仮定都市伝説:降霊術による神霊または低級霊の憑依
6限の終わりを告げるチャイムが鳴る。帰りのSHRを終え、生徒はそれぞれの行動をする。
「部活行こうぜー!」
「この曲良いよな!」
「神原ちゃん!ここの問題分からないです!」
「僕、先生なのにちゃん呼びなの?」
「先生だからちゃん呼びなの!」
「人狼やろー!ねー!」
「いや僕が面倒くさくなるからさっさと帰って欲しいんだけど?」
しかし、しばらくだべったりスマホをいじっていれば多くの生徒は少しづつ教室を離れ始め、最後に残ったのは俺と先生のみだった。そしてその先生も
「二身?まだ残るのか?」
「はい。えーと・・・待ち合わせで。」
「待ち合わせ?・・・ふーん。いいねぇ青春だねぇ。」
とニヤニヤしながら教室を出ていった。・・・青春ならどれだけ良かったことか。残念ながら、これは青春とは程遠いだろう。どの学校に、自分を殺しかけた自分を待つやつがいるんだ・・・。教室に入るってくる陽の光はまだ明るい。今日は、人が居なくなるのが早かったらしい。
しかし放課後、一人で残る教室はこんなにも寂しいものなのか・・・。なんて考えていると不意に教室の扉が開く。そこに立っていたのは長い黒い髪、青い瞳に女子の制服を着た、「影」であった。
「さぁ。二人きりの放課後青春の時間だ。」
「帰って良いですか?」
「駄目だ。俺達の青春はこれからだ。」
一応聞いてみたが駄目なようだ。影は手に紙を持っており、教室に誰もいないのを確認した後、扉を閉めこちらに近づいてくる。そして俺の席の机に丸まった紙を置き、俺の前の席に腰掛ける。俺は椅子に、影は机に座っている状態だ。・・・。
「どうした。何か言いたい事でもあるのか?」
「下着見えそうだぞ。」
「・・・そんなんだからモテないんだよ。」
机から影は立ち上がる。顔は恥ずかしいというより見下しているようだ。というか確実に見下している。そして表情で「お前も立て」と言っている。しょうがないので立つ。こうして俺と影が机を挟んで向かい合う形になって、ようやく影は紙を広げる。そこに書かれていたのは、鳥居、はい、いいえ、五十音に数字。「コックリさん」を呼びたすための紙だ。いつの間に準備していたのだろうか?
「今からやるのか?『コックリさん』が出るのは夜らしいが。」
「夜なんてのは、奴らのテリトリーもいいところだ。それに、ほかの時間にやったらどうなるか気になるしな。」
「・・・もうすぐ黄昏時何だが、それももやばくないか?」
「・・・そん時はそん時だ。」
影は丸まった紙が戻らないように、四隅にお守りを置く。消しゴムと、筆箱。どちらも一対ずつあるが、片方は俺のもので片方は影のものなのだろう。しかし、消しゴムは欠け方が、筆箱は着いてる傷の場所が同じである。影は紙の鳥居の位置を指で叩くと、俺に視線を向けてくる。・・・どうやら、「10円玉はお前が出せ。」ということらしい。仕方なく、財布から10円玉を取り出し、置く。これで、準備は整った。ただ、俺には気になる事が1つある。
「ところで、正しいやり方は知ってるのか?」
影は俺の方をじっと見て、答える。
「あぁ。さっき調べて来た。」
この紙と共に調べて来たから、教室の外から来たのだろう。影は、10円玉に一足先に指を置く。
「覚悟ができたら、指を置け。それ以降は俺が全部やる。」
・・・。正直、覚悟は決まらないし決まることも無いだろう。この後、何が起こるか全く予想出来ないのだ。昏睡状態という話を聞いた以上、直ぐに置こうという気にはならない。・・・悩んでいても仕方が無い。だから、指を10円玉に置く。
「・・・やるぞ。」
「・・・あぁ。」
影は一呼吸置き。呪文を唱え始める。
こっくりさん。こっくりさん。
どうぞおいでください。
もしおいでになられましたら「はい」へお進みください。
時間にして、数十秒程度だろうが、ゆっくりと感じられた。冷や汗が垂れる。もうすぐ「コックリさん」が来る。と、10円玉が揺れる。震える。・・・嘘だろ・・・。来るのか?凶悪な奴が。影も10円玉を抑えている左手とは逆の右手で、ナイフを構えている。10円玉が輝く。・・・来る・・・!
誰ぞ?誰ぞ?我を呼ぶのは。
誰ぞ?誰ぞ?我を喚ぶのは。
俺達が挟んでいる机。長い辺の方にお互い立っているが、その机の短い方。誰が立っている。いつの間に?いやそんなの関係無いのだろう。影も、緊張しているのか、ナイフを握る手に力が入るのが分かる。二人で、ゆっくりと立っているヒトの方を見る。・・・立っているのでは無かった。浮いている。足は地面から離れており、草履と和服が見える。下半身の周りには、所々炎が飛んでいる。ゆっくりと上に視線を進める。・・・金色の髪をした男が立っている。男は顔を紙で隠しており、髪には「狐」と書かれている。そして、紙を抑えるように、狐の面が顔に引っ付いている。全体的に、金色というか、オレンジというか、そんな色の和服だ。男の目は見えないはずなのに、俺達二人を睨め付けているのが分かる。そして、男が声を出す。
『・・・二人。10円玉。儀式紙。・・・。』
男の声は空気を伝わるというより、脳に直接流れていくるようだった。1人で考え事をしている時のように、頭に浮かんで来るような。・・・こいつが・・・『コックリさん』。次の言葉次第で、直ぐにナイフを突き立てれるように、影は準備をしている。心臓が鳴る。冷や汗が垂れる。そして、男は話を続ける。ごくん。と唾をのみ、次の言葉に耳を傾ける。
『・・・お、ちゃんと用意してるー。呪文も完璧だったし、練習したのかな?最近の若い子は偉いねー。昔なんか適当にやる子いっぱい居たのにね。はいはい。「はーい。」来ましたよー。』
男が指先を10円玉に向けて伸ばすと、10円玉がまた揺れる。そして男が指先を「はい」に向けると、10円玉が「はい」に動く。・・・なんか想像してたのと違う。男の方を見ていると、男は俺の視線に気づいたのか、俺をじっと見る。いや、顔が見えないから、見られているような気がするだけのはずだが、確実にこっちを見ているが分かる。そして男は自分の指を口に近づけ、
『視えちゃう子?あー、ごめんね?パニックになるかもしれないけど、しーってしてて。もう一人が怖がっちゃうからねー。』
しーってしてる。・・・なんか想像してたのと違う。そして今度は男は影の方を見る。そして驚いた様子で、声を出す。
『あれ!?君も視えてるの?ありゃー、二人とも視えてるとか凄いねー。霊感強い子ってこういうの嫌がるじゃんねー?』
影と二人で顔を見合う。思考を共有しているわけで無いが、何となく何を思ってるのか分かる。・・・想像してたのと違う。どう見ても「怒っている」という感じでは無い。むしろ、近所のオッサンもいいところだ。
『二人とも視えてるなら、10円玉動かさなくても良いよねー。これ実は凄く面倒くさくてさー。一文字事に文字の上に動かすの凄い大変なんだよね。まぁ良いや。質問は何かな?』
コックリさんはふわふわと俺達の周りを飛んでいる。影はポカンとした顔をしていたが、頭を振り冷静さを持ち直す。
「えーと。あなたがコックリさん?」
『ん?そうそう。私は「狐狗狸さん」だよー。初めましてー。』
今のも質問としての受けられたのか、10円玉が「はい」に動く。面倒くさいと言う割には動かすのか。
「・・・。ありがとうございます。鳥居の・・・。」
『あー、いいよ別に。いちいち鳥居に戻らなくたって。視えて聴こえるなら、その10円玉を通す必要無いからね。その媒体方法面倒くさくてねー。次の質問は男の子の方どうぞー。』
・・・やる気ないなこのコックリさん。影はこっちの方を見て、質問してみろという目をしている。
「・・・えーと。なんの質問をしても答える事が出来るんですか?」
『うーん。難しいなー。ある程度分かるけど、分からないことは分からないね。「あの子の好きな子は?」って問われたら、ちょっと調べれば分かる。けど「今後の地球はどうなるか?」って問われても、未来視は管轄じゃないので分かりませーん。って言うしかないね。』
役所仕事かよ。神にも管轄とかあるのか。しかも10円玉は「はい」と「いいえ」を行ったり来たりしてる。コックリさんは相変わらずふわふわと周り飛んでは、壁に貼ってある掲示物に目を通す。時折独り言のように、「最近はこんなことやるのかー」と声を出している。答えが片手間である。10円玉も鳥居の位置に戻った。
ふと影の方を見てみると、力が抜けた手に再び力を込めている。本題に取り掛かるつもりなのだろう。・・・どうして俺達以外には、最初から怒っているのかを。
「・・・どうして、俺達以外には最初から怒っているんだ?」
コックリさんはふと俺達の周りを飛び回るのを辞めた。掲示板を見るのをやめて召喚された時と、同じ位置に戻る。コックリさんは不思議そうに声を出す。
『怒っている?僕は最近呼び出されたことは無いよ?』
コックリさんの声のトーンから、素顔は見えないものの本音らしき事が分かる。しかし、影は続ける。
「だったらなんで、夜の学校に召喚された時、他の生徒を昏睡状態にした?」
『・・・?何それ?どういうこと?詳しく聞かせて欲しいんだけど。』
影は話を始めた。コックリさんが最初から怒っていることと、それによって昏睡状態になった生徒がいることを。コックリさんはその話を黙って聞いていたが、影が話終わると口を開く。
『・・・それって私じゃ無いな。呼ばれたのも数年ぶりだったし。』
どうやら知らないようだが、影はコックリさんを睨め付ける。シラをきっていると思っているのだろう。
「ここまでやっておいて、知らぬ存ぜぬで通せると思うか?」
ナイフをコックリさんに向ける。片方の手が10円玉に置いてあるため、間抜けな感じではあるが。しかし、コックリさんはそれを見て低く高圧的な声で告げる。
『・・・何?人間如きが、私に逆らう気か?』
ゾッとする。寒気を感じる。まずい。そんなことを感じる。影もそれに怖気付いているようで、真っ直ぐ構えていたナイフを持つ手の肘がちょっと曲がっている。これが、コックリさんの怒るということなのか。しかし、コックリさんは直ぐに声を和らげる。
『嘘嘘。冗談だよー。怒るってはこういうのだよー。』
「・・・じゃあ、何故コックリさんの噂が流れる?」
影はまだ少し声に勢いが無い。直接言われた訳では無い俺が凄く怖かったのだから、直接言われたら相応の恐怖があるだろう。
『んー・・・。それは分からないけど、「狐狗狸さん」が媒体にしやすかったとかじゃないかなー?』
「媒体?」
コックリさんは空中で逆さになる。足を天井に頭を地面に向ける。逆さになっているのに顔の紙は垂れない。
『そう。「狐狗狸さん」を媒体にして何かをしようとしているんじゃないかなー。そうだな例えば・・・』
コックリさんは指を俺達二人が指を置く10円玉に向ける。
『複数の人がいればできるもので、何かを造ったり、集めたり。』
「コックリさんで?」
影の質問にコックリさんは首を傾ける。
『まー、狐狗狸さんである必要はないだろうねー。偶然か、思いつきか、たまたま目に入ったのか・・・』
コックリさんは体を逆さにし、最初の状態に戻る。浮いてはいるものの、俺達と頭が向いている方向は同じ天井になった。コックリさんはその状態で手のひらを上に向けて、俺達の前に出してくる。そこには、コックリさんの周りには浮かぶものと同じ炎浮かび上がる。それは空中に舞い上がり、コックリさんの周りを飛ぶ炎に混ざっていく。空中に飛ぶと直ぐに次の炎が出るを繰り返し、炎がどんどん増えていく。
『「今後も似たような事をするから、何でも良かった」のか。』
炎が最初に出ていたもの二倍程になった時、コックリさんは炎を出すのを止めた。つまり、これは誰かによって仕掛けられたもの?今後も他の生徒が巻き込まれる可能性があるのか?何故そんなことを?そして何より・・・
「誰がやったか分かるか?」
そう。誰がやったかだ。影の質問に対しコックリさんは「ちょっと待っててね」と告げ、手を飛んでいる炎の1つにかざす。それは一瞬消え、直ぐに同じ場所に出てくる。
『んー・・・。駄目だ。調べたけど分からない。これは面倒だな。10円玉を依代にしてるとは言え、私でも分からないって事は相手は大分やり手だろうね。』
今ので調べてきたのだろう。結果を告げるとコックリさん頭をかく。しかし、直ぐに続ける。
『でも、「狐狗狸さんもどき」が何なのかは分かったよ。』
「その正体は?」
影の質問が続く。ナイフを持つ手に力を込め直している。もうコックリさんの方に向けはいないが。
『「低級霊」だろうね。』
「低級霊?」
コックリさんの言ったものに思わず、疑問が口からでる。低級霊とは?
『そう。低級霊。そこら辺に浮かんでて、特に何をする訳でもないものの事・・・のはず。』
「はず?」
コックリさんはどうやら困っているようだ。また頭をかき、続ける。
『それが低級霊にしては何か想いが強いんだよね。これじゃあ低級霊というより、「怨霊」もいいところだ。でも本質は低級霊。』
「・・・コックリさんに低級霊が宿るのか?」
影に質問され、コックリさんは答える。
『え?うん。運がよろしくないなら宿っちゃうだろうね。・・・ていうか君達、「狐狗狸さん」が何なのか分かってる?』
・・・影の方を見る。影もこっちを見ている。・・・俺も知らないし、影も知らないようだ。二人とも知らないことを察したのか、コックリさんは説明を始める。
コックリさん・・・もとい『狐狗狸さん』。主に狐に関する何かが憑く事をいう。それは御使いだったり小さな分霊だったり。たまに暇つぶしのために狐の神本体が宿ることもあるという。今回宿った狐狗狸さんも神であるそうだ。狐狗狸さん自体は「契約」を守っている間は特に何もしないそうだが、契約違反・・・10円玉から指を離したりすると相応の罰を与える。ここまでが狐狗狸さんの基本。ただ、問題は必ずしも狐狗狸さんとしての来るのが狐の神や御使いとは限らない。低級霊ならまだしも、怨霊が憑いた時には命の危険もあるらしい。今回の事件は低級霊だろう。しかし・・・
『何者かが、個人的な契約を交わして、使役している。それに加え、それを低級霊から怨霊に進化しかけている。』
狐狗狸さんは説明を終えると、三度頭をかく。
「怨霊に進化するとどうなる?」
『まぁ、死人が出てくるだろうね。』
そんなに重大な事件だったのか。俺はただ自分の未来を普通に戻そうとしただけなのに。余計なことに頭を突っ込んでしまったようだ。俺には関係ないことではあるが、霊がやった事に警察が介入できるわけなど無い。これをやったやつは今後も自分にとって、面白おかしく生きるのだろう。この事件を知るのは俺達のみという訳だ。
「何とかできないのか?」
「何とかできないんですか?」
影と声が重なる。流石ドッベルゲンガーというだけあり、考える事は一緒のようだ。俺には関係ないが、この話を聞いてしまったら無視する訳にもいかないだろう。無視しても、後々後悔することになるだろうし。狐狗狸さんはポカンとした感じの間の後、
『・・・ぷっ・・・はははははははははははは!!自分とは関係ないのにどうにかしたいだって?愚かだねー!人間って愚かだー!』
と爆笑した。周りを飛んでいる炎・・・狐火も動きを早くする。
『そうやって君達は余計なことに首突っ込んで皆死んで行くんだよー!ははははははは!!愚か愚か!!』
爆笑している狐狗狸さんに対し二人で顔を見合わせる。そんなに愚かだろうか?どうにかしたいと思ってしまったのはしょうがない。どうにかしたいのだから。
『はははははは!!・・・そして私達神はそんな人間が大好きだ。』
狐狗狸さんは一通り笑ったあと、俺達に告げる。声のトーンがさっき軽く影を威嚇した時のようだ。
『愚かな人間って嗤っても、私達神はそれを助ける。だって君達は最高にかっこいい。前に進むその意思が。新しいものを知ろうとする好奇心が。困難に立ち向かうその姿勢が。』
狐狗狸さんは愛おしげに告げる。まるで我が子に話しかけるように。
『いいよ。やろうじゃないか。愚か者に愚か者が立ち向かおうじゃないか。』
「・・・えーと、盛り上がっているところ悪いが、どうやって?」
影の質問に狐狗狸さんは返す。
『ニセモノが現れたら私を呼べ。そして言うんだ。「ニセモノを連れて来い」って。そしたら、契約によってニセモノを縛れる。』
狐狗狸さんは地面に足を付け、堂々と答える。ふわふわと浮いて、適当に答えていたものから「契約」を通したものに変わったのだろう。ここに俺達の契約ができたのだ。狐狗狸さん・・・神との契約をするのは初めてだし、すると思ったことは無かった。けど、言葉に上手く表せないが、神聖な気分だった。
『さて、他に質問は?』
狐狗狸さんはこちらを交互に見る。ニセモノ狩りに対する事なのだろうが、実はさっきの狐狗狸さんの説明から気になることがある。
「ニセモノ狩り以外のことでも良いですか?」
『もちろん。シリアスなのは疲れるからね。何を聞く?クラスの子の好きな子とか聞いちゃう?』
狐狗狸さんが再びふわふわと飛ぶ。適当モードに戻ったのだろう。切り替えの早い神だな。
「・・・俺達って狐狗狸さんのルール的にどうなんですか?」
『・・・ん?何が?』
・・・俺と影は本体とドッベルゲンガー、言わば同一人物だ。狐狗狸さんは一人でやってはいけない。そう考えると俺達のやってることはルール違反なのではないか?狐狗狸さんは俺の方を見て声を上げる。
『・・・あれ?君達なんで魂一つ分なの?』
「・・・気づいて無かったのか・・・。」
『・・・ん!?あれ!?何これ肉体二つに魂一つ!?逆は見たことあるけどこれ何?人間なのに?うわぁ・・・気持ちわるー・・・。』
「失礼だな。」
狐狗狸さんは俺達二人の顔を交互に見ている。体の奥まで見透かされているようで心地よいものでは無い。あと気持ちわるって・・・。狐狗狸さんはしばらく俺達二人の顔を交互に見たあと、顎に手を当て考えている。数十秒考えた後こう告げる。
『あー・・・。んー・・・。まぁ良いか。』
「良いのかよ。」
良いのかよ。適当だな。
『そもそも「一人でやるな」ってのは取り憑かれた時に直ぐに助けてもらうためだしー。魂一つじゃ駄目だなんてルールないしー。というかそんな前例ないしー。ていうか、君達何者?』
「ドッベルゲンガー。」
影が答える。狐狗狸さんに質問されるってのもなんか珍しいような気がするが。狐狗狸さんはそれに対し驚いた声を上げる。
『ドッベルゲンガー・・・?ドッベルゲンガー・・・。自分という恐怖!?嘘!?なんで性別違うの?』
知らないよ・・・。こっちが聞きたいよそれは。狐狗狸さんは狐火に手を伸ばして調べようとする。が、狐火は消えることなく、少し揺らいだだけだった。それを見た狐狗狸さんは声のトーンを少し下げて言う。
『・・・。君達、気をつけなよ?君達はもう巻き込まれてる。』
「・・・何にですか?」
『・・・分からない。けど、君達はいつか確実にそいつに出会う。または合っているのかもしれないが。調べようにしても何かに拒否されている。本気で調べるべきなんだろうけど・・・。』
狐狗狸さんは神だと言っていた。さっきの説明で、近くの神社に住んでいると。それにも分からないというのか。少し気が滅入る。だが、
「でも、その前にニセモノ狩りですよね?」
俺はその前にやることができた。それが終わってから、影のことは考えよう。
『・・・。君がそれで良いなら。』
狐狗狸さんは頷く。見えない顔が笑っているような気がした。
『それじゃあまた会おう。』
影が帰りの呪文を唱え、狐狗狸さんは消える。
教室の外は明るかったのに、大分赤くなってきている。もうすぐ夜だ。影は指のストレッチをしている。俺も指を10円玉に置き続け、大分指が疲れている。影が道具の片付けをしていると、鼻歌と共に、教室の扉が開く。
「ふふふーふーふん。ふふふーふーふん。ふふふーふ・・・うぉう!?二身まだ残ってたの?」
入ってきたのは担任の神原先生だった。
「あれ?・・・。お前達仲直りしたのか?」
そういば、影を屋上で止めたの神原先生だったな。影は投げられたのをまだ根に持っているのか、先生を睨め付ける。
「・・・何だその目。」
「・・・いえ。ただおr・・・私達二人きりの青春を邪魔されたので。」
「えー・・・。それはごめんだけど、せめて家でやりなさいよ・・・。」
そう言うと、神原先生は教壇の机に向かう。そして教団の机の引き出しに手を突っ込んで何かを探している。忘れ物だろうか?
「というか君達これ以上ここに居ると、『コックリさん』的なそれで相応の処罰を与えるよ?」
それはまずい。ニセモノ退治の前に先生に退治されるのはゴメンだ。捜し物をを終わったらしい先生と共に(ちゃんと出ていくようにと先生が勝手に後ろに着いてきのだが)、昇降口まで行き見送られる。しばらく先生は見送ったあと、職員室の方へ向かって行った。
しばらく歩いた後、影が先生がいた方向を見る。
「どうした?」
「・・・・・・いやなんでもない。」
・・・?まぁどうでもいい事なのだろう。
俺達は先生に帰されてしまったので、一度時間を空けて出直すことにした。
もうすぐ完全に夜になる。
闘いが始まる。