夢
神隠しにあった。
気が付いたら、知らない田舎のまちを車で走っていた。道路は雪だらけ。スリップしないようにブレーキをかけないで坂の上から下っていく。
脇には民家が数軒たっていて、そのうちの一つでは、顔の四角いおじさんがこちらを見て、渋い顔をした。
坂の一番下まで降りて、車が止まると、若い女性がこちらに近ずいてきた。
「こんにちは。こちらへようこそ来て下さいました。あなたは、基本的には元いた場所へ帰ることは出来ません。集落の一員としてこれから暮らすことになります。これから、よろしくお願いしますね。」
あ、そうなんだ。
不思議と、納得した。帰れなくてもなんとも思わない。むしろ、ここで暮らしていく事が当たり前だと感じていた。
「元いた場所へ、あなたがこちらで暮らしているという事を知らせるために、荷物を送ります。」
送るものは、駄菓子のセット。赤いツルツルした紙袋に入れる。
「あなたから送るには、手形が必要です。」
筆を使って、赤い塗料が左手に塗られていく。同じ赤い色でいいのか不思議に思っていると
「あとで、色が変わるので大丈夫何ですよ。」
ふーん。ナチュラルに、心を読まれていた。
「これを、座敷に置いて下さい。」
赤い手形が付いた紙袋を座敷の真ん中に置いていると、手形の部分に白や黄色の小さい丸が浮かんで来た。
「運んでくれるのは世界を渡るものです。小さく、数が集まらないといけないのですが、手形いっぱいに集まれば、荷物が運ばれます。」
荷物が消えた。これで、元いた場所へ送られたのだろう。
荷物が消えると同時に、両方の世界も、消えた。