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第23話 育児はこれから先、ずっと続く!

 私とピトップは、地上にある父上の廃屋で過ごしていた。

 

 

「旦那様。この辺りの冬はどれくらい続くのですか?」

 

「そうですな。だいたい、心愛(ココア)ちゃんが成人するくらいの間。かなり長い期間ですよ」

 

「半年間、雪に覆われるのですね」


 

 父の死から間もなくして、山に本格的な冬が訪れ、雪で覆われた道は閉ざされた。

 

 姉ペペラも冬眠をしたが、妹のココアちゃんの成長が見たいこともあって、眠りは浅く、しょっちゅう起きている。

 


「ええ。山が人の地なんかよりも、冬の時期が長いのは仕方ありません」

 

「では、春先に来る魔王ディエの子どもは何時頃になるのでしょう?」

 

「それに関しましては……分からないのです」

 


 母上は仕事に行くことがなくなり、ココアちゃんの成長と同時に、日に日にと老いて痩せていくイグナの相手をしてくれている。

 


「ペラドん~~ここあと遊んでぇ~~ひまよー~~」

 

「そろそろ、イグナ母様のところに戻りますかな」

 

「……いや! イグナは臭いからきらいっ! 全部臭いもん、嫌い!」

 

 

 ココアちゃんも地上に来るが、彼女の成長は人間とは異なり、すでに人間の子ども、六歳の大きさである。

 


「そういうことは言ってはなりませんよ、ココアちゃん」


「ペラドん、すきぃ~~♡」

 


 私の膝の上に座り、腕を背中に回して身体を前後に揺らす。

 


「ココア様。旦那様の読書の邪魔をされてはいけませんよ」

 

「ピトップのくそばばあ、うるさい~~だいきらいぃ~~」

 

「くそばばあ、だなんて……誰にものを言っているのでしょうねぇ?」

 


 すん、と表情が王女に戻るピトップの様子に「相手は子どもですよ」と怒りを納めるように促す。

 


「ペラドん、抱っこして!」


「仰せのままに――女王殿下」

 


 ココアちゃんを抱きかかえて椅子から立ち上がる。

 ピトップは目を細めて腕を組んで睨みつけていた。

 


「そのような顔は可愛くありませんな」

 


 ちゅ、とピトップの唇に口づけをする。

 少しでも機嫌が戻ればいいがと願ってのことだ。

 


「その、……ココア様は少し旦那様に、懐き過ぎではないかと思うのです」


「父上がいないから寂しく恋しいからでしょうね。普通ではありませんかな?」

 


 ピトップがココアちゃんの背中を睨む。

 そして、ココアちゃんの顔がピトップの方を向く。

 

 バチバチ、と火花散る音が聞こえた。

 


「今だけですよ」

 

「だといいのですが」

 

「今は貴女のお腹の子どもが私には心配でなりませんが、体調は大丈夫ですかな?」


 

 私は夏か秋あたりにピトップとの間に生まれる子どもの父親になる。育児はこれから先、ずっと続く。


 まずは、いずれ来る春先の魔王と勇者との子どもの訪れを待つのみである。



         ======第一部 了======

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