第百九話 第三章のプロローグ
コミックス版『異世界王朝物語』(文藝春秋社)、ピッコマにて連載中です。
ご覧いただきたく、なにとぞお願い申し上げます。
Woodmerle est omnis divisa in partes duo.
ウッドメルは、2つの部分に分かれる。
……やめておこう。
どうして俺は、しょうもないと分かっていながら、ネタを仕込まずにいられぬのであろうか。
ウッドメルは、南北に細長い六角形をしている。
やや縦長・楕円形のアナログ時計をイメージしてもらうと、分かりやすいかもしれない。
アナログ時計には、1から12まで数字が並んでいる。
そのうち、奇数を選んで線で結ぶと、ウッドメルとだいたい似たような形になる。
まず、南側から。
7時と5時とを結ぶ直線が、大河ティーヌである。
西側。
7時から11時に向けて、直線を引く。
そこから左、つまり西側は、山地となっている。
北側。
11時と1時の間あたりから3時にかけて直線を引く。
そこから右上、つまり東北も、山地となっている。
東側。
3時の少し南側から5時にかけて、川が流れている。
北側の山地とこの川とが、ミーディエとの邦境だ。
冒頭で、「ウッドメルは、2つの部分に分かれる」と言った。
西の山地、時計の9時と11時の間あたりから、東南東方向へと川が流れている。
(東に流れて後、向きを南南西に変え、ミーディエとの邦境になる。)
その名をグウィン河と称される、暴れ河である。
このグウィン河が、ウッドメルを北と南に大きく分けているのだ。
南ウッドメルは、完全に「王国」の勢力圏。
しかし北ウッドメルは、北の国境から「北賊」(彼らの名乗りに従うならば、「連邦」)がしょっちゅう侵入して来ては、国土を荒らして帰ってゆくため、なかなか政情が安定しない。
北賊に親しい住民は北に難を避け、王国に従うことを選んだ住民は南に移ってきた。
北ウッドメルは、本来の豊かさを生かせぬ荒れ地となっている。
ここ数年、北賊は戦争の準備をしていたためか、あまり侵入してこなくなった。
王国側でも、ケイネスがウッドメル総督に就任し、まずは南ウッドメルを固めることに専念していた。
北ウッドメルは、静けさを取り戻していた。
しかし、それがかりそめのものであることは、2年前に看破され。
そしてこの年の夏から、実際に戦争状態へと突入したのである。
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