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第二十七話 対話 

 

 「それよりも、ラスカル。いや、女神。ノブレスは外出していることだし、いろいろと聞きたいことがあるんだ。」


 「どうしようかな~。ヒロの態度しだいってところかな~。今まで随分失礼だったしぃ~。」

 

 「おい女神。人間から貢ぎ物を受け取っておいて願いを聞かないなんて、そんなこと許されるのか?」

 

「うぐっ。」

 

 神様にもいちおうのルールなりモラルなりがあるらしい。

 言うだけは言ってみるもんだね。


 「やっぱヒロは失礼だよ!何度も言っているけど、私は神だよ?貢ぎ物をくれたって言ってもさあ、それじゃあ気分悪いよ。」


 「気分が悪いのはこっちも一緒だ!手違いで殺されて、勝手に体をいじられて。それで、『美少女(笑)のお願いだし、許してね!』って、なんだよそれ。あんまりだろ。」


 「冴えない生活だったんだし、いいじゃん。こっち来てからは死霊術っていう、ステキ能力はあるし、周りは美少女だらけだし。男なんだからさあ、生まれた故郷を飛び出して、世界をまたにかけて大活躍!ぐらいの気概を持ちなって。」

 

 「世界をまたにかける」の意味が何か違うような……世界を飛び出しちゃったわけだし。

 いや、意味としては合っているのか?どっちだ?


 「おっと、だまされないぞ。死霊術はお前のギフトじゃないって、こないだ言ってたじゃないか。」


 「ヒロってさあ、いちいち細かいよね。」

 

 「そりゃあさ、神様の基準で見れば細かいことかもしれないけどさ。人間にとっては細かくないんだって。自分の体や何かに大幅な変調があって。存在すら信じていなかった幽霊と会話するようになって。いつまた元の世界に戻されるのか、戻されないのかも分からなくて。」


 わかってもらえないかもしれないけどさ。

 話しているうちに、次々と言葉が出てくる。

 あれ、俺こんなに能弁だったかな?

 そういや、アレックス様とソフィア様の前でも、行政の話がスラスラできたし……。


 「神様みたいに、いつまでも生きていられて、どの世界でも行ったり来たりできるわけじゃないんだ。『自分が存在している時間、自分が存在している場所』に縛られるのが人間なんだよ。そこから切り離されたら、不安で仕方ないんだ。『超時空』妖怪ってわけにはいかないんだよ。」


 「お、ヒロも私の偉大さをやっと認識できたようだね。感心感心。もう一声。私はほめられて伸びる子だから。」


 俺のこの発言を聞いて、どうしてこういう受け取り方になるのか。

 やっぱり神と人間では、感覚が違うんだろうなあ。

 いちいちイラついてちゃあいけないのかもしれない。

 

 「……あちこち行ったり来たり、人間の体を子供に戻したり。その能力を考えると、女神様っていうのも分かるような気はするよ。」


 「願いをかなえんがために、神に媚を売るとは邪な。本心からの信仰ではないよね、それ。」

 

 ほめろと言ったのは貴様だろうが!

 前言撤回。やっぱりこいつには腹が立つ。

 それならそれで、こちらにも考えがある。


 「おいピンク、しばらくは原稿書くの禁止な。」


 「『え~。そりゃないよ~。』と言いたいところだけど、男子が溢れるこの学園。しばらくは取材や構想、妄想に耽っていられるから、それでもいいか。」


 「分かったよ!答えればいいんでしょ!」


 

 威厳なんかまるでない。

 これで神様だ、あがめろ、なんて。それは無理だよ。

 まあともかく、今は質問だ。 



 「『調整した』『能力をつけた』って言ってたよな。『調整』ってのは、生活習慣や言語能力のすり合わせとか、体を13歳当時のものにしたとか、そういうことだと思うんだけど。『能力をつけた』ってのはどういうことだ?身体能力がやけに高くなっているんだけど、そういうこと?」


 「身体能力だけじゃないよ。……そうだね、ゲームにたとえようか。全ステータス15~20ポイントアップって言ったところかな。最大値100として。たとえば、君のイケメン度は、日本にいたときはまさにちょうど50だったんだけど、こっちでは67に当たります。」 


 歴史SLG的なアレか。政治力とか統率力とか……。

 後どうせなら、70にしてくれよ。もうひと声!

 

 「単純なRPG的能力もだよ。STRちからとかAGIすばやさとか。たぶん一番効いてくるのは成長補正だと思ったから、そこはもう少し余計に強化しておいたし。」


 「んふふふふ~。しかし、人間はゲームのキャラクターではないのだよ。そういうのだけではないんだな。」


 「魅力。コミュニケーション能力。野心。情熱。食欲性欲睡眠欲。それもアップしているのだ。草食系……というか、路傍の草だった君も、肉食系に生まれ変わっているはずだ!転生と言えばハーレム!楽しみにしてるんだから、早く愛憎劇を見せてよ。」

 

 どうりで腹が減ると思っていた。

 いくら13歳だと言っても、ここまでは食っていなかったような気がしていたんだよな。

 って、なんで俺、こんなに冷静なんだ?……って、ああそうか。


 「おい女神、理性とか冷静さとか我慢強さも20ポイントアップなんじゃないの?」


 「そうだったー!抜かったー!」


 やっぱコイツはアホだ。

 俺の「設定」に、なんか致命的なバグとかプログラミングの矛盾みたいなものはないだろうな。

 急に心配になってきた。



 「まあともかく、くれた能力ってのは、ステータスアップってことでいいんだな?」

 

 「そうだけどさあ。もっと有難がってくれてもいいんじゃない?本質的に必要な要素とは本人の技量を確実に反映できる優秀なインターフェース、並びにそれに応えられる堅牢な肉体だよ?重力下での高機動性能はもともと持っていたし、これが一番でしょ。」

 

 お前が俺の体をいじる前に何を読んでいたかがよく分かった。

 まさに神の意思……って、やかましいわこの俗物め!

 股間に隠し腕とかつけなかったことだけはほめてやる!


 次の貢ぎ物はスイカバーに決定。こっちの世界にあるかなあ。



 しかし。反発は感じるが、女神の言うことは正しいとも思う。

 20ポイント分冷静になった頭、20ポイント分上がった知力で考えてみると、良く分かる。

 尖った能力をつけてもらうよりは、全体に底上げしてもらう方が、融通が利く。

 まして伸びたステータス相互間で相乗効果シナジーが働けば、これはかなり強力だ。

 

 こっちの世界は、中世だか近世だか、ともかく日本よりは殺伐としている。

 説法師モンク浄霊師エクソシストといった人間離れした存在もいるし、悪霊もいる。

 グリフォンがいるってことは、他にも魔獣のようなものがいてもおかしくない。

 そんな世界で生きていく、適応していくためには、柔軟で応用が効く能力が一番だ。


 

 手違いでこっちに飛ばされたことは腹が立つけど、いつまで言っていても仕方ない。


 「すなおに感謝するよ。女神さま。助かってる。」


 

 「うわあ。気持ち悪い。明日は大雨だって天気の神が言うわけだわ。」

 

 たまに素直に感謝してやればこれだ。

 しかし、天気の神?

 「じゃああんたは何の神なんだ?」


 いや、そんなこと以上に知りたいことがいくつかあるんだけど……。


 

 と、ノブレスが帰ってきた。

 これ以上は無理だ。

  

 女神への挨拶代わりに、ラスカルの頭を撫でる。

 ふんっ、と鼻息を鳴らして答えてくれた。




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