整理:今回の実験について
「どうして・・・。どうして・・・。」
女生徒が嘆いている。その女生徒は体が透けており、この世のものでない事が分かる。無限に広がる闇の中で女生徒はただ嘆いている。訳の分からないまま連れてこられ、憎しみを増強され、消された。女生徒はそれが何よりも嫌だった。自分は玩具の様に利用されたのだ。生前と同じように。
「何よ。ワタシが何をしたのよ・・・。あいつの言う通りにしたじゃない。」
女生徒は涙を流す。
【ご苦労。お前は良くやってくれた。】
声が聞こえる。と言うより、文書が流れ込んでくるような感じだった。女生徒はそれに声を荒らげる。
「アンタの言う通りにしたわよ!なのになんで!」
女生徒は怒りと悲しみが混ざった声を出す。
「なんで知らない場所で、知らない奴を憎まなきゃいけないのよ!」
女生徒は続ける。
「アンタ言ったわよね!?復讐させてやるって!お前を苦しめた奴を全員地獄に送ろうって!でもここはどこよ!アイツらは誰よ!それにアンタも!なんであんなことを!」
【五月蝿い。どうでも良いだろう。】
冷たくその声は響く。本当に文書のように平坦に響く。
「ウルサイ!?アナタふざけるのも大概に・・・!」
暗闇でただ叫ぶ女生徒。それを何かが掴む。無数の手。白く何十という手が女生徒を拘束する。
「ヒィ!何よコレ!?イヤ!離して!」
もがいてもその拘束は揺るがない。
「イヤ!何よ!何するつもり!?」
女生徒の言葉に声は答える。
【何って。地獄だろ。】
その答えに女生徒は叫ぶ。
「地獄!?なんで!?ワタシが!?ワタシは何もしてないじゃない!!アンタの言う通りにしただけよ!?」
手は増えていき女生徒を更なる闇へ引きづり込む。声はそれに対して事実を告げる。
【怨霊が天国に行けると思うなよ。】
その事実に女生徒は絶望し、叫びを上げながら闇へ飲まれて消えた。狐狗狸に消された魂の鱗片がこの場所に留まっていたのだが、それも完全にこの世から無くなったのだ。声はそれには興味は無いようだ。
【あと片付けと。次の準備と。それから・・・。】
声は慈しむように言葉を発した。
【彼女への報告を。】
闇は闇に。再び静かな世界へと変わった。