第二話 死霊術師《ネクロマンサー》 その3
傲然と言い放つ、「神官さま」のその姿には……
威厳は全く無かった。
どう見ても、小学生ぐらいにしか見えなかったから。
外見年齢13歳の今の俺から見ても、2つは年下に見える。
後れをとるつもりがないのは、むしろこちらである。
……が、かえってそのギャップが滑稽な物に思われ、俺が感じた反発は一気にしぼんでいった。
「はいはい、分かりました。」
余裕を取り戻した俺は続けた。
「それならば、公的にはやはり、僕は神官さまの従者ということで。ベンさんとしても、死霊術師にトムさんが使役されているというよりは、その方が外聞がいいでしょうし。」
いつ元の世界に帰れるかは分からないが、神官の従者ということで、とりあえずこちらで暮らしていくための身分を得た。ラッキー。
神官さまは渋い顔をしている。主導権を取られたことが悔しいのだろうか。
「成り立てとは言え、やはり死霊術師。悪知恵が回る……」とか何とか、理屈の通らないことをつぶやいている。
そうこうしている間に、外のざわめきが再び大きくなってきていた。
この村には司祭がいたのだが、先ごろ亡くなったのだそうだ。
後任が来るまで、つなぎとして急遽、彼女が送られてきたのである。
で、司祭に頼み事のある人が、ベンさんの家の外に集まりだしたと。
「私は仕事をしていますから、おとなしくしていてください。」
そう言って、彼女は俺を部屋から追い出した。ベンさんの家の客間が臨時の執務室、ベンさんは事務長というわけである。
「じゃあその間に、トムさんの手伝いをしておきますね。」と、許可を得て。
ようやく落ち着いたところで、トムじいさんを呼び出す。
「済まんのう、ワシのことが見えているし会話もできるようだから手伝ってもらおうとしたら、大ごとになってしまって。」
「まあいいですよ。頼み事って何です?」