱きしめる。

 僕は訳が分からずに戸惑って、父さんと母さんを交互に見る。


 数日が経って僕は検査を受ける為に診察室に連れて行かれた。

 

「初めまして。私は君の主治医の内藤(ないとう)だよ」


 当時僕の主治医を務めてくれた内藤さん。

 この人に僕は色んな事を教えられた。


 まず僕が何故この病院に運ばれる事になったのかについて教えてくれた。

 僕は道路近くの歩道で、遊んでいる所を車で轢かれたらしい。

 車の運転手は20代の若い女性で携帯をしながら運転していた為、僕に気が付かなかったらしい。

 

 その交通事故で僕は身体の神経が麻痺を起こし、右半身付随それから神経麻痺からくる両目の視力低下という症状に見舞われた。


 大体の事情を聞かされた後、僕はリハビリの毎日を過ごした。

 神経が麻痺してるからといって全部が全部駄目というわけではなく、リハビリを続けた結果……日常生活に差し障りのない程度にまで、半年をかけて回復させる事に成功した。


 リハビリ中一番辛かったこと言えば排泄行為だ。

 指一本動かす事も出来なかった最初の頃は尿瓶など意味がなく、僕は入院生活の殆どをオムツで生活した事を今でも覚えている。


 リハビリを成功させて普通通りに生活出来るようになった僕。

 おかしな所があるとすれば歩く時右足を引きずるようにする事と

 常に姿勢が右肩下がりだっていうこと。

 それと普通の人より力が出ないという事くらい。


 半年間の入院を終え僕は通っていた保育園へとまた通い始めた。

 

「みんな、集君が帰ってきましたよ〜。皆これまで通り仲良くねっ」


 先生がそう告げてから再び始まった保育園生活。

 だけど、3週間もしない内にある一人の男の子の言葉で以前のような生活が送れなくなってしまう。


「集さ……歩き方気持ち悪いよ」


 子供特有の悪意のない何気ない一言。

 だけどそれは裏を返せば遠慮というものを知らないということ。

 当時の僕の心を傷付けるには十分すぎた。


 そこからだ。

 僕の生活が狂い始めたのは……。


 一人がそう言ってから周りの子供も面白がって僕の事を歩き方が気持ち悪いと言って笑っていた。

 中には僕の事を、()()()……()()()()……()()()()()とか言って馬鹿にする者もいた。


 言葉の意味を理解していたかは知らない。

 いやきっと親から聞いた言葉をただ使ってみたかったんだと思う。

 それが子供というものなんだと思う。


 僕はそんな揶揄を受けながら保育園を卒園した。

 そして僕は小学生に上がる。小学生に上がった僕は周りから煙たがられて、孤立していた。


 このまま僕は孤立するのかなって思っていた……そんな時

 

「……集、だよな。俺と一緒に遊んでくれない?」


 彼、藤堂歩が声を掛けてきたんだ。

 始めの頃は話してて楽しかった。いつの間にか下の名前で呼び合えるくらい親しくなっていた。こんな時間がずっと続いてほしいとそう願っていた。


 だけど、そんな思いとは裏腹に藤堂歩はクラスの中で虐めの対象として見られるようになっていった。

 最初の内は、物を隠されたりと言ったまだ可愛らしいレベルだった。だけど、日を追うごとにその虐めはエスカレートしていった。


 物を隠すのではなく、例えば教科書などはビリビリに破かれ、藤堂さんの食べるご飯の中に昆虫を入れられたり、トイレで個室で籠もっているときに上から水をぶっ掛けたりと、やる事なす事酷かった。


「歩……大丈夫?」


 僕は藤堂さんが心配で声を掛ける。


「……あぁ、大丈夫だよ」


 笑顔で答える藤堂さん。だけど、その笑顔はどこか引き攣っているように感じられた。


 僕はこの時間違えたんだ……選択を。

 僕と関わるから藤堂さんが虐められる、なら僕が関わらなければ彼が虐めの標的にされることはないと、幼い僕はそう考えていた。


 ある時、藤堂さんがクラスの皆に叫んだ。


『イヤだっ……なんで皆、イジメるんだよっ!?』


 もう、耐えられなかったんだろうなと思った。

 日を追うごとにエスカレートしていく虐め。その時には陰口、面と向かっての悪口などもされていた。


 彼が叫んだというのに皆何事もなかったかのように、無視している。彼はクラス全員のそんな態度を見て落胆する。

 僕はそんな彼に一言も話しかけようとしなかった。下手に話しかけそれを見た別の人間が囃子立てた上で、更なる虐めの種にされたら困ると思っての事だった。


 数日後朝学活を迎えた時のことだ。


「あー、いきなりだが藤堂が転校した」

  

 あまりに突然の事で思考が止まる。

 暫くして思考が回りだした時僕を襲ったのは、途轍もない後悔だった。


 ……なんであの時声を掛けなかったんだ?

 もっと一緒に行動するべきだっただろう?

 その他に様々な後悔の念が僕の頭を擡げる。


◆◆◆◆


「それから僕はあまり人と関わらないようにしてきたんだ……」


 話し終えるとその場にいた全員が押黙る。

 どう反応したらいいか困るよな……。

 僕は奏さんに目を向ける。彼女も全員と同じで困っているだろうと思ったから。


「……っ」


 僕は彼女を見て驚く。

 だって、彼女は声も出さずに泣いていたから……。

 自分の事であるかのように。


「そんな重い事を抱えて、生きてきたんだね……」


 そう言うと奏さんは僕の近くまで来て抱き着いてくる。


「今まで辛かったね……苦しかったね」


 僕の頬に冷たくも温かい液体が僕の頬に触れる。

 僕は彼女の顔を見る。彼女の両目からポロポロと涙が流れていた。


 僕はそんな彼女の顔を見ながら、話して良かったなと感じるのだった――。

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