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山本くん。

作者: 宇木空

平凡だけどなぜかあたたかくなる毎日を。

山本くんはそつなくふつうである。


教室で良くある休み時間。

他愛もない事を話しながらも目立つグループ、読書や自分なりに過ごすマイペースな個人。

趣味やお互いのおススメを持ち込み話し合う地味なグループ。


山本くんは基本どこにも属さず、どこのグループの話にもひょこっと入れる不思議な人である。


山本ー、この問題教えてー。ノート見せてー。


いわゆるリア充枠から声がかかる。

読んでた本から顔を上げて

ノートは不可。当てて答えられなかったら見せたやつごとマイナスだから嫌だ。

少しだったら教えてやるから。


地味枠からも声がかかる。


山本ー。俺たちもー。


マイペース組からも声がかかる。

山本ー。俺もー。

あ、俺もー。

・・・私もー。


お前ら授業ちゃんと聞けー!!!


普通すぎて皆から声をかけられる。

普通に真面目なので授業もきちんと聞き、ノートもきちんととる。

宿題もするし、たまに予習もする。


ゆるくていじめもないこのクラスでは、いじられる訳でもなく非常に重宝されている。


そんな山本くんは、上に姉がいるため、女性にも普通に慣れている。


ゴミ当番の女の子には

重そうだから自分が行くよ。


日直の黒板消しの子には

上の方、自分が消すよ。


これは優しいと言うよりも、か弱い女性に対する気遣いが足りないと家の女性陣から叩き込まれたただの条件反射である。


女子への過度な期待もないため、思春期男子にありがちな女子に興味ないふりをする、思ったことと正反対のことをすると言った子供じみた言動がない。そのため学校の女子からも好感度高めである。

恋愛好感度に到達していないところも山本くんの通常運転である。


授業中

山本、この答えは。

宿題の答えもバッチリ。

山本、すまんがこの教材一緒に運んでくれないか。

廊下での道すがら、話題は あの校庭に咲いてる葉っぱ食べられるらしいですよ、マジか的な話である。

嫌な顔せずに対応する山本くんは先生陣からも信頼されている。

睡魔に襲われても山本くんなら三回に二回は見逃されるくらいに。

全部黙認でないのが山本くんスペックだ。


山本くん、運動もそつなくできる。

が、対抗では別に取り合いにもならない。

足を引っ張らず、なんでもこなす。

たまにいいところにいてパスやレシーブで歓声を独り占めする。

たまにいいことがある山本くんである。


そんな山本くん、外見にこだわりもないため、若干ボサボサ。

背は少し高めだが少し猫背気味なのでそこまで高く見えない。

だが姉のおかげか不潔な感じはなく、匂いもむしろ若干良い匂いがする。

きっと姉のシャンプーを無造作に使っているせいだろう。


放課後

山本どっか寄ってこうぜー。

リア充グループから声がかかる。


姉達のおかげで今はやりのカフェ、美味しいところを意外とおさえている山本くん。

カラオケに行っても大体の曲がわかる、そこそこ上手く歌える。

女性と慣れてるだけあって相槌や話が聞き上手なため、なにかと誘ってしまうのだ。


それは趣味グループも同じ。

男性のエロい本にももちろん対応し、敷居が高い少女漫画も男性が読みやすい本をさらっと教えてくれる。

腐女子がまじってもなんのその。理解はしてないけど姉がこれを読んでいたと勧めた本は、校内腐女子グループに、夜も眠れなくなるほどの嵐のような感動と興奮を読んだ。18禁寄りだったらしい。


いつの時代もエロというものは知らなかった者たちを飲み込み、奔流となって次のステージへと押し流す。


山本くん誘いに出遅れた趣味グループは、山本くんのオススメを聞くために明日こそ本屋に誘ってお茶でもしようと息巻いている。お茶の時間は講評とエロ談義である。

男女どちらでも対応できるのが人気の秘訣である。

山本くんがいると自然と男女グループになるのである。

少年マンガのおすすめや少女漫画の名作、若干18禁の漫画のやりとりまでグループの知識は蜘蛛の巣のように着実に広がっている。


ちなみに腐女子の最近のおすすめはでBANANA FISHで、裏ブームは絶愛である。

前者は男性陣には究極の友情だと認識され、女性陣には江戸時代に原点を置くかのような精神愛の最高峰と絶賛されている。違いは見る側が腐っているかどうかである。

後者は山本くんの姉の宝物であるため、貸出不可だったが、最近婦女子による田中くん姉についていき隊が、お姉さまの勧める本に間違いはない!とネットや古本屋をめぐり手に入れた一品である。

衝撃たるや況や。


男子のおすすめはHUNTER×HUNTER、裏ブームは異種族レビュアーズである。

前者は作品談義の途中で、作者の容態心配へと移り変わる考えさせられる一冊だ。

後者は高校生には敷居が高く、また本屋独自の初回限定特典をゲットするために、健全な男子高校生は成人している兄に頼った模様。 メロンブックスへおつかいに行かされた兄は世界が広がったようだ。

山本くんも、順番が回ってくるのを実は心待ちにしている。


部活には入っていないため、寄り道をしたり友人と遊んだりして帰宅。

年金暮らしのおばあちゃんと、公務員の母、自営業の父、姉2人の6人家族である。


ゆるふわな感じの姉と隙がなそうなかっちりとした姉。

共通点は腐った目を持つことである。


母は公務員をしているため、情報がたまにとんでもない。

よく効くブレスレットのお店、当たる占い、病休を取った職員の話にパワハラ話。

母曰く、パワハラを受けないようにする技術が細かいのだと。姉が最近熱心に聞き始めた。

闇を感じる職業である。


父は自営業のためあまり話すことがないのか、ただただ聞いている。

父が話すときは 人の保証人には絶対になるなという重いお言葉である。

何があったんだろう。


基本的に賑やかな団欒を終え、ゲームをしたり読書をしたり、お風呂に入って自室に戻る。

宿題は大まか授業中に終わってるので少しだけ足りない部分を補えばノルマも終了である。

スマホを見ながらメールやラインがないことに寂しさを覚えて就寝である。


山本くんのとある一日はこうして終わる。


ちなみにちょこちょこ入れてるエピソードはまあまあ実話です。

どれが実話なのかは内緒。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話の流れがスムーズで内容もシンプルにまとまっていて面白かったです。日常から話を膨らませて、日常をここまで面白く書けるのはすごいと思いました。 [気になる点] 田中くん、がよくわかりませんで…
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