黒い猫
この短編小説は私の表現の練習のために書きました。
「もっとこうした方が良い」、「この表現は変だ」などありましたら、どしどしご助言ください。
お願いします。
まだまだ未熟な身ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
----
改訂内容は後書きに記載します。
一つ、俺の経験談をしよう。
夏休みのある日、大学の友人3人と連れだってとあるトンネルに来ていた。
宴会の帰り道で誰が言い出したのか忘れてしまったが、酔いざましついでに肝試しをすることになったのだ。
そのトンネルは隣の県まで一本道で続く田舎の山道にあった。
肝試しに丁度良く、トンネルには黒い化物が出るいわくがあった。
戦前からあるトンネルなのだが、トンネル工事の際に落盤事故があったそうだ。
その時に生き埋めになった人々の遺体には動物に食べられた痕があったらしい。
そんなことがあってから、そのトンネル近くでは人間を食べる化物の噂が広まった。
暗闇の中から素早く飛び出し、いっきに人間を食いちぎった後は人間いは追い付けないような速さで山の中に消えていくそうだ。
高度経済成長期の公共工事が盛んだったころ、道路の整備はし直されたが、交通量は少ないままだった。
そのため、整備なんてされておらず山の草木に浸食されていた。
俺たちが持つ懐中電灯の狭い明かりが照らし出すそのトンネルは、不気味な洞のようであった。
上から垂れる木の根やツタによって、トンネルが涎を垂らす化物の口そのものように見えた。
それを見た時点で既に酔いが殆ど醒めていたのだが、ここまで来て何もせずに帰るというわけにはいかなかった。
俺たち4人は虚勢を張るかのように大声でしゃべりながら、恐る恐るその黒々としたトンネルの中に入って行った。
夏の暑い日だったのだが、トンネル内のひんやりとした空気が腕に絡みつき、一瞬にして鳥肌となった。
どれくらい進んだか解らなかったが、これ位で引き返そうと言って振り返った瞬間、懐中電灯とは違う強い閃光が飛びこんできた。
目の前が真っ白になり前後不覚になりかけたが、なんとか転倒は免れた。
人は危機的状況になると体感時間が非常にゆっくりになり、瞬き一つの間に見えた光景もはっきりと覚えているらしい。
その時に俺が見たのも、ゆっくりと見えた。
誰かのライトの中に一瞬移った姿は普通の4倍ほどの大きさの黒ネコだった。
しかも、身長170cmの自分が少し見上げる位置だった。
明らかに地面から離れている。
そのネコは四肢をダランとさせたような物体を咥え、黄色く光る眼でこちらを見ながら轟音と共に走りぬけていった。
俺はあまりの出来事に一瞬呆けてしまった。
直ぐに通り過ぎた方を見てみたが、ただでさえ街頭の無い山道であるため、黒ネコをもう一度見ることはできなかった。
ただ、不気味な赤い光が小さく灯っていた。
そしてそれは鬼火のように左右に僅かに揺れながら山道に消えていった。
俺たちは恐怖のあまり逃げるようにそこから帰った。
幸いにも全員無事だっが下宿に着くまで、友人の無事を確認することも忘れるほど気が動転していた。
既に何かを咥えていたから無事だったのだろう。
黒ネコの話を何度か別の友人にしてみたが、誰も信じなかった。
猫の4倍ともなれば、それはライオンぐらいの大きさだ。そんな大きな野生の猫は日本に居ない。
山を見ると今でもあの時の恐怖が思い出される。
とても信じられないかもしれないが、いわくのある場所には遊び半分で行くのは止めなさい。
この話の真相が気になる方のために、小説の後半に記載しています。
気になる方は探してみたください。
----
(改1,H23.12.30)
トンネルのいわくを追加しました。
黒ネコが咥えているものがわかりやす過ぎたため、変更しました。
タイトルを変更し忘れていたため、修正しました。