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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

乙女ゲームの悪役メイドに転生しちゃった!?自由な傭兵目指してがんばりますっ☆

作者: 鳥越ぽくら

なんとなく思いついたネタです。連載するかもしれないししないかもしれない。

感想とか評価とかもらえると狂喜乱舞します。文章についても講評していただけると嬉しいです。糧になります。

よくある話だ。


とある貴族の当主の息子が、使用人の女性と関係を持ち、女の赤ん坊まで作ってしまった。

貴族の当主である親はその事実が発覚することを恐れ、その女児を囲い込んだ。

女児がある程度成長し、使用人として働けるようになると、その子の父親であり貴族の当主となっていた息子が、正妻との間にもうけた自分の娘の専属メイドとして働かせた。


ここまでは、実によくある話だ。


よくある話でなくなるのは、ここから。


その子供には、前世の記憶があった。その記憶の中では、不運な妾の子として生まれたこの世界の知識を、“ゲーム”の中のものとして持っていた。


本来、彼女という登場人物は、その“ゲーム”の中で自分が妾の子であることを盾に当主を脅し、“ゲーム”の主人公である病弱な当主の娘をいじめ抜くという、所謂ヒールだ。


“ゲーム”は、当主の娘はそのいじめに耐え、病魔と戦いながら学園で生活し、貴族の子息や王子と出会って幸せな家庭を築くことを目指すというストーリーに仕立てられていた。


だが、“ロベリア”として、悪役のメイドとして転生したはずの彼女は、“ゲーム”の知識を活かし、何よりも自分が自由に生きることを目指すのだった。




◇◆◇◆◇




「ロベリアお姉様・・・本当に良かったですわ」

「ありがとう、デイジー。私も本当に嬉しいわ」


“ゲーム”の中ではロベリアにいじめられる運命の主人公であるはずのデイジーは、ロベリアと非常に仲がいい。


いじめるなどとんでもない、デイジーは非常に気立てのよい賢い娘であり、“ロベリア”は彼女を非常に可愛がり、病弱な体質を少しでも改善できるよう協力を惜しまなかった。

最初はメイドとして接していたが、デイジーはロベリアが母の違う姉であることを知ると、妾の子であることなど全く気にせず、更に懐いた。

そして、その持ち前の頭脳を活かし、ロベリアが実の父親に対して訴えを起こすことまで手伝ったのだ。


その訴えとは、ロベリアをロベリア・カレンデュラスとして認めさせること。

ロベリアは表向きはただのメイドであり、カレンデュラス伯爵家のアクレイグ・カレンデュラスの娘であることは隠されていた。

それを暴き、法術審査というどんな小さな嘘でも見破る方法を用いてまでロベリアが実の娘であることをアクレイグに認めさせたのだ。


「嬉しいですわ、これでロベリアお姉様のことを隠さなくてすむのですね!」

「でも、あまり言いふらさないほうがいいんじゃないかしら。私は妾の子よ?」

「そんなこと関係ありませんわ!ロベリアお姉様は、私にはもったいないくらい素敵な人なのですから、隠すほうがおかしいのですわ!」

「まあ・・・ありがとう、デイジー」


“前世”ではひとりっ子だった“ロベリア”は可愛い妹からの嬉しい言葉にでれでれと頬を緩めた。

だが、ロベリアはすぐに顔を引き締め、一番聞きたかったことをデイジーに尋ねた。


「デイジー、引き継ぎのほうはどうかしら?」

「順調ですわ、大きなお屋敷はもう引き払って、使用人は半分くらい残して他は暇を出しましたの。心苦しかったですけれど・・・」

「それは正しい判断よ、デイジー。人件費は何よりも抑えるべきものだもの」

「ええ、そうですわね・・・。それと、田舎の別宅にあった美術品も、3分の1くらいは売り払いましたわ。かなり古いものもあったらしくて、それなりの値段にはなりました」

「ああ、あのよく分からない絵画や壺でしょう?本当に何だったのかしらね。どこがいいのか全然分からないわ」


デイジーは今、隠居したアクレイグの跡を継いでカレンデュラス伯爵家の当主の座についている。

なぜアクレイグが隠居したかというと、ロベリアへの借金を返すために(・・・・・・・・)そうせざるを得なかったのだ。


フローリス王国には傭兵制度というものがあり、ロベリアが利用したのもこれだ。

と言っても、貴族の家に仕える使用人の多くは傭兵派遣事務所、通称派遣所に登録している。他の貴族に借り出される時に傭兵として手続きをしたり、街の外へ出る時の身分証明書として傭兵証明書を利用している者が多い。使用人証明書というものが存在しないからでもある。


ロベリアもかなり昔から派遣所に登録しており、デイジーが寝込んでアクレイグがそれを心配して彼女にかかりきりになった時に思いついたのが、アクレイグがぞんざいに寄越す「〇〇の薬草を採取してこい」という命令を命令として捉えず、依頼として受理したのだ。ロベリアの主人はデイジーだけなのだから、アクレイグの命令を聞く理由がない。その当時はアクレイグは専属の執事であるオリーブに事務仕事を丸投げしていたのも幸いだった。


オリーブに協力を請い、依頼書の作成をしてもらい、アクレイグへの報告も任せた。結果、アクレイグは傭兵への依頼すらもオリーブに一任し、オリーブはロベリアへの依頼書にサインをした。

それを、四年間続けたのだ。その間に全く気づかなかったアクレイグは間抜けだとしか言いようがない。


恐ろしいほどの高値がつく素材を採取できるまでにロベリアは成長し、その素材を使った薬でデイジーは回復した。


そして、病気で臥せっている時も事情は聞かせていたデイジーと共にロベリアは自分を娘と認めさせるための裁判と並行して、今まで傭兵として達成した依頼の報酬をアクレイグに請求したのだ。


娘であることを認めさせる法術審査はともかく、何故カレンデュラス家から金を毟りとるような要求をしたのかというと、ロベリアが自由になるためである。

魔法があるこの世界に“ロベリア”として転生した時から抱えている望みこそが、自由に生きる、というものだった。


予想以上にロベリアは傭兵として力をつけ、どれほど難しい依頼でもこなせるようになっていき、アクレイグに請求する金額も想定外の額になったことには驚いたが、それは結果オーライである。デイジーは無事当主の座に就き、その際に肩代わりしたアクレイグの借金返済の期限を延ばすことをロベリアに認めさせた、という体になっている。


「それでも、やっぱり足りませんわ。お姉様は本当にお強いのですね・・・」

「成り行き、だけれどね。でもやっぱり、自由に身体を動かせるのはとても楽しいわ」

「・・・お姉様に、お屋敷の暮らしは似合いませんわね」

「デイジー・・・」


既にメイドではなくなったロベリアを見上げるデイジーの青紫色の瞳に寂しげな色があるのを鋭く見て取り、ロベリアはデイジーの華奢な身体を抱きしめた。


「ごめんなさい、デイジー。私がこの家から出ていくのは私の我儘よ。でも、完全に縁が切れるわけでもないし、私はこの街を拠点にして活動するつもりよ。・・・分かってくれる?」

「ええ、分かっていますわ。・・・私が、いつまでもお姉様に甘えているわけにはいかないことも、お姉様がいなくなってしまうわけではないことも」

「いい子ね、デイジー。貴女ならきっとうまくやっていけるわ。貴女の人生に、幸運を・・・」

「お姉様の新しい仕事にも、幸運を。くれぐれも、身体には気をつけてくださいね」

「もちろんよ。・・・じゃあ、また」

「ええ。また」


母の違う姉妹は名残惜しげにもう一度抱き合い、姉は屋敷の外へ、妹は中へと分かれて歩み去った。




ここから始まるのは、姉の冒険譚と、妹の奮闘記。



ロベリアは凄腕の傭兵として名を轟かせ、傭兵としては最高のランクである“玉級”へと僅か一年で駆け上がり、“瑠璃玉ラピスラズリ”の二つ名を携えて活躍する。

今はまだ彼女が前世の記憶を持っていることは誰にも知られていないが、いずれは妹に、そして旅の途中で出会う素晴らしい仲間には伝えられることだろう。

ロベリアはいざという時に帰ることができる家がある幸運に感謝しながら、自由に生きる。



デイジーは15歳という若さで天才的な商才を発揮し、斬新な商品を提供する店を立ち上げる。

先代が残した負の遺産も少しずつ返済し、生家はさらに豊かになることだろう。

デイジーはいつかきっと帰ってくる姉を心待ちにしながら、自分なりに生き方を模索し続ける。



本来なら違う形になっていたはずの異母姉妹の関係は、道が分かたれた後も、非常に良好である。


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