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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第四章 関東巡遊 (前編)
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第2話 風邪(前編)

東京を出発してからわずか三分。

魔力を込めすぎた箒は暴走気味に加速し、結は凍えるような寒さの中で水戸市に到着した。


「うぅ……寒い……」


そのまま支局に着くなり、結はフラフラしながら仮眠室の布団へ潜り込み、

額にはすぐに冷却剤が乗せられた。


「本当にもう……飛び方が乱暴なんだから。」

水戸支局の先輩保安官・七海ななみが、呆れたように結を覗き込む。


「……ごめんなさい……ちょっと、急ぎたくて……」

「急いでも意味ないでしょ。まずは寝る!」


強めに叱りながらも、七海は慣れた手つきで体温を測り、熱を確認する。


「38.1度。これは普通に風邪だね。魔法で治せるタイプじゃないから安静第一。」


結は布団に埋まりながら、

「手袋……持ってくればよかった……」

と弱々しく呟いた。



結が寝込んで一時間ほど経った頃。

支局の廊下に、微かにヒュウ…と不自然な風が吹き抜けた。


七海は眉をひそめる。


「……魔力の流れが乱れてる? 何だろう、嫌な感じ。」


その直後、結が寝ている布団の中で小さく震えだした。


「ん……? 風の音……聞こえる……」


七海が駆け寄る。


「結? 起きてるの?」

「……なんかね……外……魔力が……ざわざわしてる……」


病気で弱っていても、結の魔力感知だけは敏感だった。


七海は急いで支局の窓を開け、外の気配を探る。


「……小さな魔力の渦が市街地で発生してる。規模は小さいけど、ほっとくと面倒なタイプだ。」


結は布団を掴んだまま、かすかに手を上に伸ばした。


「……少しだけなら……遠隔で……抑えられるよ……」


「ちょっと! 動かないの! まだ熱あるんだよ!」


「……わかってるけど……このくらいなら……」


結の指先に、淡い紫の魔力が灯る。

寝たまま、布団から手だけ出して、遠くの魔力渦へ向けて静かに魔力を流し込む。


数秒後—


ヒュウッ……と吹いていた違和感のある風が、すっと止んだ。


七海は目を見開く。


「……ほんとに収まった。すご……」


結はへにゃっとした笑顔を浮かべてまた布団に沈みこむ。


「……ん……もうダメ……動けない……」


七海はため息をつきながら、結の額に新しい冷却剤を置いた。


「寝ながら仕事しないで。ほんとに。」


「……ん……はい……」




七海はその寝顔を見ながら、小さく微笑んだ。


「まったく……水戸支局に来て早々、手のかかる後輩が増えたな。」


結はその声に気付かないまま、静かに眠り続けた——



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