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エピローグ

 月曜日の朝。

 高崎線の下りは、相変わらず混んでいた。通路に三列。吊り革を握る手が隣の人と近い。窓の外に見える景色は、昨日と変わっていない。住宅地と田んぼと、遠くに見える建物。

 大宮で降りる。改札を出て、東口に向かう。氷川神社の参道前を通り過ぎる。二つ目の信号で左に折れる。細い道を歩く。

 見沼代用水の橋。

 今日は足が止まらなかった。

 止まらなかったことに気づいたのは、渡り終えてからだった。止まらなかったのは理由があったからではない。ただ、今日は止まらなかった。それだけのことだ。

 美術学校の前を過ぎる。高校の屋根が見える。

 教室に入ると、いつもの景色があった。話している人、課題をしている人。私は鞄を下ろして、昨日の模試のことをまだ少し考えていた。

 瀬川が先に来ていた。何かのプリントを眺めていた。

「昨日の模試、どうだった」と私は言った。

「まだわからん」と瀬川は言った。「結果出てから考える」

「そうか」

「お前は?」

「まだわからん」

「だな」

 瀬川はプリントから目を上げて、窓の方を見た。私も同じ方向を見た。校庭に朝の光が入っていた。

 ホームルームが始まった。

 出席を取る声が教室に広がる。返事をして、下を向く。

 一時間目は英語だった。佐伯先生が教室に入ってくる。プリントを配る。問題を読み上げる。誰かが指名される。

 今日、指名されるかもしれない。

 そう思いながら授業を聞く。それは変わっていない。

 窓の外は晴れていた。模試の結果はまだ返ってきていない。次の小テストの範囲は、今週中に発表される。土曜日も授業がある。来月また模試がある。予定は詰まっていて、隙間がない。

 何かが変わったわけではなかった。

 橋の上で足が止まらなかったのも、瀬川と少し話せるようになったのも、それがこの重さをどこかへ運んでいくわけではない。重さはここにある。明日もここにある。たぶん、来週も。

 瀬川以外のクラスメートとの距離も、変わっていない。体育館の壁に寄りかかって次のゲームを待っていたあの時間も、廊下の笑い声が遠ざかっていくあの感覚も、続いている。何かが解決したわけではない。解決するとも思っていない。ただそれが、勉強のプレッシャーと同じように、ここにある。

 現実は変わっていない。『金閣寺』の柏木はそう言っていた。変わるのは認識だ、と。

 認識が変わったかどうか、私にはまだわからない。ただ、当てられることへの恐れも、クラスの輪の外にいることも、以前と同じようにここにあるのに、それを前と全く同じように見ているかというと、少し違う気もした。少し、だけだ。確かなことは何もない。

 佐伯先生が次の問題を読み上げた。

 私はプリントに目を落とした。鉛筆を持つ。答えを考える。当てられるかもしれない。当てられないかもしれない。どちらにしても、次の問題が来る。

 それだけのことが、終わらない。

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