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空舞う箒の巡遊譚  作者: あすへ
第九章 東北・北陸巡遊
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第2話 春の訪れ。

あれからしばらく経った、三月下旬。


結は青森支局の前で、箒に跨ろうとしていた。


冷たい空気はまだ残っているが、真冬の刺すような寒さは少しだけ和らいでいる。


なぜ、これほど時間が空いてしまったのか――


あの日、ラーメン店からの帰り道。支局へ戻る途中には長い階段があった。


「さむいさむい……早く戻ろ……」


足早に上がっていた、そのとき。


ツルッ。


「え?」


一瞬の油断。凍った段に足を取られ、体が宙に浮く。


ガン、ゴン、と鈍い音を立てながら、結は階段を転げ落ちた。


「いっ……た……」


立ち上がろうとした瞬間、足に走る鋭い痛み。


結果は――骨折。


それからの数週間、結は青森支局の仮眠室で安静生活を送ることになった。


「まさか、津軽海峡を越えた私が、階段でやられるとは……」


苦笑しながらも、しっかりと治療に専念したおかげで、ようやく飛べるまでに回復したのだ。


「今度は滑らないようにしないとね……」


結はゆっくりと箒に跨る。


春の気配を含んだ風が、そっと背中を押した。


今日の目的地は秋田市。

およそ一週間の滞在予定だ。


「長いこと休んでたし、体力鈍っちゃったかもしれないな……」


そう呟きながら、結は青森の空へ舞い上がる。

春の空気はまだ冷たいが、冬の鋭さはやわらいでいる。


しばらく飛んだ頃、眼下に広がったのは大潟村。


「ここ、なんか……すごい……」


水路に囲まれた広大な土地。整然と区画された田畑が規則正しく並び、その中央に村がある。


「田んぼも多いし、米の生産量すごそう……」


上空から眺める景色に、思わず見入る結。

そのままさらに南へと飛び続けた。


やがて街並みが広がる。


「ふぅ、ついた……」


秋田市。

無事に秋田支局へ到着した結は、手続きを済ませると仮眠室へ直行した。


「ふかふかベッド……最高……」


ベッドに倒れ込むと、全身の力が抜ける。

ふにゃ〜っとした顔で天井を見上げながら、小さく呟く。


「ちゃんと飛べたし……体力、そこまで落ちてなかったかも……」


久しぶりの移動の疲れと安心感が混ざり合い、結は静かに目を閉じた。

窓の外では、春の風がやわらかく吹いていた。


次回に続く....

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