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俺と私と病気と日記の恋物語

作者: 魁斗

「違う子を好きになったから別れて欲しいの」


突然、君に呼ばれて来たときに言われた言葉だ。突然過ぎて一瞬、時が止まった様に感じた


「な…んだよ、それ……ウソ…だろ?」


俺は信じられなくて……いや信じたくなかったから君の口から「ウソだよ」の声を求めて訪ねた


「ウソじゃないの……もう君の事……好きじゃないんだ……だから、別れて」


この後の事は良く覚えていない。興奮していた俺が何か言って彼女は俯いて聞いていた事しか記憶にない。そして俺達は別れた。でも俺はまだ吹っ切れていない。再出発として誰かと付き合おうと思っても君の事が頭に浮かび上がって前に進めない。きっと俺の事を女々しい男って言うんだろうなぁ……そう思ってた日々、ある日彼女と共通の友達から電話がかかってきた。彼女と別れてから気まずくて会ったり話したりもしなくなった友達だったため珍しいなぁって気持ちと懐かしいという気持ちがあった


「久しぶり…だな」


電話から懐かしい声が耳に入ってくる


「そうだな…約一年ぶりぐらいだな」


俺は俺の発言に吃驚してしまった。それだけ会ってなかったんだなって訳ではなく、こんなにも長い時間、彼女の事を引きずっている自分に吃驚して女々し過ぎる自分に自笑した


「そう…か。もうそんなになるんだな……なぁ久しぶりに…さ……会わないか?」


久しぶりの友達の誘いはたどたどしくそれだけ一年の年月は深いのかと思っていた


「ああ……いいぞ。何時会う?」


別に断る理由もないし俺自身も会いたかったため了承した


「そうだな……出来るだけ速めがいいな」


「だったら明日とかはどうだ?」


丁度、明日は休みだったため提案をしてみると友達も休みだったらしく明日会う事にした。明日会ったら彼女の事聞いてみるか……と無意識に考えていた自分にまた自笑していた俺は友達のたどたどしい態度と突然、会いたいと言った理由をまだ知らなかった


時間が過ぎるのは速く約束した昔、よく一緒に行っていた喫茶店に行った。彼女と別れてからは来なくなっていたためか喫茶店に入ってきた俺を見て店長は一瞬、吃驚したがすぐに笑顔になり「久しぶりだね」と優しく笑みを浮かべて言ってくれた。そんな店長とたわいない話をしていると約束していた友達が店に入ってきた


「久しぶり……」


「ああ…久しぶり」


友達の姿は変わらないがあの頃と違いやはり一年の溝があるためかお互い気まずくて、それ以上会話が続かない


「……ああ…店長…奥…空いてる?」


気まずくなったのか友達は俺から目線を外しさっきまで俺と話していた店長に目線を移し話しかける。ちなみに友達が言った奥の部屋とは個室であり喫茶店には珍しいが聞かれたくない話とかをする場合に使用する部屋だ


「ん……空いてるよ」


店長は優しい笑みを浮かべたまま言う。奥の部屋を使用する場合は店長の了解が必要なため話しをしてる時に間違って誰かが入ってくる事はない


「じゃあ借りますね。行こう…か」


奥の部屋に消えていく友達の背中を追うように俺も奥の部屋に行く。部屋に入る前に一度振り返って店長の優しい笑みを見てから入る。

部屋に座った俺達だったが何を話していいのか解らなかったため数分、無言が続いた。すると友達は何か決心を決めた様な顔をすると口を開いた


「陽菜が……死んだ」


陽菜……俺の元彼女で今だに忘れられない彼女である。


「それで……これをお前に渡すために来たんだ」


唖然と固まった俺に友達は鞄の中から取り出したノートを俺の前に出した。ノートには日記と書かれていて浅井陽菜の字が書かれていた。俺は震える手で日記を手に持ち日記を開く


『1月15日

今日、病院に入院する。なんだか何億人に1人の病気らしいけど入院する病院は有名な先生がいるから安心らしい

2月19日

偶々、トイレに行こうとするときに聞こえた。私の病気は治らない事と私の寿命が長くて1年だということを、私は唖然と立ち尽くし母の泣き声を聞いていた

3月25日

今日は先生に頼んで特別に外出許可を貰った。電話で彼氏で一番大切な人……啓太を呼び出して別れようと言った。好きになった人がいる。もう啓太を好きじゃない。ウソでも心が痛かった。啓太は必死になって私を止めようとしたけど数十分すると諦めたのか静かになって去っていった。彼が去ったあと私はその場に崩れて泣き続けた

4月15日

まだ啓太の事を忘れられない。毎日毎日後悔が続く、なぜ別れたんだろ

5月28日

今日、啓太の夢を見た。最近、よく啓太の夢を見る。それだけで私の心は幸せになった。なんで目、覚めるんだろ

6月12日

啓太の夢を見た。今頃、何をしてるんだろ。気になる

7月17日

ユニバーサルスタジオジャパンのCMを見た。啓太と行った思い出が思い出した。色んな乗り物を乗って楽しんだ思い出と帰るときに告白してくれた記憶を思い出して自然と笑みを浮かべていた

8月23日

今日、母さんがアルバムを持っていてくれた。その中には私と啓太の写真もある。私は写真を抱きしめた。会いたいなぁ

9月22日

啓太、今頃なにしてるんだろ。好きな人……できたかな。恋人できてたりその人とデートしたり手を繋いだり……キス…したり……私、嫉妬してる。自分で別れたのに嫌な女だなぁ

10月2日

啓太の電話番号……かけたら話せるかな?……もし病気が治ったら…かけて…みようかな?喜んでくれるかな?……喜んでくれたら……嬉しいな

11月10日

最近、良く思う。死にたくない。だってまだ心残りがあるから……啓太に会って話して抱き合ってデートしてキスして結婚して子供を作って……親孝行もしたい。死にたくないなぁ

12月31日

最近、調子が悪く成ってきた。こんな時でも啓太に会いたいと思う私は重症なのかな?私は自分に自笑する

1月11日

今日、手術をする事になった。成功率が高く成ったらしい。難しい話は良く分からない。でも日記はこれでお終い。手術が成功したら……啓太に告白してみる。啓太はなんて反応するだろ?楽しみだなぁ

でも手術が失敗したら……悲しいけど啓太には私の事を忘れて幸せになって欲しいな。好きな……ううん、大好きな啓太の幸せは私の幸せだから……なんてどこかで聞いたことがある歌詞を思い出した


日記を読み終えた俺は涙を流した。俺の事を考えて戦ってきた彼女を思うと更に彼女の事が好きになった。でも彼女はもういない。両思いなのに……もう彼女に会えない。話したり抱き締めたり出来ない。泣いてる俺を見て友達はゆっくり立ち上がり部屋から出て行った


あれから何時間も泣き続けた。でも泣いてるだけじゃ彼女に申し訳ない。泣いてるだけじゃ病気と戦ってきた彼女の彼氏に相応しくないから俺は立ち上がる。でも彼女の願いを俺は叶えられないな。だって俺は女々しい男だから……彼女を忘れられない


END

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