記録
「羨ましがられる、夢を見ました。
誰かが、わたしを見て、いいなぁって言って。
わたし、誰かから羨ましいと思われるところなんて、ひとつもないって思ってたから。
すごく嬉しくて、喜んだ夢。
夢の中で、えー?そうかなぁって、きっとにこにこしながらそう言ったところで目が覚めました。
目覚めた時はすごくいい気分で。
なんなら、もう凄く久しぶりによく眠れた気がしました。
でも、それから、やっぱりというか。
眠れなくなっちゃったんですよね。
それが、実は、あのとき。
夢の中で、何が羨ましいと言われたのか、よく覚えていないんです。
そんなこと?そんなこと、じゃないんです。とてと大切なことですよ。
なんとかが素敵、って、わたしを褒める言葉はまだ記憶にあるのに、そのなんとかの部分だけノイズがかかったように、聞こえないんだから。
気になって、気になって。分かってくれますか?
…何が素敵だったんだろう。
髪を結んでたゴム、新しい服…かな?
そんなんじゃなくて、生まれつきのものだったかもしれない。
あぁでも、そのときのわたしはとても誉められたものじゃなかったはずです。
きっと、それはもうひどかったと思う。
あんなに絆創膏だらけで、醜い物体だったはずなのに。
それは、転んでばかりいたからです、けど。
そのわたしが、羨ましいなんて。
そう思われたのは、一体なんだったのかな。
あの子は、何が、いいと思ったんだろう。
ねぇ、先生、
わたしのいいところって、なんですか。
」
(とあるカウンセラーの手記より)