仮定都市伝説:ドッペルゲンガーの外見の変化 または身体部品の変化
高等学校。義務教育の範囲をこえた教育機関。この時点で人生が決まってしまう可能性もある恐ろしい場所。
欠席も最小限にしないと進路にかかわる。
だが、残念ながらもっと恐ろしいものを体験してしまっている俺からしたら、全力で休みたいものだ。
「・・・どうした二身。幽霊でもみたか?死にそうな顔してるぞ。」
「似たようなものです・・・」
「夜更かしもそこそこにしないと本当に幽霊に出会っちまうぞ。」
担任のからかいもいつものなら笑えることも今は笑えない。
そうとう顔がひどいのだろう。なにせ昨日は眠ることができていない。だって怖いもん。
いきなり知らない少女が家にいたら、興奮とか期待の前に恐怖がわいてくるだろう。
それが夢ですめばいいのだが、あんなリアルなもの夢といわないと思う。
鐘の音が鳴る。四限目まできていたようだ。こんなにも授業に集中できないとは驚きだ。
昼飯の時間のため教室を抜け出す。階段を上がり屋上を目指す。
この高校は珍しく屋上が開放されている。が人はいない。日差しが強く暑いので誰もよりつかない。
屋上の階段の影に腰掛け、コンビニのパンをむさぼる。
だれもいない屋上の日陰は風が気持ちいい。まるで昨日のことをすべて忘れたかのような気持ちになる。
やっぱり昨日のことは悪い夢なのだろう。そういえば昨日は実況動画を見ていたような気がする。
ホラーゲームの。それが夢に出てきたのだろう。
「いや。俺が見てたのはホラーじゃなかったな。アクション物だった。」
誰もいないはずだった。俺だけのはずだった。少女の声など聞こえるはずなどなかった。
「ごきげんよう。俺。昨日の夜ぶりだな?」
黒く長い髪。青い瞳。加え、この高校の「女子」の制服を着ている。ドッペルゲンガーと名乗った少女が。
「今までどこにいた!?」
「お前と一緒にいたよ。わからなかったのか?」
少女はパンにかぶりつく。俺が食べていたパンと同じものに。
「お前は何がしたいんだ!?」
「昨日から質問ばかりだな。なんで俺が答えてばかりなんだ?お前は俺だろうに。」
一口、また一口とパンを食べパンは無くなってしまう。口が止まった俺とは違いパクパクと。
「それが一番わからない!ドッペルゲンガーてのはどうゆうことだ!姿形が違うだろう?お前も昨日そう言ってたじゃないか!」
「そうそう、言ってたな。だが事実だ。俺はドッペルだし、お前も俺の本体だ。それだけは分かる。」
「じゃあなんで姿が違うんだ!?」
「それは分からない。神の大いなる目的のためとかじゃないのか?俺に聞かれても分からないこともあるんだ。全てのお前の疑問には答えられんさ。」
少女は立ち上がる。そして、日陰から出て行く。振り返り、座ったままの俺を見下ろす。
嘲るような、死ぬ運命の動物でも見るような目で。
「・・・だが、答えよう。さっきの何がしたいかという質問に。なに、簡単なことだ。」
太陽の光を浴びている俺と、影に隠れた俺。ドッペルゲンガーと出会った者の末路。
死ぬ運命の動物が本当に彼女の瞳に映っているのだろう。その青い瞳に。
何時からだろうか?彼女が持っていた、食べ終わり捨てられるはずだった、パンの袋がナイフに変わっていたのは。
「俺は一人でいいだろう?」
よけれたのが不思議だった。ナイフが顔の横にある。
少女の細い腕でもナイフが壁に刺さるものなんだな、なんて気楽なことを考えてしまう。
そして思い出す。自分が殺されかけていることを。逃げなきゃなと。
立ち上がり走り出す。階段へ。だがすぐに行き先をふさがれる。それはそうだろう。少女のほうが階段に近いのだから。こういう時、助けを求める声はなぜでないんだ。たすけてくれ。だれでもいい。神でも何でも。
「刺殺は嫌か?じゃあ撲殺か?絞殺か?毒殺に銃殺か?」
壁にささったナイフは消え、またいつのまにか少女の手にはロープがにぎられている。
死ぬのか?おれは?嫌だ。
嫌だ。嫌だ。ここで、俺じゃ無い俺に殺されるのは嫌だ。
「銃殺は音が大きいしな。毒殺は苦しむ姿が汚い。絞殺は時間がかかる。撲殺は私の手が痛い。やはり刺殺だな。」
ロープはナイフに変わっていた。もはや逃げることはできない。このまま俺は死ぬのかと諦めてしまった。・・・諦めかけていた。
・・・そのとき、声が聞こえた。
「こらー。なにやってんだ。屋上で暴れるなよー。封鎖されたいのか?」
担任教師が立っていた。・・・担任の神原先生が。少女の後ろに。少女から攻撃に対して集中していたからか、階段を上がる音に気づかなかったらしい。
「おいおい。僕たち先生はねぇ?君たちを信用しているからこそ屋上を開放しているのであってだねぇ?喧嘩のためではないのだよねぇ?」
先生は少女に近づく。少女の肩に手を置くと、少女は担任を睨みつける。不服そうに、怒りを抑えるように、少女は口を開く。
「・・・邪魔しないでいただけます?先生。」
「いやぁねぇ。さすがに喧嘩するのは見逃せないね。僕先生だから。」
「・・・喧嘩じゃないですよ。じゃれてただけです。」
「ひと夏のランデブーにはちと早いでしょうよ?大人しく先生の言うこと聞いてくれないかな。今回は見逃すからさ。」
先生は少女の前に出て、そのままこちらを見ている。少女に背中を向けこちらに話しかける。
「二身くん。今日はもう帰りな?目が疲れてる。帰っても寝たほうがいい。ゆっくりと休みなさい。」
その時だった、ナイフの光が見えた。少女はナイフで先生に襲い掛かる。背中を向けた先生に。
危ないという声が出ない。少女はどうやら先生を殺すつもりらしい。
だが、先生は少女を投げ飛ばした。背中に目でもあるかのように。
投げ飛ばされた少女は地面に打ち付けられ、痛みにあえぐ。そういば、この先生は格闘技をやっていたというような話を聞いたことがある。
「女性を背後から襲うなんて関心しないな。男だったらもう一発入れてやるとこだけどね。」
少女の持っていた、地面に落ちているナイフに近づき先生はナイフを拾いあげる。
「暴れたいなら次は僕がやろうか?終わった後に体罰とか言わないならだけど。」
少女は寝たまま先生の目を睨む。そしてしばらくして視線をはずした。勝てないと思ったのだろう、あきらめたくちぶりで喋る。
「・・・いえ。ごめんなさい。私が悪かったです。今後このようなことはいたしません。」
「謝るのは僕じゃなくて二身くんだろう?」
少女は俺のほうを睨み、不服そうにぼやく。
「・・・・・・・・・ごめん・・・・・・・・・」
「よーし。謝り方にちょっと疑問が残るがいいだろう。先生との約束だ。喧嘩してもいいけど二度と物騒なことするなよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いいね?」
少女の足側に立ち、先生は手を差し伸べる。その手に触れることなく、少女は立ち上がる。先生を無視して、階段に向かおうとしているのだろう。だが、階段に向かおうとする少女の手を先生はつかんだ。
「いいね?」
先生の声は深く、突き刺さるような気がした。
「・・・はい。」
「よーし行っていいぞ。」
先生は少女の腕を開放して、少女に対して手を振った。少女は改めて階段に向かう。
階段前に着くと、少女は俺の方を見て(睨みつけて)階段をおりた。
読みづらい文、分かりづらい文多々あります。申し訳ないです。
読んでくださりありがたいです。